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転生したら最強種だけどレベルが最弱でした。  作者: マッティー
第三章 魔族大陸

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第二百七十八話 隣国への依頼

Eランクへ昇格し、受けられる依頼が増えたユウトたち。


依頼掲示板を眺めていると、これまでとは少し違う護衛依頼を見つけます。


それでは、第278話をお楽しみください!

「さて……」


 Eランクへ昇格した翌日。


 ユウトはアルヴェインの冒険者ギルドで、依頼掲示板を眺めていた。


 昨日まではFランクの依頼しか受けられなかったが、今は違う。Eランクへ昇格したことで、選べる依頼の種類が増えているのだ。


「何にしようかな」


「昨日までと違って、随分増えたわね」


 隣にいたシエルが、掲示板を見ながら呟いた。


「ああ。結構色々あるな」


 魔物の討伐に素材の採取、近隣の村への護衛、簡単な調査など、これまで受けられなかった依頼がいくつも並んでいる。


 特に護衛や調査の依頼は、Fランクの時と比べて行動範囲が広がっているようだった。


 昨日、アルヴェインの外も見てみたいと話していたこともあり、ユウトは普段よりも念入りに依頼書を確認していた。


「主! これなんかどうっすか?」


 シアが一枚の依頼書を指差した。


「ん? どれどれ……」


 ユウトが顔を近付ける。


「魔物討伐……十体か」


「そうっす! 十体も倒せるっす!」


 シアは嬉しそうに目を輝かせた。


 しかし、ユウトは少し考えた後、首を横に振った。


「……却下」


「なんでっすか!?」


 シアが驚いたように振り返る。


「また三十体くらい倒しそうだから」


「主なら五十体はいけるっす!」


「数の問題じゃねぇよ」


 後ろにいたリトが呆れたように突っ込んだ。


「普通に依頼をこなせるようになったばっかりだろ。少しは大人しくしておこうぜ」


「昨日Eランクになったばかりなのに、もう信用を失いたくないわね」


 シエルも苦笑しながら頷く。


「……お前ら、俺を何だと思ってるんだ」


 ユウトが不満そうに呟くと、リトが何かを思い出したように笑った。


「トラブ――」


「それ気に入ったの!?」


 ユウトが即座に振り返る。


「いや、結構しっくりくると思ってよ」


「しっくりこなくていいから!」


 リトは楽しそうに笑っているが、ユウトとしてはまったく嬉しくなかった。


 確かに最近は色々な騒動に巻き込まれているものの、好きで問題を起こしているわけではない。


 少なくとも、本人はそう思っていた。


「……ん?」


 そんなやり取りをしていた時、掲示板の端に貼られた一枚の依頼書が目に入った。


「……護衛?」


 ユウトは少し身を乗り出し、内容を確認した。


 そこに書かれていたのは、商隊の護衛依頼だった。


 数名の商人が荷物を運ぶため、アルヴェインから西へ向かう街道を利用するらしい。


 護衛の募集人数は四名。


 依頼内容も、商隊を目的地まで安全に送り届けるという、ごく一般的なものだった。


 しかし、ユウトが気になったのは、その行き先だった。


「……これ、結構遠くない?」


「どれ?」


 シエルが隣から依頼書を覗き込む。


「……確かに。今までの護衛依頼より距離があるわね」


「三日?」


「片道でそれくらいみたいね」


「遠いっす!」


 シアも驚いたように声を上げた。


 これまで受けていた護衛依頼は、近隣の村へ向かう比較的短いものばかりだった。


 しかし、今回の依頼は片道だけで三日ほどかかるという。


 しかも、それだけではなかった。


「……あれ?」


 ユウトは依頼書の下部へ視線を移した。


 目的地の横に、気になる記載があったのだ。


「……隣国?」


「そうみたいね」


 シエルが頷く。


「国を跨ぐのか?」


 リトも興味を持ったように顔を近付けた。


 確かに、目的地は現在いる国の外にあるらしい。


 街道を西へ進み、国境を越えた先まで同行する依頼のようだった。


「……へぇ」


 ユウトは思わず笑みを浮かべた。


 アルヴェインの周辺から離れ、別の国へ向かう。


 それなら、昨日話していた目的にも合っている。


 ただし、一つ確認しておきたいことがあった。


「……でも、これEランクで受けられるのか?」


 ユウトが首を傾げる。


 片道三日もかかる上に、国境まで越える依頼だ。距離だけを考えれば、今までの護衛依頼とは随分違っている。


「気になるなら聞いてみれば?」


 シエルが受付を指差した。


「……だな!」


 ユウトは依頼書を手に取ると、ミレアのいるカウンターへ向かった。


 ◇


「ミレアさん!」


「はい、ユウトさん」


 受付にいたミレアが顔を上げた。


 昨日、ようやくEランクへ昇格したばかりの四人が揃っているのを見て、穏やかに微笑む。


「今日はどのような依頼をお探しですか?」


「これなんだけど」


 ユウトは手に持っていた依頼書を差し出した。


 ミレアは内容を確認すると、小さく頷いた。


「ああ、こちらですか」


「隣国って書いてあるけど」


「はい。アルヴェインから西へ向かい、国境を越えた先まで商隊を護衛する依頼ですね」


「国境かぁ……」


 ユウトは少し考え込んだ。


 魔族大陸にも複数の国が存在していることは知っていたが、具体的にどのような関係なのかまでは調べていない。


 そもそも、アルヴェインへ来てからというもの、冒険者登録や遺跡の調査に夢中で、周辺の地理についてはほとんど気にしていなかったのだ。


「……そういやさ」


「何でしょう?」


「この辺って、国境に近い街なのか?」


「そうですね。西へ向かう街道を利用すれば、数日で隣国へ入ることができます」


「へぇ……」


「もちろん、魔族大陸には他にも複数の国がありますので、行き先によって移動にかかる時間は大きく変わりますよ」


「……そうなんだ」


 ユウトは興味深そうに頷いた。


 この大陸へ来てから、最初の村とアルヴェインくらいしか訪れていない。


 そのため、魔族大陸全体がどのような場所なのか、まだほとんど知らなかった。


「国によって、暮らしている種族も違うの?」


 ユウトが尋ねると、ミレアは頷いた。


「ええ。もちろん、同じ種族が複数の国に暮らしていることもありますが、国によって種族の割合や文化、習慣は異なりますね」


「……へぇ!」


「アルヴェインのように様々な種族が集まる街もあれば、特定の種族が多く暮らしている地域もあります」


「同じ魔族大陸でも、そんなに違うのか」


 リトが感心したように呟いた。


「もちろんです。すべての国が同じ文化や考え方を持っているわけではありませんから」


「なるほどねぇ……」


 ユウトは腕を組んだ。


 考えてみれば、当たり前の話だった。


 人間界でも国が違えば法律や文化、生活習慣は異なっていた。


 それなら、様々な種族が暮らす魔族大陸で、国ごとに違いがあるのも不思議ではない。


 むしろ、その違いこそが興味深かった。


「……ちなみに、人間もいるの?」


 ユウトが尋ねる。


「いますよ。ただし、人口に占める割合は国や地域によってかなり違いますけど」


「……そうなんだ」


 ユウトは少し考え込んだ。


 アルヴェインでも、人間が暮らしている姿は見かけていた。


 ただ、他の種族が先に接客されている場面など、少し気になる光景も目にしている。


 それだけで人間が差別されていると決めつけることはできないが、種族によって扱いが違うのではないかという疑問は残っていた。


 他の国ではどうなのだろうか。


 人間と魔族が共に暮らしているのか。


 それとも、国によって関係は大きく異なるのか。


 今のユウトには、どれも分からない。


「……なんか面白そうだな」


 ユウトが呟くと、ミレアがすかさず口を開いた。


「観光依頼じゃありませんよ?」


「分かってるよ!」


「本当に?」


「昨日Eランクになった男を、もう少し信用してくれ!」


「昨日Eランクになったばかりだから、心配しているんです」


「なんでだよ!」


「行ける場所が増えましたから」


「……なるほど!」


「納得するなよ」


 リトが即座に突っ込んだ。


 しかし、ミレアの心配も理解できなくはなかった。


 これまでより遠くへ行けるということは、それだけ予想外の出来事に遭遇する可能性も増えるということだ。


 まして、目の前にいるのは、ギルドの忠告を無視して遺跡へ向かった前歴のある冒険者である。


 まだ完全に安心して任せられるとは言い切れないのだろう。


「……でも、ちょうどいいんじゃない?」


 そこでシエルが口を開いた。


「私たちは、まだ魔族大陸についてほとんど知らないでしょう? 依頼をこなしながら別の国へ行けるなら、悪くないと思うわ」


「俺もそう思う!」


 ユウトが勢いよく頷く。


 護衛という仕事がある以上、自由に動き回るわけにはいかない。


 それでも、移動中に見られる景色や街道の様子だけでも、今まで知らなかったことが分かるかもしれない。


「他の国、行ってみたいっす!」


 シアも嬉しそうに声を上げた。


「俺も興味あるな。せっかくこっちの大陸まで来たんだし」


 リトも同意する。


 どうやら、四人の意見は一致したようだった。


「……決まりだな!」


 ユウトは再び依頼書をミレアへ差し出した。


「これ受ける!」


「分かりました」


 ミレアは依頼書を受け取ると、改めて内容を確認した。


「こちらはEランク以上の冒険者を対象とした依頼です。護衛は四名を募集していますので、皆さんなら人数の条件も満たしていますね」


「おお! ちょうどいいじゃん!」


「ただし、近隣の村へ向かう護衛とは違い、数日間の移動になります。道中の安全確認や商隊との連携も必要ですから、その点は理解しておいてください」


「もちろん!」


「それと、護衛の仕事は目的地に到着するまで続きます。途中で勝手に離れることはできませんよ?」


「分かってるって!」


 ユウトが元気よく答えると、ミレアは一度頷いた。


「……では、受注の手続きを進めますね」


「よし!」


 これで、ようやくアルヴェインの外へ向かう依頼を受けられることになった。


 しかし、ミレアは書類を整理しながら、何かを思い出したように顔を上げた。


「……ただし」


「…………」


 その一言に、ユウトの表情が固まった。


「……何ですか、その顔?」


「また怒られるのかと思って」


「怒られるようなことをしなければ、怒りません!」


「はい!」


 ユウトは反射的に背筋を伸ばした。


 ミレアはそんな姿を見て小さく息を吐くと、改めて説明を始めた。


「今回の依頼は、商隊の護衛です。目的は魔物を倒すことではなく、商隊を無事に目的地まで送り届けることです」


「分かってる!」


「街道から勝手に外れない」


「はい」


「珍しい魔物を見つけても、追い掛けない」


「はい」


「怪しい洞窟を見つけても入らない」


「はい」


「遺跡を見つけても――」


「入らない!」


 ユウトが先回りして答えた。


 ミレアは一瞬驚いたように目を丸くしたが、すぐに小さく微笑んだ。


「……分かってるじゃないですか」


「昨日散々言われたからな!」


「成長しましたね」


「なんか褒められてる気がしない!」


 ユウトの抗議に、ミレアは楽しそうに笑った。


 どうやら、少しずつではあるが、本当に信用が戻ってきているらしい。


「それでは、正式に受注を受け付けます」


「おう!」


「出発は明日の朝です。商隊の方々とはアルヴェインの西門で合流してください」


「了解!」


「依頼主の方から、道中の詳しい予定について説明がありますので、必ず確認してくださいね」


「分かった!」


「……ユウトさん」


「何?」


「今回は本当に、普通にお願いしますよ?」


「任せろ!」


「…………」


「……何?」


「いえ。お気をつけて」


 ミレアは少し不安そうにしながらも、最後には笑顔で四人を送り出してくれた。


 こうしてユウトたちは、魔族大陸で初めて国境を越える護衛依頼を受けることになった。


 ◇


「……隣の国かぁ」


 ギルドを出たユウトは、アルヴェインの街並みを眺めながら呟いた。


 大通りには様々な種族の人々が行き交い、店先では商人たちが威勢のいい声を上げている。


 魔族大陸へ来た当初は、見慣れない光景ばかりで驚いていた。


 しかし、アルヴェインで暮らすうちに、そうした景色にも少しずつ慣れてきたように思う。


 それでも、この街の外にはまだ知らない世界が広がっているのだ。


「楽しみっす!」


 シアが嬉しそうに声を上げた。


「だから、遊びに行くんじゃねぇぞ」


 リトが念を押す。


「分かってるっす!」


 シアは元気よく答えた。


 しかし、その表情はどう見ても遠足を楽しみにしている子供のようだった。


「でも、目的地に着いたら少しくらい見て回る時間はあるだろ」


 ユウトが笑いながら言うと、シエルが呆れたように振り返った。


「あなたまで観光気分になってるじゃない」


「だって、せっかくだし!」


「まずは依頼を終えてからでしょう?」


「……それはそうだな」


 ユウトは素直に頷いた。


 今回の目的は商隊の護衛だ。


 途中で何か面白そうなものを見つけたとしても、勝手に寄り道するわけにはいかない。


 これまでのように自分たちだけで行動するのとは違い、守るべき相手がいるのだから。


「……よし!」


 ユウトは改めて仲間たちへ向き直った。


「まずは依頼だな!」


「そうね」


「普通に護衛する!」


「それでいいんだよ」


 リトが頷く。


「何事もなく目的地に到着する!」


「そうっす!」


 シアも元気よく声を上げた。


 ユウトは満足そうに頷いたが、シエルは少し考え込んでいた。


「……その前に、明日の準備をしないとね」


「準備?」


「片道三日もかかるんでしょう? 必要なものを確認しておかないと」


「……あ」


 ユウトは思わず声を漏らした。


 確かに、今回は日帰りの依頼ではない。


 寝泊まりする場所や食事については、依頼主と合流してから詳しく確認することになるだろうが、自分たちでも用意しておくべきものはあるはずだ。


「……危なかった」


「もう忘れてたの?」


 シエルが呆れたように尋ねる。


「いや、忘れてたわけじゃなくて!」


「じゃあ、何を準備するつもりだったの?」


「…………」


 ユウトは少し考えた。


「……気合い?」


「それだけで三日間どうするのよ!」


 シエルの突っ込みが飛んできた。


「主! あーしは食べ物があれば大丈夫っす!」


「それはそれで心配だな……」


 リトが苦笑する。


 ユウトはそんな仲間たちを見ながら、思わず笑ってしまった。


 どうやら、まだまだ普通の冒険者として学ぶことは多そうだった。


「よし! じゃあ買い出しに行こうぜ!」


「最初からそう言いなさいよ」


「主! 肉も買うっす!」


「もちろん!」


「だから食べ物ばっかりじゃねぇか!」


 賑やかな声を響かせながら、四人は大通りを歩き始めた。


 明日、ユウトたちはアルヴェインを出発し、西の街道を通って隣国へと向かう。


 初めて訪れる国。


 まだ見たことのない街並み。


 そして、そこで暮らす様々な種族の人々。


 魔族大陸へ来てから、少しずつ明らかになってきた世界の謎も、別の土地へ足を運ぶことで新たな手掛かりが見つかるかもしれない。


 もちろん、今回の目的はあくまで商隊の護衛だ。何事もなく、安全に目的地へ到着すること。


 それが、今のユウトたちに任された仕事だった。


 こうして四人は、アルヴェインを拠点とする冒険者活動から一歩踏み出し、魔族大陸での新たな旅へと向かおうとしていた。

第278話を読んでいただきありがとうございます!


今回ユウトたちが選んだのは、隣国へ向かう商隊の護衛依頼。


魔族大陸へ来てからアルヴェイン周辺で活動してきたユウトたちですが、いよいよ行動範囲が広がっていきます。


果たして隣国には、どんな景色や出会いが待っているのでしょうか。


次回もぜひお楽しみに!


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


それでは、また次回お会いしましょう!

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