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転生したら最強種だけどレベルが最弱でした。  作者: マッティー
第三章 魔族大陸

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第三百話 ベルグラードの地

長い旅を経て、ついに目的地へ。


ミレアの故郷――ベルグラード。


そこでユウトたちが目にするのは、かつてミレアが知っていた故郷なのか。


それとも――。

 翌朝。


「よしっ!」


 簡単な朝食を済ませたユウトは、勢いよく立ち上がった。


「行くぞ! ベルグラード!」


「主! いよいよっすね!」


 隣でシアも元気よく拳を突き上げる。


 昨晩は森の外れで野営をしたが、二人とも疲れた様子などまるでない。


「あなたたち、いつもいつも朝から元気ね」


 荷物をまとめていたシエルが苦笑する。


「昨日も聞いたな、その台詞」


 リトも呆れたように笑った。


「そりゃ元気にもなるだろ! ようやくベルグラードに着くんだから!」


「観光じゃねぇんだぞ、アニキ」


「分かってるって!」


 ユウトはそう答えると、早速荷物を背負った。


 目指すのは、ベルグラード。


 ミレアが生まれ育ち、長い年月を過ごした故郷。そして今、人間族への差別を巡って争いが起きようとしているかもしれない場所だった。


「ミレアさん! 今日には着くんだよな?」


「ええ。道に大きな問題がなければ、今日中にはベルグラードの集落へ入れると思います」


「やっとかぁ! 遠かったなぁ!」


 ユウトが大きく伸びをする。


 そんな彼を見て、リトが何かを思い出したように口を開いた。


「……そうだ、アニキ」


「ん?」


「昨日言ったこと、覚えてるか?」


「……何か言ってたっけ?」


「ベルグラードに着いても、勝手に問題を起こすなよって話だ」


「なんで到着前から念押しされるんだよ!」


「今までの実績だ」


 リトは即答した。


「反論できないっす!」


「シアは俺の味方じゃないの!?」


「あーしはいつでも主の味方っす!」


「おお!」


「でも、主は絶対何かやらかすと思ってるっす!」


「……味方って何だろう」


 ユウトが遠い目をする。


「少なくとも、何でも肯定することじゃないわね」


 シエルが冷静に答えた。


「シエルまで!」


「私も同意見です」


 ミレアまで頷く。


「ミレアさん!?」


「ユウトさん、今回はあくまで現地の情勢調査です。ギルド長からも、慎重に行動するよう言われていますよね?」


「分かってるって!」


「本当に?」


「……たぶん」


「どうして最後に自信をなくすんですか!」


「いや、何が起きるか分かんないし!」


「それはそうですが……」


 ミレアは小さくため息を吐いた。


 ここまで一緒に旅をしてきたことで、ユウトたちの実力については十分に理解できた。


 戦闘になれば、これほど頼りになる仲間たちはいないだろう。


 だが、それとは別に心配なこともある。


 目の前の青年は、困っている人を見つけると、どうにも放っておけない性格なのだ。


 それ自体は決して悪いことではない。


 ただし、今回向かう場所では、その優しさが思わぬ問題を引き起こす可能性もある。


(……本当に、気をつけていただかないと)


 ミレアはもう一度、静かに息を吐いた。


「では、出発しましょう」


「おう!」


「了解っす!」


 こうして五人は、ベルグラードへ続く最後の道のりを歩き始めた。


 ◇


 出発してから数時間。


 街道はさらに細くなり、ところどころで草木が道へ張り出していた。


 地面には大小の石が転がり、雨水に削られたらしい溝も残っている。


 長い間、まともに整備されていないことが一目で分かる道だった。


「……なあ、ミレアさん」


「はい?」


「本当にこの道で合ってる?」


「合っていますよ」


「……なんか、道がなくなりそうなんだけど」


 ユウトは足元を見下ろした。


 少し先では草が伸び、地面が見えにくくなっている。


「昔からこんな感じです」


「昔から!?」


「ええ。ベルグラードの外へ出る人は、それほど多くありませんから」


「なるほどな。逆に言えば、外から来る奴も少ないってことか」


 リトが周囲を見回す。


「そうですね。大きな街道からも離れていますし、商人の往来も限られています」


「……へぇ」


 ユウトは道の脇へ目を向けた。


 草に半ば埋もれた古い道標が立っている。


 文字はかなり薄れていたが、誰かが手入れをしたような跡は残っていた。


「でも、まったく誰も通らないわけじゃないんだな」


「もちろんです。ベルグラードの住民も、必要があれば他の地域へ出掛けますから」


「……そっか」


 ユウトは頷いた。


 それからしばらく進むと、森の木々が少しずつ疎らになってきた。


 頭上を覆っていた枝葉が途切れ、明るい日差しが道へ降り注ぐ。


 そして、最後の坂を上り切ったところで――。


「……おお!」


 ユウトが思わず声を上げた。


 視界が一気に開けたのだ。


 緩やかな丘陵が遠くまで続き、その合間には小さな畑が点在している。


 木々の間には細い道が延び、ところどころに農作業用と思われる小屋が建っていた。


 さらに遠くには山々が連なり、麓には深い森が広がっている。


 アルヴェインのような大きな建物は見当たらない。


 しかし、人の手で切り開かれた土地があちこちにあり、確かに誰かが暮らしていることが分かる風景だった。


「……もしかして」


 ユウトが振り返る。


 ミレアは少しだけ足を止め、目の前に広がる景色を見つめていた。


「……はい」


 その声は、いつもより僅かに静かだった。


「ここから先が、ベルグラードです」


「…………」


 一瞬の沈黙。


 そして――。


「着いたっす!!」


「おおおおっ!」


 ユウトとシアが揃って声を上げた。


「長かったなぁ!」


「やっとっす!」


「あなたたち、観光に来たんじゃないのよ」


 シエルが呆れたように笑う。


「分かってるって!」


「なら、少しは落ち着いてちょうだい」


「はい!」


「はいっす!」


 元気よく返事をした二人だったが、顔には相変わらず嬉しそうな笑みが浮かんでいた。


 ユウトは改めて眼下の景色を見渡した。


「……でもさ、これ全部ベルグラードなの?」


「ええ。この一帯の地域そのものを、ベルグラードと呼んでいます」


「街の名前じゃないんだよな」


「以前お話しした通りです。いくつもの町や集落があり、それぞれに人々が暮らしています」


「……じゃあ、中心になる町もあるの?」


「ありますよ。評議会が置かれているのも、そこです」


「おお! じゃあ、ミレアさんの故郷もそこ?」


「正確には、その町の近くですね」


「なるほど!」


 ユウトが嬉しそうに頷くと、ミレアは不思議そうに首を傾げた。


「……何をそんなに喜んでいるんですか?」


「なんとなく!」


「主は大体、なんとなくで生きてるっす!」


「失礼だな!」


「否定できるのか、アニキ?」


「…………」


 ユウトは黙った。


「できないのね」


 シエルが小さく笑う。


「そんなことないって!」


 いつものやり取りが始まる中、ミレアは再び景色へ目を向けた。


 遠くに見える山の形。


 丘を流れる小さな川。


 その向こうに広がる畑。


 どれも記憶の中に残っているものと、大きくは変わっていなかった。


(……帰ってきたんですね)


 長い間、足を踏み入れることのなかった故郷。


 かつては、二度と戻らないつもりで離れた土地だった。


 その景色が今、目の前に広がっている。


 しかし、懐かしさと同時に、胸の奥には言いようのない不安があった。


 あの頃から、何が変わったのだろうか。


 そして、何が変わらずに残っているのだろうか。


「……ミレアさん?」


 ユウトの声に、彼女は我に返った。


「……はい?」


「行こうぜ!」


「…………」


 差し出された言葉は、いつもと変わらず単純だった。


 ミレアは少しだけ笑みを浮かべる。


「……そうですね」


 五人は再び歩き始めた。


 ◇


 ベルグラードに入って最初の集落は、丘を一つ越えた先にあった。


 家屋は十数軒ほど。


 ほとんどが木造で、周囲には畑や家畜小屋が点在している。


 集落の中央には少し広い道があり、その周囲に小さな商店や作業場らしき建物が並んでいた。


 アルヴェインと比べれば、随分とのどかな場所だった。


「……意外と普通だな」


 ユウトが呟く。


「何を想像していたんですか?」


「いや、もっと物騒な感じなのかなって」


「ベルグラード全体が、常に争っているわけではありませんから」


「……そっか」


 畑では農作業をする人々の姿があり、家の前では何人かの住民が立ち話をしている。


 鬼人族や獣人族だけでなく、人間族の姿も見えた。


 見た目だけなら、これまで訪れてきた小さな集落と大きな違いはない。


「……人間族も普通にいるんだな」


「ええ。他の種族と比べれば少数ですが、昔からこの地域で暮らしている人々です」


「……だったらさ」


 ユウトが周囲を見渡しながら口を開いた。


「なんで、人間族だけ扱いが違うんだろうな」


「…………」


「みんな同じ場所で暮らしてるんだろ?」


「ユウト」


 シエルが静かに声を掛ける。


「……ん?」


「今は調査よ」


「……分かってる」


 ユウトは頷いた。


「何が起きてるのか、ちゃんと確かめるんだろ?」


「ええ」


「大丈夫。忘れてないって!」


 シエルは少しだけ表情を和らげた。


 しかし、その会話から間もなく。


 ユウトは、この集落に漂う違和感に気づくことになる。


 ◇


「おい、それを運び終わったら次は裏だ!」


「……はい」


 集落の一角から、男の声が聞こえてきた。


 ユウトが視線を向けると、大きな荷物を抱えた人間族の男が、建物の脇を歩いていた。


 その近くでは、体格のいい獣人族の男が椅子に腰掛けている。


「終わったら薪も運んどけよ。今日はまだ仕事が残ってるからな」


「……分かりました」


 人間族の男は頭を下げ、荷物を抱え直して歩き始めた。


 獣人族の男はその背中を見送ると、何事もなかったかのように飲み物へ口をつける。


「…………」


 ユウトは足を止めた。


 先日、ベルグラードへ向かう途中の集落でも、似たような光景を見ている。


 しかし、あの時も詳しい事情までは分からなかった。


 仕事を指示する者と、指示される者。


 それだけを見れば、珍しい関係ではない。


 ただ、どこか引っ掛かるものがあった。


「……ユウトさん」


 ミレアが静かに声を掛ける。


「……うん」


 ユウトは小さく頷き、再び歩き始めた。


 それから少し進んだところで、今度は小さな商店が目に入った。


 軒先には野菜や保存食らしきものが並べられており、何人かの住民が買い物をしている。


「……これをください」


 店の前で、一人の人間族の女性が声を掛けていた。


 店主らしい男が商品を受け取り、短く答える。


「銅貨五枚だ」


「……え?」


 女性は驚いたように顔を上げた。


「昨日は四枚だったはずですが……」


「今日は五枚だ」


「……ですが」


「嫌なら買わなくていい」


「…………」


 女性はそれ以上何も言わず、懐から銅貨を取り出した。


「……分かりました」


 店主は金を受け取ると、商品を手渡した。


 女性は小さく頭を下げ、その場を離れていく。


「…………」


 ユウトは黙ってそのやり取りを見つめていた。


 商品の値段が変わること自体は、別に珍しくない。


 仕入れの事情や品不足によって、昨日と今日で価格が違うことだってあるだろう。


 ただ、女性が事情を尋ねようとした瞬間、店主は話を打ち切っていた。


 その態度に、ユウトは小さな違和感を覚えた。


(……今のも、まだ分かんないな)


 実際に不当な扱いを受けたのか、それとも単なる値上げなのか。


 ここで見ていただけでは、判断できない。


 それでも、気になったことは覚えておこうと思った。


 そして、さらに集落の奥へ進んだ時だった。


「……おい、そこのお前」


 今度は、少し離れた場所から低い声が聞こえてきた。


 道の端を歩いていた人間族の青年が、足を止める。


 呼び止めたのは、腰に剣を下げた鬼人族の男だった。


「……はい?」


「どこへ行く?」


「家に帰るところです」


「……一人か?」


「はい」


「誰かと会う予定は?」


「……ありません」


 青年の声は小さかった。


 鬼人族の男はしばらく青年を見つめていたが、やがて僅かに身を引いた。


「……そうか。行け」


「…………はい」


 青年は深く頭を下げると、足早にその場を離れていった。


 呼び止めた男は、何事もなかったかのように道の脇へ戻っていく。


「…………」


 ユウトたちは、思わず足を止めていた。


「……ミレアさん」


「…………」


「今のって……」


 ミレアはすぐには答えなかった。


 その視線は、先ほど青年を呼び止めた鬼人族の男へ向けられている。


 普段の穏やかな表情は消え、僅かに眉をひそめていた。


「……ミレア?」


 シエルが声を掛ける。


「……すみません」


 ミレアは我に返ると、ゆっくりと息を吐いた。


「……私が暮らしていた頃も、人間族への扱いが良かったとは言えませんでした」


「……うん」


「働ける場所や職種は限られていましたし、住む場所についても、他の種族と同じようには選べませんでした」


 ミレアの声には、僅かな苦々しさが滲んでいた。


「人間族というだけで、店を利用する際に嫌な思いをすることもあったと思います」


「…………」


「ですが……」


 ミレアは再び、青年が立ち去った方向へ視線を向けた。


「少なくとも私が暮らしていた頃は、あんな風に道を歩いているだけで、行き先や会う相手を確認されるようなことはありませんでした」


「……じゃあ」


 ユウトが小さく呟く。


「……ええ」


 ミレアは静かに頷いた。


「変わっています」


 その言葉は、重かった。


 ベルグラードから逃れてきた人間族の家族が話していたこと。


 複数人で集まると監視され、何を話していたのか問い詰められることがあるという話。


 それらが、少なくとも一部では実際に起きているらしい。


「……本当だったんだな」


 リトが呟いた。


「そうですね。ただ、今の男性がどのような権限で確認していたのかまでは分かりません」


 ミレアは慎重に答えた。


「ですが、人間族の青年があのように呼び止められ、行き先を尋ねられていたのは事実です」


「……うん」


 ユウトは頷いた。


 今、自分たちが見たこと。


 まだ分かっていないこと。


 それらを混同してはいけない。


 今回の依頼は、ベルグラードで起きていることを正確に調べることなのだから。


「……でもさ」


 ユウトが静かに口を開いた。


「なんで、あの人は普通に答えてたんだろ」


「……慣れているのかもしれませんね」


 ミレアが答える。


「……こんなのに?」


「ええ。もし、何度も同じようなことを経験していたとしたら……」


「…………」


 ユウトは、青年が立ち去った道へ目を向けた。


 相手に不満があるなら、言い返せばいい。おかしいと思うのなら、おかしいと伝えればいい。


 最初は、そう考えた。


 しかし、すぐに思い直す。


 もし言い返したことで、仕事を失ったらどうなる。


 住む場所を追われたら。


 自分だけでなく、家族まで疑われることになったら。


 これまで聞いてきた話を考えれば、何も言わずに従うことを選ぶ者がいても不思議ではない。


(……そう簡単な話じゃないよな)


 ユウトは小さく息を吐いた。


 前世でも、理不尽な条件を押しつけられながら、簡単には逆らえない人を見たことがある。


 仕事や生活が掛かっていれば、正しいと思うことを口にするだけでも勇気が必要になる。


 もちろん、今の状況はそれとは比べものにならないかもしれない。


 だが、人が何かを守るために我慢を重ねる気持ちは、少しだけ分かるような気がした。


「……主?」


 シアが顔を覗き込む。


「……なんでもない」


 ユウトは小さく首を振った。


「ちょっと考えてただけ」


「珍しいっす!」


「珍しくないだろ!」


「……ふふっ」


 シエルが小さく笑った。


 いつもの調子に戻ったユウトを見て、ミレアも僅かに表情を和らげる。


 しかし、胸の奥に生まれた不安までは消えなかった。


 故郷は、確かに変わっている。


 そして、その変化は決して良いものばかりではなさそうだった。


 ◇


 最初の集落を抜けたところで、リトが口を開いた。


「……さて、ここからどうする?」


「まずは中心の町へ向かいましょう」


 ミレアが答えた。


「ベルグラードの評議会も、そこにありますから」


「……いきなり評議会へ行くの?」


 ユウトが少し身構える。


「いいえ。最初は町の様子を確認し、情報を集めるつもりです」


「……よかった!」


「どうして安心するんですか?」


「だって、着いて早々偉い人と話すの嫌じゃん!」


「……子供ですか」


 ミレアが呆れたように言う。


「主は偉い人が苦手っす!」


「シア! 余計なこと言うな!」


「皇帝陛下の前でも、似たようなものだったものね」


 シエルがさらりと付け加えた。


「シエルまで!?」


「…………皇帝?」


 ミレアの足が止まった。


「……はい?」


 今度はユウトが首を傾げる。


「どうして今、皇帝という言葉が出てきたんですか?」


「…………」


 ユウトとシエルが顔を見合わせた。


「……昔の話!」


「どういう昔ですか!?」


「過去は振り返らない主義なんだ!」


「その言葉は禁止したでしょう!!」


「ベルグラードでも駄目なの!?」


「場所の問題ではありません!!」


「主! さっそく怒られたっす!」


「まだ何もしてないのに!」


「普段の行いね」


 シエルが冷静に言い放った。


「……なあ、アニキ」


 リトが呆れたように頭を掻く。


「何?」


「本当に大丈夫かよ、今回の依頼……」


「大丈夫だって!」


「その台詞、もう何回も聞いたぞ」


「じゃあ信じてくれよ!」


「信じたいんだけどなぁ……」


 リトの言葉に、ミレアも苦笑するしかなかった。


 しかし、彼女はすぐに表情を引き締めた。


「……皆さん、一つだけお願いがあります」


「……ん?」


 ユウトが振り返る。


「今のベルグラードが、私の知っている頃と同じとは限りません。ですから、気になることがあっても、まずは私に相談してください」


「……うん」


「特に、人間族と他の種族との間で何か起きていても、事情を確かめる前に一方だけを責めることは避けてほしいんです」


「……分かってる」


 ユウトは真剣な表情で頷いた。


「人間族の人たちが困ってるのは分かった。でも、他の種族が全員悪いって話じゃないもんな」


「……ええ。その通りです」


 ミレアは少し驚いたように目を見開いた。


 そして、静かに微笑む。


「それを分かっていただけているなら、安心です」


「……まあ、ミレアさんだって鬼人族だしな!」


「……そうですね」


「それに、さっきの集落でも、普通に暮らしてる人たちはいっぱいいたし」


 ユウトは歩いてきた道を振り返った。


 畑で働く者。


 商売をする者。


 家族と過ごす者。


 そして、何かに怯えるように暮らしている者。


 同じ地域に住んでいても、それぞれの事情は違うはずだ。


 ただ種族が違うというだけで、全員を同じように考えてはいけない。


「……まずは、もっと見てみようぜ」


 ユウトが言った。


「ベルグラードがどんなところなのか、ちゃんと知りたいしさ」


「……はい」


 ミレアは小さく頷いた。


 そして、一行は中心の町へ続く道を進み始めた。


 穏やかに見える田園風景の中で、人々は今日も普段どおりの暮らしを送っている。


 しかし、その日常の裏には、ユウトたちがまだ知らない事情が隠されていた。


 誰もが当然のように受け入れている決まり。


 昔から続く、種族による待遇の違い。


 そして最近になって強まった、人間族への警戒と監視。


 そのすべてが、どのように繋がっているのか。


 答えはまだ分からない。


 ユウトは前を向いた。


 今回は調査のために来た。


 だからこそ、まずは事実を知る必要がある。


 そして、もし本当に争いが起きようとしているのなら――。


(……まだ、間に合うといいんだけどな)


 そんな思いを胸に、ユウトは仲間たちと共に歩き続けた。


 こうして、五人のベルグラードでの調査が始まった。

第300話をお読みいただき、ありがとうございます!


そして、ついに300話までやってきました!


ここまで読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます!


そんな節目となる今回、ユウトたちはついにベルグラードへ到着しました。


しかし、そこで目にしたのはミレアが暮らしていた頃よりも明らかに変わってしまった人間族への扱い。


アルヴェインで聞いた話は、どうやら事実だったようです。


とはいえ、ユウトたちの目的はあくまで調査。


まずはベルグラードで何が起きているのかを確かめなければなりません。


果たして、この土地でユウトたちを待っているものとは――。


次回もよろしくお願いします!


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


それでは、また次回お会いしましょう!

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