第三十七話 説明が下手
黒龍ことヴァルシアとの再会。
しかし喜ぶ間もなく、新たな問題が発生します。
どうやら説明役は別に用意した方が良さそうです。
「王が目覚めそうなんす」
ヴァルシアの言葉に。
その場の空気が静まり返った。
ユウトとシエルは顔を見合わせる。
そして
「王って誰?」
ユウトが聞いた。
◇
沈黙。
ヴァルシアはぱちぱちと瞬きをした。
「え?」
「いや、え?じゃなくて」
「王っすよ?」
「だから誰だよ」
説明になっていなかった。
◇
シエルが額を押さえる。
「最初から順番に説明しなさい」
「順番っすか」
ヴァルシアは腕を組む。
数秒考える。
さらに考える。
もっと考える。
「……忘れたっす」
「忘れるな!」
ユウトのツッコミが遺跡に響いた。
「だいぶ昔の話なんすよ」
「どれくらい?」
「すっごく昔っす」
「雑だな」
ユウトは頭を抱えた。
シエルも同じ気持ちだった。
「王は王なんす」
「わかったわかった」
「諦めるの早くないっすか?」
「説明が下手すぎるんだよ」
むしろよくここまで会話が続いたものだ。
するとシエルが口を開く。
「その王は竜なの?」
「違うっす」
即答だった。
「人間?」
「違うっす」
「魔族?」
「違うっす」
「精霊?」
「違うっす」
シエルが黙る。
「何なの?」
ヴァルシアは少しだけ考えた。
そして
「王っす」
「振り出しに戻ったわ!」
◇
ユウトは盛大にため息を吐いた。
「お前説明向いてないだろ」
「よく言われるっす」
自覚はあったらしい。
その時だった。
不意に補佐機構が反応する。
《情報を確認》
《該当情報の一部を開示》
「お?」
ユウトが目を瞬く。
そして。
視界に文字が浮かんだ。
《王》
《詳細不明》
《終焉竜王との関連性を確認》
《危険度:測定不能》
「終焉竜王だと?」
シエルが反応する。
ユウトも目を見開いた。
今確かに表示された。
終焉竜王。
それは自分の種族名だった。
◇
「おい」
ユウトがヴァルシアを見る。
「関係あるのか?」
「あるっす」
今度は即答だった。
「主だからっす」
「説明になってない」
「なってないわね」
ユウトとシエルの意見が一致した。
◇
しかしヴァルシアの表情は珍しく真剣だった。
「でも」
軽い口調のままその瞳だけが真っ直ぐユウトを見る。
「主が来たから動き出したのは本当っす」
◇
空気が変わる。
冗談ではない。
少なくともヴァルシアはそう思っている。
「俺が原因?」
「多分っす」
「多分なのかよ」
「多分っす!」
自信満々だった。
◇
その瞬間。
遺跡全体が揺れた。
ゴゴゴゴゴ……。
重い振動。
壁が震える。
天井から砂が落ちる。
「今のは!?」
シエルが周囲を見回す。
ヴァルシアはため息を吐いた。
「ほら」
「ほらじゃない!」
「だから言ったじゃないっすか」
そしてヴァルシアは通路のさらに奥を見つめる。
「起き始めたっす」
その言葉と同時に遺跡の深部から巨大な何かの気配が溢れ出した。
第三十七話をお読みいただきありがとうございました!
ヴァルシアは説明が下手でした。
作者も知っていました。(書いてるんだけら当然だがw)
次回、いよいよ遺跡の異変が動き出します。
それではまた次回!




