第三十八話 王の間
説明が下手な黒龍と共に、遺跡のさらに奥へ進むユウトたち。
どうやら異変は本格的に動き始めたようです。
そして辿り着いた先にあったものとは――。
遺跡の深部から溢れ出した気配。
それは明らかに異質だった。
ユウトは眉をひそめる。
「なんだこれ」
魔物とも違う。
竜とも違う。
だが確実に何かがいる。
◇
ゴゴゴゴゴ……。
再び遺跡が揺れた。
壁が震え。
天井から砂が落ちる。
「起き始めたっすね」
ヴァルシアが呟く。
「その起きるってのが分からないんだけど」
「説明したじゃないっすか」
「お前あれで説明できてると思ってたの?」
「そんな馬鹿な」
そんな馬鹿だった。
◇
「あなた、本当に理解しているの?」
シエルが疑わしそうに見る。
「してるっす!」
「説明できないだけで?」
「そうっす!」
胸を張る。全く説得力がなかった。
◇
その時。
《高濃度エネルギーを確認》
補佐機構の声が響く。
《対象との共鳴を確認》
「共鳴?」
思わず口に出る。
「何か言った?」
シエルが振り返る。
「補佐機構が変なこと言ってる」
「ああ、またなのね」
今さら驚きもしない。
シエルは軽く流した。
◇
《終焉竜王因子の活性化を確認》
再び声が響く。
ユウトは思わず足を止めた。
「おい」
「今度は何?」
「終焉竜王がどうとか」
「あなた終焉竜王でしょう」
「そうなんだけどさ」
そうなのだが自分の種族名を改めて言われると妙な気分だった。
◇
その瞬間遺跡の奥で何かが光った。
三人は同時に顔を上げる。
「今のは?」
シエルが警戒する。
だがユウトは少し違った。
気になる。
見てみたい。
危険そうだ。
でもだからこそ気になる。
◇
「行くの?」
シエルが聞く。
「行かない選択肢はないっしょ」
即答だった。
「でしょうね」
予想通りだったらしい。
三人はさらに奥へ進む。
やがて巨大な空間へ辿り着いた。
そしてその最奥に一枚の巨大な扉が立っていた。
◇
「…でかいな」
高さは十メートルを超えている。
見上げるほど巨大だった。
扉の表面には無数の文字が刻まれている。
だが。
「読めないわね」
シエルが呟く。
「あーしも読めないっす」
ヴァルシアも首を振った。
しかしユウトだけは違った。
意味が分かる。
初めて見る文字。
なのに読める。
まるで最初から知っていたかのように。
「……王の間」
「読めるの?」
シエルが驚く。
「読める」
ユウト自身が一番驚いていた。
ヴァルシアの表情が少しだけ曇った。
「あー……」
「なんだよその反応」
「いやぁ」
珍しく歯切れが悪い。
「お前知ってるのか?」
「知ってるっす」
「何がある?」
「面倒なやつっす」
「雑だな」
「でも本当っす」
そこだけは真面目だった。
ゴゴゴゴゴ……。
再び振動が走る。
巨大な扉が僅かに動いた。
「勝手に開くのか?」
「開くっすね」
「止められる?」
「無理っす」
「遺跡の扉なんて大体そんなもんだよな」
ユウトは扉を見上げた。
◇
正直嫌な予感しかしない。
だが同時にものすごく気になる。
「あなた」
シエルが声を掛ける。
「何?」
「顔」
「顔?」
「面白そうなことを見つけた顔をしてるわ」
ユウトは少し考えた。
そして。
「否定できない」
素直に認めた。
ヴァルシアが吹き出した。
「やっぱり主っすね」
「どういう意味だよ」
「そのままの意味っす」
意味は分からなかった。
そして巨大な扉がゆっくりと開き始める。
眩い光が溢れ出す。
三人は思わず目を細めた。
その先にあるものは――。
第三十八話をお読みいただきありがとうございました!
ヴァルシアは説明が下手ですが、知識はあります。
たぶんあります。
次回、王の間へ突入です。
それではまた次回!




