第四話 終焉竜、勘違いされる
第四話です!
終焉竜、めちゃくちゃ勘違いされています。
本人はまだスライム戦の感覚が抜けてません。
爆炎が洞窟を揺らしていた。
『グォォォォォォォォ!!』
黒竜の咆哮が響くたび、空気が震える。
洞窟入口側からは、人間たちの悲鳴が聞こえてきた。
「退避!! 退避しろ!!」
「ブレスが来るぞ!!」
「盾部隊、前へ!!」
「無理だ! 止められん!!」
ユウトは洞窟の奥で立ち尽くしていた。
「……いや、あれ無理だろ」
本音だった。
黒竜が強すぎる。
ブレス一発の規模が、自分の“火の粉”とは次元が違う。
岩壁が溶けている。
地面が抉れている。
討伐隊が吹き飛んでいる。
「俺、あんなのになるの……?」
同じドラゴン種とは思えなかった。
すると黒竜が再び咆哮する。
『グルァァァァァ!!』
ドゴォォォン!!
入口付近で爆発が起きた。
悲鳴。
混乱。
逃げ惑う足音。
完全に災害だった。
「いやほんと、なんで俺レベル1だったんだ……」
同じ終焉竜なのに差が激しすぎる。
その時だった。
黒竜がこちらを振り返った。
赤い瞳がユウトを見つめる。
「……え?」
黒竜は短く唸った。
『グル』
そして顎で洞窟奥を示す。
まるで、
“行け”
と言っているみたいだった。
「逃げろってことか?」
黒竜はもう一度頷くように唸る。
その直後。
外から怒声が響いた。
「魔導隊準備!!」
「対象は二体いるぞ!!」
「黒竜種だけじゃない! もう一体確認した!!」
「まさか……終焉竜の幼体か!?」
「いや待って!? 幼体!?」
ユウトは思わずツッコんだ。
確かにレベルは低い。
でも見た目は十分怖いと思う。
すると別の声が響く。
「まずいぞ……終焉竜同士が接触した!」
「儀式かもしれん!」
「復活の前兆だ!!」
「だから違うってぇぇぇ!!」
『グルァァ!!』
「なんで毎回威嚇になるんだよ!!」
もう駄目だった。
ドラゴン語が完全に誤解しか生まない。
その時。
黒竜が大きく翼を広げた。
空気が震える。
圧倒的な魔力が周囲を満たした。
そして。
ドォォォォォォン!!
巨大な炎の奔流が洞窟入口を飲み込んだ。
人間たちが悲鳴を上げる。
「うわぁぁぁ!!」
「下がれ!!」
「近づくな!!」
ユウトは呆然とそれを見ていた。
「すげぇ……」
本物のドラゴン。
それも、おそらくかなり上位種。
今の自分では到底敵わない。
だが同時に思う。
――かっこいい。
男の子心が刺激される。
巨大な黒竜が、炎を吐きながら人類を圧倒している。
普通にテンションが上がった。
「いや待て、感動してる場合じゃねぇ」
今の状況かなり危険だった。
その時だった。
頭の中に声が響く。
《周囲の魔力量上昇を確認》
《特殊環境条件を達成しました》
《未解放スキル《人化》の解放条件が進行しています》
「おっ」
ユウトは目を見開いた。
人化。
少しずつ条件が進んでいる。
「あとどれくらいなんだ……?」
すると黒竜が再びこちらを見た。
そして。
ぐいっ。
「うおっ!?」
前脚で押された。
そのまま洞窟奥へ押し込まれる。
「だから逃げろって!?」
『グル』
黒竜は短く唸る。
その直後。
洞窟入口から巨大な光が飛び込んできた。
白い閃光。
熱量。
圧縮された魔力。
「うわっ!?」
黒竜が咄嗟に翼を広げる。
ドゴォォォォォン!!
凄まじい爆発。
洞窟全体が揺れた。
「な、なんだ今の!?」
黒竜の鱗が少し砕けている。
ユウトはゾッとした。
あの黒竜にダメージを与えた。
つまり、人間側にも切り札がある。
「魔法……?」
外から声が響く。
「直撃したか!?」
「いや、浅い!!」
「化け物め……!」
黒竜が低く唸る。
怒っている。
空気だけで分かった。
するとユウトの頭の中に、ふと妙な感覚が流れ込んできた。
言葉ではない。
感情に近い。
――逃げろ。
――まだ弱い。
――死ぬ。
「……え?」
ユウトは黒竜を見る。
もしかして今。
会話した?
黒竜はゆっくり頷いた。
『グル』
「マジで?」
ドラゴン同士だからなのか。
完全ではないが、なんとなく意思が伝わる。
その時。
外からさらに怒号が響く。
「第二陣到着!!」
「包囲を狭めろ!!」
「絶対に終焉竜を逃がすな!!」
「増えてるぅぅぅ!!」
ユウトは半泣きになった。
なんでこんな大事になってるのか。
いや、終焉竜だからか。
納得はしたくなかった。
黒竜が再び前へ出る。
完全に時間稼ぎをするつもりだった。
「待て!」
ユウトは思わず叫ぶ。
黒竜が振り返る。
「……俺も戦う」
怖い。
めちゃくちゃ怖い。
でも。
助けられているのに、自分だけ逃げるのは嫌だった。
営業時代だってそうだった。
クレーム対応。
謝罪。
無茶振り。
逃げたくなることは何度もあった。
でも最後は向き合うしかなかった。
それは異世界でも同じらしい。
「まだ弱いけど……それでも!」
ユウトは大きく息を吸い込む。
胸の奥に熱が集まる。
まだ火の粉しか出せない。
でも。
少しずつコツは掴み始めていた。
「今度はちゃんと当てる……!」
黒竜は数秒ユウトを見つめた後。
ふっと鼻を鳴らした。
どこか呆れたように。
でも少しだけ、嬉しそうに見えた。
黒竜との共闘(?)回でした。
少しずつ人化の条件も進んでいます。
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