第三十三話 遺跡の異変
ゴブリン事件も無事解決。
平穏な日常が戻ってきた――と思っていたユウトたち。
しかし世の中そんなに甘くない。
新たな依頼の行き先は、二人にとって非常に見覚えのある場所だった。
嫌な予感しかしない遺跡調査、開幕です。
遺跡へ向かう道中。
ユウトとシエルは森の中を歩いていた。
「そういえばさ」
ユウトがふと思い出したように言う。
「何?」
「黒い影と女ってさ」
「ええ」
「どっちもいたらどうする?」
「帰る」
即答だった。
「はやっ」
「嫌な予感しかしないもの」
「まぁ分かる」
実際、ユウトも同じ気持ちだった。
あの遺跡には妙なものが多すぎる。
王の帰還。
意味深な言葉。
正体不明の空間。
白銀龍であるシエルですら理解できない何か。
関われば面倒になる。
間違いなく。
「それにしても」
シエルが周囲を見回した。
「静かね」
「言われてみれば」
森の中だというのに妙に静かだった。
鳥の鳴き声もない。
魔物の気配も薄い。
まるで。
何かを避けているような。
「またこの感じ?絶対なんかあるじゃん」
「私も嫌ね」
二人は顔を見合わせた。
そして。
ほぼ同時にため息を吐く。
そんなやり取りをしながら進むこと数十分。
やがて。
見覚えのある石造りの建造物が姿を現した。
「久しぶりだな。一応ただいまってことになるのか?」
「誰もお帰りなんて言ってくれないわよ」
遺跡だった。
初めて出会った時と変わらない。
崩れた外壁。
苔むした石柱。
古びた入口。
どこから見ても普通の遺跡。
普通なら。
「なぁ」
「ええ」
「なんか増えてない?」
「増えてるわね」
入口付近に足跡があった。
しかも大量だ。
人間のもの。
魔物のもの。
複数が入り乱れている。
「冒険者か?」
「それにしては多い気がするけれど」
シエルがしゃがみ込み足跡を確認する。
その表情が僅かに曇った。
「新しいわ」
「新しい?」
「半日も経っていない」
「つまり」
「今も誰かいる可能性があるわね」
ユウトは頭を掻いた。
「調査だけして帰る予定だったんだけどなぁ」
「その予定は諦めた方が良さそうね」
その時だった。
――ゾクリ。
背筋を冷たいものが走った。
ユウトは反射的に後ろを振り向く。
誰もいない。
森だけだ。
「……今の」
「ええ」
シエルの表情も険しい。
「感じたか?」
「感じたわ」
二人とも同じものを感じていた。
殺気ではない。
敵意でもない。
もっと奇妙な何か。
まるで。
誰かに観察されているような感覚。
視線。
それもかなり近い。
「出てこないのか?」
ユウトが周囲へ声をかける。
返事はない。
風だけが木々を揺らした。
しかし。
次の瞬間。
カサッ。
近くの茂みが揺れた。
「っ!?」
ユウトが飛び退く。
シエルも即座に構える。
そして。
茂みの中から現れたのは――
「きゅ?」
一匹の白いウサギだった。
「……」
「……」
「びっくりした」
「驚き過ぎよ」
ウサギは不思議そうに首を傾げる。
そして何事もなかったかのように去っていった。
しばらく沈黙。
「帰る?」
「まだ何もしてないじゃない」
「ですよねぇ」
「行くわよ」
そして。
遺跡の入口へと足を踏み入れる。
その瞬間だった。
《特殊反応を確認》
補佐機構の声が響く。
ユウトの足が止まった。
「……おい」
「どうしたの?」
「今、補佐機構が反応した」
シエルの表情が変わる。
冗談を言う空気ではない。
「何て?」
ユウトは無機質な声を思い返した。
《特殊反応を確認》
《個体識別開始》
《対象――》
《エラー》
《再検索を実行》
《エラー》
そこで声が途切れる。
そして。
珍しく補佐機構が沈黙した。
「……は?」
ユウトが目を丸くした。
今までこんなことは一度もない。
補佐機構は必ず最後まで情報を伝えていた。
なのに。
そして数秒後。
再び声が響く。
《警告》
《該当個体の確認を推奨》
初めて聞く言葉だった。
第三十三話をお読みいただきありがとうございました!
久しぶりの遺跡です。
そして補佐機構がまさかのエラー。
今まで何でも教えてくれた補佐機構が反応できない相手とは一体何なのか。
次回から遺跡探索が本格的に始まります!
よろしければブックマークや評価、感想などいただけると励みになります!
それではまた次回!




