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転生したら最強種だけどレベルが最弱でした。  作者: マッティー
第三章 魔族大陸

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第二百八十一話 足りない鉱石

三日間の自由時間を手に入れ、ルーンガルドの街を見て回るユウトたち。


鍛冶工房を訪れた一行は、そこでこの国が抱えているちょっとした問題を知ることになります。


それでは、第281話をお楽しみください!

「……よし、宿も決まったな!」


 ルーンガルドの街へ到着したユウトたちは、商業区画から少し離れた場所に宿を確保していた。


 街の中心部にも近く、歩いていけば武器屋や鍛冶工房が立ち並ぶ大通りへ出られるらしい。


 部屋へ荷物を置いたユウトは、早速街を見て回ろうと意気込んでいた。


「じゃあ、早速鍛冶屋に行こうぜ!」


「主! あーしも行くっす!」


 二人は顔を見合わせると、勢いよく部屋を出ようとした。


 しかし、その背中にシエルの声が掛かる。


「ちょっと待ちなさい。もう夕方よ?」


「……え?」


 ユウトが窓の外へ目を向けると、街の建物が夕日に照らされ、赤く染まり始めていた。


 国境での確認に時間がかかった上、街へ到着してからも荷物の受け渡しや宿探しをしていたため、思っていた以上に時間が経っていたらしい。


「……まだ少しくらい見られるんじゃない?」


「それより、先に食事を済ませましょう。三日間も歩き続けたんだから、今日はゆっくり休んだ方がいいわ」


「主! ご飯っす!」


 その一言で、シアの興味はあっさりと切り替わった。


「……お前、さっきまで鍛冶屋って言ってただろ」


 リトが呆れたように笑う。


「鍛冶屋は明日もあるっす! でも今日のご飯は今日しか食べられないっす!」


「……なんかいいこと言ってるようで、全然言ってないな」


 ユウトは苦笑しながらも、シアの言葉に頷いた。


「まあ、それもそうだな。今日は飯食って、明日からゆっくり見て回るか!」


「それがいいわね」


 こうして四人は宿の近くにあった食堂へ向かった。


 店内には仕事を終えた職人たちが集まっており、酒を飲みながら賑やかに話している。大きな皿に盛られた肉料理や焼きたてのパンが次々と運ばれ、食欲をそそる香りが漂っていた。


「……おお! 美味そう!」


「主! あーし、あれ食べたいっす!」


「俺もあれにしようかな!」


「……お前ら、似た者同士だな」


 リトが呆れたように呟く。


 結局、二人があれこれ注文したせいで、テーブルの上には大量の料理が並ぶことになった。


 長旅を終えた後の食事は格別で、ユウトたちは久しぶりにゆっくりとした時間を過ごした。


 その後は宿へ戻り、翌日の街歩きを楽しみにしながら休むことにした。


 ◇


 翌朝。


「……すげぇ」


 宿を出たユウトは、早速目の前に広がる光景に見入っていた。


 昨日は商隊の護衛を終え、宿を確保したところで一日が終わってしまったため、本格的に街を見て回るのは今日が初めてだった。


 大通りには朝から多くの人々が行き交い、店先では商人たちが商品の準備を進めている。


 そして、通りの奥からは規則的な金属音が響いていた。


 ――カァン! カァン!


 まだ朝だというのに、すでにいくつもの工房で鍛冶仕事が始まっているらしい。


「……こっちも武器屋だ」


 ユウトが通りの一角を指差す。


「主! 向こうにもあるっす!」


 シアも嬉しそうに声を上げた。


 店先には剣や斧、槍といった武器が所狭しと並び、その隣には鎧や盾を扱う店まである。


 中には、ユウトが見たこともないような形状の武器も置かれていた。


「防具屋も多いな。アルヴェインとは全然違うぜ」


 リトも興味深そうに周囲を見渡している。


「さすが鍛冶が盛んな国ね」


 シエルが穏やかに微笑んだ。


 通りには武具を扱う商人だけでなく、職人らしい格好をしたドワーフたちの姿も多かった。


 大きな金槌を肩に担いで歩く者もいれば、金属の塊を積んだ荷車を押している者もいる。


 街全体が、鍛冶という産業を中心に動いているように感じられた。


「こういうの、見てるだけでも面白いな」


 ユウトは店先に並ぶ武器を眺めながら笑った。


 人間界でも様々な武器を見てきたが、この街にはそれらとは違った特徴を持つ品物が多い。


 使用する種族に合わせて造られているのか、大きさや形状にも随分と幅があった。


「主! これすごいっす!」


 突然、シアが一軒の武器屋の前で声を上げた。


「……どれ?」


 ユウトが振り返ると、店先には巨大な斧が飾られていた。


 シアの身長と同じくらいの長さがあり、刃の部分だけでも相当な重量がありそうだった。


「……でかっ!」


 ユウトは思わず目を丸くした。


「主! あーし、これ持ってみたいっす!」


「……やめとけ」


 すかさずリトが止めに入る。


「なんでっすか!?」


「絶対振り回すだろ」


「振らないっす!」


 シアは胸を張って答えた。


 しかし、リトはまったく信用していない様子だった。


「……本当に?」


「ちょっとしか!」


「振る気じゃねぇか!」


 リトの突っ込みが飛ぶ。


 ユウトも思わず笑ってしまったが、シアは納得できないらしく頬を膨らませていた。


「……ちょっと持ってみたいだけっす!」


「店の物で遊ばないの」


 シエルが静かに注意する。


「……はいっす」


 シアは残念そうに巨大な斧から離れた。


「見るだけっす……」


「最初からそうしろよ」


 リトが呆れたように呟く。


 そんなやり取りをしながら歩いていた時、ユウトの耳に一際大きな金属音が届いた。


「……お?」


 足を止め、音のする方へ視線を向ける。


 そこにあったのは、武器を並べた店ではなかった。


 建物の奥からは赤い炎の光が漏れ、熱を帯びた空気が入口付近まで漂っている。


 そして、規則的な槌の音が絶え間なく響いていた。


「……鍛冶屋か」


「工房みたいね」


 シエルも興味深そうに覗き込む。


「……ちょっと見てみたいな」


 ユウトの目が輝いた。


 これまで完成した武器を見ることはあっても、実際に武器が造られているところを間近で見る機会は少なかった。


 しかも、ここは鍛冶の国として知られるルーンガルドだ。


 どのような技術が使われているのか、興味が湧かないはずがない。


「入ってみようぜ!」


「……邪魔にならないようにしなさいよ」


「分かってるって!」


 ユウトは元気よく答えると、開かれた工房の入口へ近付いた。


 ◇


 ――カァン!


 ――カァン! カァン!


 工房の中では、一人のドワーフの男が真っ赤に熱せられた金属を槌で叩いていた。


 分厚い前掛けを身に着け、両腕には鍛え抜かれた筋肉が浮かび上がっている。


 男が槌を振り下ろすたびに金属が甲高い音を響かせ、細かな火花が周囲へ飛び散った。


「……おお」


 ユウトは思わず身を乗り出した。


 高温で熱せられた金属は、槌で叩かれるたびに少しずつ形を変えていく。


 その動きには迷いがなく、何度も繰り返してきた作業であることが見て取れた。


「主、近いっす!」


 シアが後ろから声を掛ける。


「だって、すげぇぞ!」


「危ないわよ。火花も飛んでいるんだから」


 シエルの注意に、ユウトは慌てて一歩下がった。


 邪魔をしてはいけないと分かっていても、つい目の前の作業に引き込まれてしまう。


 男はそんな四人に気付く様子もなく、黙々と槌を振るい続けていた。


 やがて金属を確認すると、傍らの水槽へと移す。


 ジュウゥゥッ!


 激しい音とともに白い蒸気が立ち上り、熱気を含んだ空気が工房の中へ広がった。


「……すげぇ」


 ユウトが感心していると、男がようやくこちらへ顔を向けた。


「……なんだ、お前ら?」


 低く、少ししゃがれた声だった。


「客か?」


「あ、邪魔だった?」


 ユウトが慌てて尋ねる。


 男は四人を一通り眺めた後、肩をすくめた。


「別に構わん。今の作業は一区切りついたところだ」


「……よかった!」


「で、武器でも探してるのか?」


「いや、鍛冶してるところを見てみたくてさ」


「……見物か」


 男は少し意外そうに眉を上げた。


「ダメだった?」


「仕事の邪魔をしなけりゃ好きにしろ。ただし、炉や道具には勝手に触るなよ」


「よっしゃ!」


 ユウトは嬉しそうに拳を握った。


「主! 怒られなかったっす!」


「俺はどこに行っても怒られるわけじゃないからな!?」


「アルヴェインでは大体怒られてたけどな」


 リトがぼそりと呟く。


「リト!」


「事実だろ?」


「ぐっ……!」


 ユウトが言葉に詰まると、ドワーフの男が小さく笑った。


「……変わった冒険者だな、お前ら」


「よく言われる!」


「褒めてねぇと思うぞ」


 リトの指摘に、シアが楽しそうに笑った。


 男はそんな四人のやり取りを見て、呆れたように首を振りながらも、どこか面白がっている様子だった。


 どうやら、見物すること自体は本当に気にしていないらしい。


 ユウトは安心すると、改めて工房の中を見渡した。


 壁には剣や斧、槍などの武器が掛けられており、作業台には製作途中と思われる金属部品が並んでいる。


 どれも丁寧に造られているようで、職人の技術の高さが伝わってきた。


 しかし、そんな中で一つ気になることがあった。


「……あれ?」


 ユウトは壁際の棚へ視線を向けた。


 いくつもの武器が並んでいる一方で、棚の一部だけが妙に空いている。


 置かれている台の数から考えても、本来はもっと多くの商品があったように見えた。


「……なんか、あそこだけ少なくない?」


 ユウトが指差す。


「ん?」


 男もそちらへ視線を向けた。


「武器、いっぱい売れたの?」


「……いや」


 男は小さく首を横に振った。


 それまで気さくに話していた表情が、僅かに曇る。


「……作れねぇんだよ」


「……作れない?」


「ああ。材料が足りねぇ」


 男は手にしていた槌を作業台へ置くと、空いた棚を見つめた。


「最近は新しい武器を作りたくても、思うように作れなくてな。注文も溜まってるってのに、困ったもんだ」


「……材料って?」


「鉱石だよ」


 男は短く答えた。


 ルーンガルドは鍛冶が盛んな国であり、多くの職人が日々大量の鉱石を必要としている。


 その材料の多くは周辺の鉱山から運び込まれているらしい。


 しかし、最近になって鉱石の供給が不安定になり、工房によっては仕事に支障が出始めているという。


「……鉱石が採れなくなったの?」


 ユウトが尋ねると、男は首を横に振った。


「採れなくなったんじゃねぇ。採りに行けねぇんだ」


「……どういうこと?」


「鉱山に魔物が住み着いちまったんだよ」


「……魔物!」


 ユウトが思わず声を上げた。


 その瞬間、隣にいたシエルとリトが揃ってこちらを見る。


「……主」


 シアまで何かを察したように声を掛けてきた。


「いや! 別に喜んでないぞ!」


「まだ何も言ってないっす」


「…………」


「……自覚はあるのね」


 シエルが呆れたように呟く。


「うるさい!」


 ユウトが抗議すると、ドワーフの男は不思議そうに四人を見比べた。


「……なんなんだ、お前ら?」


「気にしないでくれ。これはもう一生治らない病気みたいなもんだ」


 リトが真顔で答える。


「誰が病気だ!」


 ユウトの突っ込みに、男は豪快に笑った。


「がはは! 面白ぇ奴らだな!」


 どうやら、すっかり打ち解けたらしい。


 ユウトは軽く咳払いをすると、改めて話を戻した。


「……それで、その魔物は倒せないの?」


「ああ。鉱山の奥に入り込んじまってるらしくてな」


「冒険者は?」


「ギルドが討伐隊を出してるよ。ただ、坑道の中じゃ大人数で動きにくいし、思ったより手こずってるみてぇだ」


「……なるほど」


 ユウトは腕を組んだ。


 鉱石が運び出せなくなり、材料不足で困っている鍛冶師たちがいる。


 その原因となっているのは、鉱山に住み着いた魔物。それを倒せば、鉱石の採掘も再開できるかもしれない。


「……じゃあ、俺たちが――」


「……ユウト」


「…………」


 言い終わるよりも早く、シエルの声が飛んできた。


 ユウトはゆっくりと振り返る。


「……何?」


「今、何を言おうとしたの?」


「……俺たちが倒せばいいんじゃないかなぁって」


「……観光よ」


「でも、困ってるじゃん」


「それに、私たちは依頼を受けていないでしょう?」


 シエルは静かに答えた。


 確かに、その通りだった。


 今は商隊の取引が終わるまでの自由時間であり、鉱山の魔物を討伐する依頼など受けていない。


 しかも、すでにギルドから討伐隊が派遣されているという。


 勝手に首を突っ込めば、また別の問題を引き起こしかねなかった。


「……アニキ」


 リトも念を押すように声を掛けてくる。


「分かってるよ!」


 ユウトは不満そうに頬を膨らませた。


「勝手に鉱山へ行ったりしないって!」


「……おお!」


 シアが驚いたように目を輝かせた。


「主が成長してるっす!」


「だから俺を何だと思ってるんだよ!」


 ユウトが抗議すると、リトが小さく笑った。


「いや、以前ならそのまま鉱山へ向かってただろ?」


「……まあ、否定はできないけど」


 ユウトは少しだけ視線を逸らした。


 アルヴェインでミレアに怒られたことは、まだ記憶に新しい。


 確かに、以前の自分なら好奇心のまま飛び出していたかもしれない。


 しかし、何度も同じ失敗を繰り返すつもりはなかった。


 少なくとも、今回は違う。


「……でもさ」


 ユウトの口元に、にやりと笑みが浮かんだ。


「依頼なら問題ないんだろ?」


「…………」


 シエルの表情が固まった。


「……まさか」


「よし! ギルド行こうぜ!」


 ユウトは勢いよく立ち上がった。


「……はぁ。結局行くのね」


 シエルが深いため息を吐く。


「だって、勝手に鉱山へ行くよりいいだろ!」


「……それはそうだけど」


「俺だって学習するんだよ!」


 ユウトは得意げに胸を張った。


「それ……胸を張るところなのか?」


 リトが呆れたように呟く。


 しかし、今回はギルドを通すという判断自体、間違っているわけではない。


 困っている者を助けたいという気持ちは悪いことではないし、正式な依頼として受けられるのであれば、冒険者として仕事をすることになる。


「……よし!」


 ユウトは工房の出口へ向き直った。


「鉱山の依頼、受けに行こうぜ!」


「主! 待つっす!」


 シアも慌てて後を追う。


「……本当に行くのね」


 シエルは何とも言えない表情を浮かべた。


「まあ、ちゃんとギルドを通すならいいんじゃねぇか?」


 リトが苦笑する。


「それはそうなんだけど……」


 シエルは小さく首を振ると、二人の後を追った。


 そんな四人を見送りながら、ドワーフの男は不思議そうに頭を掻いていた。


「……なんだか知らねぇが、元気な連中だな」


 そして、再び作業台へ向き直ると、槌を手に取った。


 工房には、また規則的な金属音が響き始めた。


 ◇


「……受けられません」


「…………」


 ルーンガルドの冒険者ギルド。


 受付カウンターの前で、ユウトは固まっていた。


 先ほど工房で聞いた鉱山の魔物について調べたところ、確かに討伐依頼が出されていた。


 しかし、受付で確認した結果、返ってきたのは予想外の言葉だった。


「……なんで?」


 ユウトが尋ねると、受付嬢は依頼書を確認しながら答えた。


「こちらの依頼は、Cランク以上の冒険者を対象としています」


「…………」


 ユウトはゆっくりと自分のギルドカードへ視線を落とした。


 そこには、はっきりとEランクを示す文字が記されている。


「……二つ足りない」


「そういう問題ではありません」


 受付嬢が困ったように答えた。


「……どこかで聞いたやり取りね」


 シエルが呆れたように呟く。


「デジャヴっす!」


 シアも楽しそうに声を上げた。


「……俺もそんな気がする」


 リトが苦笑する。


 以前、アルヴェインでも同じようなことがあった。


 遺跡の調査依頼を受けようとしたものの、推奨ランクが足りず、ミレアに止められたのだ。


 あの時は結局、依頼を受けずに遺跡へ向かってしまい、後から散々怒られることになった。


 しかし、今回ばかりは同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。


「……ちなみに、もう誰か向かってるの?」


 ユウトが尋ねると、受付嬢は頷いた。


「はい。すでにCランク以上の冒険者を中心とした討伐隊が派遣されています」


「……へぇ」


「ただ、鉱山内は通路が狭く、複雑な構造になっている場所もありますので、討伐には時間がかかっているようですね」


「……じゃあ、まだ倒せてないんだ」


「現時点では、そのように報告されています」


 受付嬢は落ち着いた口調で説明を続けた。


「ですが、現在は討伐隊が対応していますし、ギルドとしても状況を確認しています。皆さんが独自に行動する必要はありません」


「……なるほど」


 ユウトは依頼書を見つめた。


 鉱山に住み着いた魔物。


 Cランク以上の冒険者たちが対応しているということは、それなりに危険な相手なのだろう。


 どんな魔物なのか、少し気になる。


 それに、材料不足で困っていた鍛冶師のことも思い出される。


 しかし、だからといって勝手に鉱山へ向かうわけにはいかなかった。


「……ユウト」


 隣にいたシエルが静かに名前を呼んだ。


「……分かってるよ」


 ユウトは小さく息を吐いた。


「……本当に?」


「行かない」


「……え?」


 シエルが少し驚いたように目を丸くした。


 リトも意外そうにユウトを見つめている。


「……アニキ?」


「勝手に鉱山には行かないって!」


 ユウトは胸を張って答えた。


「主! 偉いっす!」


 シアが嬉しそうに声を上げる。


「……当たり前のことなんだよ!」


 リトが即座に突っ込んだ。


「自分で分かってるじゃない」


 シエルも呆れたように笑った。


「でも、今回はちゃんとルール守っただろ!」


「まだ何もしてないけどな」


「……ぐっ!」


 リトの指摘に、ユウトは言葉を詰まらせた。


 確かに、依頼を受けられなかっただけで、特別なことをしたわけではない。


 しかし、今までなら何か理由をつけて勝手に動いていたかもしれないのだ。


 そう考えれば、自分としては十分な成長だった。


「……じゃあ、どうするっすか?」


 シアが尋ねる。


 ユウトはもう一度、依頼書へ視線を向けた。


 鉱山の魔物については気になる。困っている鍛冶師たちを助けられればとも思う。だが、今の自分たちには依頼を受ける資格がない。


 それなら、答えは一つだった。


「……観光する!」


「切り替え早っ!」


 リトが思わず声を上げた。


「だって受けられないなら仕方ないだろ?」


「……意外と素直ね」


 シエルも驚いたように呟く。


「俺だって成長してるんだよ!」


 ユウトは得意げに胸を張った。


 正直に言えば、少し残念ではある。


 しかし、今回は自分たちの好奇心だけで動いていい状況ではないことくらい理解していた。


 すでに討伐隊が向かっているのなら、まずは彼らに任せるべきだろう。


「……よし!」


 ユウトは気を取り直し、仲間たちへ向き直った。


「次はどこ行く?」


「食べ歩きしたいっす!」


 シアが勢いよく手を挙げる。


「いいな!」


 ユウトも即座に頷いた。


「……本来の目的に戻ったわね」


 シエルが小さく笑う。


「まあ、今日は観光するつもりだったしな」


 リトも肩をすくめた。


 こうしてユウトたちは、鉱山へ向かうことなくギルドを後にした。


 困っている者がいる。その原因となっている魔物がいる。それを知りながらも、勝手に首を突っ込まない。


 少なくとも今回は、ユウトはきちんとルールを守った。――その日の夕方までは。

第281話を読んでいただきありがとうございます!


鍛冶師との出会いから、鉱山に魔物が住み着き鉱石が不足していることを知ったユウトたち。


いつものユウトならそのまま首を突っ込みそうなところですが、今回はきちんとギルドを通し、受けられないと分かれば素直に諦めました。


確かな成長を見せたユウト。


このまま何事もなく観光を楽しめるのでしょうか。


次回もぜひお楽しみに!


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


それでは、また次回お会いしましょう!

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