第三十五話 残された部屋
補佐機構の追跡機能(?)に従い、遺跡のさらに奥へ進むユウトたち。
今まで見たことのない反応。
今まで知らなかった通路。
そして少しずつ姿を見せ始める遺跡の秘密。
嫌な予感しかしない探索の続きです。
《対象を追跡中》
視界の端に浮かぶ光の矢印。
ユウトは複雑そうな顔をした。
「お前そんな機能あったんだな」
思わず呟く。
今までレベルや進化の案内はあった。
だが案内役まで始めたのは初めてだ。
「何か分かったの?」
シエルが尋ねる。
「補佐機構が道案内してる」
「便利ね」
「俺もそう思う」
珍しく意見が一致した。
◇
二人は矢印を頼りに遺跡の奥へ進む。
しかし。
「こんな場所あったか?」
ユウトが首を傾げた。
以前訪れた時には存在しなかった通路。
崩れた壁の向こうに、新しい道が現れている。
「記憶にはないわね」
シエルも警戒を強める。
「遺跡が勝手に増えたとか?」
「そんな馬鹿な話があると思う?」
「ないな」
ない。
ないのだが。
実際に目の前にある。
◇
やがて。
矢印は一つの部屋の前で止まった。
小さな石室。
豪華さはない。
だが。
妙に空気が重い。
「ここか?」
「そのようね」
中へ入る。
そこにあったのは。
一枚の石碑だった。
「……墓?」
ユウトが呟く。
石碑には文字が刻まれている。
だが読めない。
人間の文字でも。
古代文字でもない。
見たことのない文字列だった。
その時。
補佐機構が反応した。
《情報を確認》
《翻訳を開始》
「え?」
ユウトが目を丸くする。
「翻訳もできるのかお前」
返事はない。
いつものことだった。
そして。
文字が理解できる形へと変わる。
そこに刻まれていたのは。
『王は眠る』
「王?」
ユウトとシエルが顔を見合わせる。
続きがある。
『王は還る』
その瞬間。
空気が変わった。
遺跡全体が僅かに震えた気がした。
「おい」
「ええ」
嫌な予感しかしない。
さらに下を見る。
『時満ちる時』
『王の道は開かれる』
そこで文字は途切れていた。
まるで。
誰かが意図的に壊したかのように。
◇
沈黙が落ちる。
最初に口を開いたのはユウトだった。
「帰る?」
「ここまで来て?」
「だって絶対面倒なやつじゃん」
「それには同意するわ」
珍しくシエルも即答だった。
◇
その時だった。
カツン。
部屋の外から音が響く。
二人の動きが止まる。
誰かいる。
気配は一つ。
そして。
かなり近い。
「またか」
ユウトがため息を吐く。
「またね」
シエルも構えた。
ゆっくりと部屋の外を見る。
そこには誰もいない。
だが。
通路の奥。
一瞬だけ。
黒い髪が見えた気がした。
人影だった。
女性のようにも見える。
しかし。
次の瞬間には消えていた。
「見たか?」
「見たわ」
今度は気のせいではない。
確かにいた。
黒い影。
目撃情報と一致する存在。
そして。
補佐機構が静かに告げる。
《対象を確認》
《追跡を推奨》
ユウトは大きくため息を吐いた。
「なぁ」
「何?」
「面倒事の匂いしかしない」
「今さらね」
そして二人は。
黒い影を追って遺跡のさらに深部へ向かうのだった。
第三十五話をお読みいただきありがとうございました!
ユウトは相変わらず帰りたがっています。
でも好奇心が勝って帰りません。
そして黒い影も再び登場。
目撃情報は本当だったようです。
果たして影の正体は何なのか。
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それではまた次回!




