第三十話 特別昇格
第三十話です!
行方不明事件も無事解決。
街へ戻ったユウトたちを待っていたのは、予想外の評価と少しだけ賑やかなギルドでした。
そして今回、ようやくあの受付嬢にも名前が付きます。
「とにかく!」
受付嬢がパンと机を叩く。
「皆さんが無事で本当に良かったです!」
その声に助け出された冒険者たちも頷いた。
「いやぁ、本当に死ぬかと思った」
「飯も少なかったしな」
「もうゴブリンは勘弁だ」
だが彼らの表情は思ったより明るい。
生きて帰れたのだから当然だった。
◇
「さて」
受付嬢がユウトへ向き直る。
「今回の件ですが」
嫌な予感がした。
「本来であれば正式依頼ではありません」
「あっ!そうでした」
「ですので報酬は出せません」
「なん…だと!!!?」
当然の回答だった。
「ですが」
受付嬢は一枚の書類を取り出した。
「今回の功績を考慮し」
「考慮し?」
「特例でランクを昇格します」
ユウトが固まる。
「マジで?」
「もちろん、私の一存では決められないので、ギルド長の判断になりますが、今回の一件は私の方から進言いたします」
周囲の冒険者たちもざわついた。
「特例だってよ」
「新人なのに?」
「まぁ行方不明者全員助けたしな」
誰も反対しなかった。
むしろ当然だと思われていた。
「問題なければ明日には新しいギルドカードをお渡しできるので、明日の朝またこちらへ来てください」
「おっ…おぉ」
正直よく分かっていなかった。
「もっと喜んでください」
「いや、嬉しいぞ?」
「全然そんな顔に見えません」
失礼だった。
その様子を見ていたシエルが呟く。
「嬉しいのよ」
「なんで分かるんだよ」
「尻尾」
「うそだろ」
慌てて後ろを確認する。
受付嬢が首を傾げた。
「尻尾?」
「何でもない」「何でもないわ」
同時にシエルも便乗した。
◇
「ありがとな」
ユウトは頭を搔きながら言った。
「おねぇさん」
「おねぇさんでも間違いではないんですけど……」
受付嬢が少し困ったように笑う。
「?」
「できればフィーナと呼んでもらえると嬉しいです」
ユウトが瞬きをする。
「フィーナ?」
「はい」
彼女は小さく微笑んだ。
「改めてよろしくお願いします」
「こちらこそ」
ユウトも笑う。
「よろしくな、フィーナ」
その瞬間フィーナは少しだけ嬉しそうな顔をした。
そんな様子を見ながらシエルがぽつりと呟く。
「距離が近いわね」
「そうか?」「そうなんですか?」
二人同時だった。
「……」
シエルは何も言わなかった。
こうして。
行方不明事件は幕を閉じた。
だがユウトはまだ知らない。
この昇格が次の面倒事への入り口になることを。
第三十話を読んでいただきありがとうございました!
無事に事件も解決し、ようやく一息つける回となりました。
正式な依頼ではなかったため報酬こそありませんでしたが、ユウトにとっては十分すぎる結果だったかもしれません。
そして、これまで「受付嬢」だった彼女もついに名前が判明しました。
フィーナです。
今後もギルドで顔を合わせる機会は多くなりそうですね。
それにしても、シエルは何が気になっていたのでしょうか。
……たぶん本人もよく分かっていません。
次回は新しいギルドカードの受け取りへ!
ブックマーク・評価・感想をいただけると励みになります!




