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転生したら最強種だけどレベルが最弱でした。  作者: マッティー
第三章 魔族大陸

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第二百六十四話 最初の街へ

ルゥと別れ、村で一夜を過ごしたユウトたち。


翌朝、魔族大陸についてもっと知るため、教えてもらった大きな街を目指して出発します。


人間界とは違う景色を眺めながら進む四人。


しかし、その道中で何かの気配を感じ取ったユウトは――。


それでは、第264話をお楽しみください!

 翌朝。


「よし! 行くか!」


 宿の前で大きく伸びをしたユウトは、朝の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。


 昨日は魔族大陸へ到着してから、初めて見る種族や文化に驚かされてばかりだった。


 今日はいよいよ、ルゥから教えてもらった大きな街へ向かうことになる。


「おーっす!」


 隣ではシアも元気よく腕を上げていた。


「朝から元気ね」


 シエルが呆れたように呟く。


「シエルは眠いの?」


「別に」


「眠そうっす!」


「……シア」


「なんすか?」


「黙りなさい」


「なんであーしだけ!?」


 抗議するシアの横で、リトが大きな欠伸をした。


「朝からうるせぇ……」


「リトも眠そうじゃん」


 ユウトが笑いながら声を掛けると、リトは眠そうな目を向けてきた。


「誰かさんたちが朝っぱらから騒いでるからな」


「俺たち今来たばっかりだぞ?」


「部屋でもうるさかっただろ」


「…………」


 ユウトとシアは思わず顔を見合わせた。


 どうやら、思い当たる節がないわけではないらしい。


「主」


「言うな」


「アニキ」


「お前も言うな」


「何も言ってねぇよ」


「先手を打った」


「…………」


 リトは何か言いたそうにしていたが、やがて諦めたようにため息を吐いた。


 そんな仲間たちを見て、ユウトは小さく笑った。


 魔族大陸へ来ても、朝から騒がしいことに変わりはない。


 もっとも、こうして気兼ねなく言い合える仲間がいるのは、悪いことではなかった。


「それじゃ……」


 ユウトは村の外へ続く道へ視線を向けた。


 昨日、ルゥが教えてくれた道だ。


 この先に大きな街があるという話だったが、実際にどれほどの距離があるのかは分からない。


「大きな街を目指しますか!」


「そうね」


「今度こそ迷子にならないっす!」


「不吉なこと言うな!」


 シアの宣言に、ユウトは思わず突っ込んだ。


「一本道なんだろ?」


 リトが呆れたように口を開く。


「これで迷ったら逆にすげぇぞ」


「やめろ!」


「主ならやりかねないっす!」


「俺をなんだと思ってんだよ!」


「主っす!」


「答えになってねぇ!」


 そんな賑やかな会話を交わしながら、四人は村を後にした。


 ◇


 村を出てしばらく歩くと、周囲には人の姿がほとんど見られなくなった。


 道の両側には見慣れない植物が生い茂り、その向こうには広大な大地が続いている。


 遠くには巨大な山々が連なり、人間界とは異なる色合いの空には、鳥のような生き物が悠々と飛んでいた。


 改めて眺めれば、どこを見ても新鮮な景色だった。


 しかし、歩くこと自体は人間界にいた頃と何も変わらない。


「……なぁ」


「何?」


 シエルが隣へ視線を向ける。


「暇だな」


「歩いてるだけだもの」


「何かないの?」


「何かって何よ」


「こう……魔族大陸っぽいやつ」


「何それ?」


「俺も分かんない」


 自分でも何を求めているのか分からず、ユウトは困ったように笑った。


 魔族大陸へ来る前は、未知の世界というだけで何か特別なことが起こるような気がしていた。


 だが、実際にはこうして道を歩く時間もある。


「大体アニキ、昨日散々見ただろ」


 リトが呆れたように言った。


「そうだけどさぁ……」


 ユウトはもう一度周囲を見回した。


 確かに、昨日の村では様々な種族に出会い、人間界とは異なる文化にも触れた。


 今もこうして見知らぬ植物や生き物に囲まれているのだから、十分すぎるほど新しい体験をしているはずだ。


「景色は結構違うんだけどな」


「十分じゃないっすか?」


「もっとこう……」


「だから何を求めてるのよ」


「魔族大陸感?」


「知らないわよ」


 シエルにあっさり切り捨てられ、ユウトは肩を落とした。


 その時だった。


「……ん?」


 ユウトの耳が僅かに動いた。


 周囲を漂う風の音に混じって、何かが草を掻き分けるような音が聞こえた気がしたのだ。


「どうしたっすか?」


「何かいる」


 その一言に、シエルの表情が変わった。


「どこ?」


「あっち」


 ユウトが道の先へ視線を向ける。


 少し離れた場所にある草むらが、不自然に揺れていた。


 ガサッ!


 次の瞬間、茂みの中から何かが勢いよく飛び出してきた。


「うおっ!」


 思わず一歩下がったユウトの前に現れたのは、見たことのない四足歩行の魔物だった。


 全身は黒い体毛に覆われ、頭には長い二本の耳が伸びている。


 そして何より特徴的だったのは、その頭部から突き出た三本の角だった。


「……なんだこいつ?」


 ユウトが首を傾げる。


「私に聞かないで」


 シエルも見覚えがないらしく、警戒したまま答えた。


「シアは?」


「知らないっす!」


「リト?」


「俺も知らねぇよ」


「…………」


 どうやら、誰もこの魔物について知らないらしい。


 四人が様子を窺っていると、魔物は低い唸り声を上げながら身を低くした。


「グルルルル……」


 明らかにこちらを敵視している。


 しかし、ユウトの反応は仲間たちの予想とは少し違っていた。


「おお……!」


 その目が、興味深そうに輝き始めたのだ。


「……主?」


「知らない魔物だ!」


「そこ喜ぶところっすか!?」


「だって、人間界じゃ見たことないぞ!」


 ユウトは目の前の魔物を観察しながら、嬉しそうに声を上げた。


 魔族大陸へ来てから、初めて遭遇した野生の魔物。


 人間界とは生息する種族も違うのではないかと思っていたが、実際に見知らぬ魔物を目の当たりにすると、自然と好奇心が湧いてくる。


「そりゃ魔族大陸だからな!」


 リトが呆れたように突っ込む。


「すげぇ!」


「アニキ、襲われてんだぞ!?」


「分かってる!」


 口ではそう答えたものの、ユウトの視線は魔物の頭に生えた三本の角へ向けられたままだった。


 その間にも、魔物はじりじりと距離を詰めてきている。


 そして、次の瞬間――。


「グオォッ!」


 魔物が勢いよく地面を蹴った。


「速っ!」


 一直線にユウトへ向かって飛び掛かってくる。


「主!」


「大丈夫!」


 シアの声に答えながらも、ユウトはその場から動かなかった。


 迫り来る魔物を正面から見据え、軽く片手を差し出す。


「よっ」


 ゴッ!


 鈍い音が響いた。


「グ……!?」


 勢いよく突進してきた魔物が、突然その場で動きを止めた。


 ユウトが片手で頭を受け止めていたのだ。


 魔物はなおも前へ進もうと脚に力を込めていたが、ユウトの腕はびくともしない。


「おお……近くで見るとすげぇな」


 ユウトは目の前にある三本の角を、興味深そうに眺めていた。


 先ほどは離れていて分からなかったが、こうして間近で見ると随分と特徴的な形をしている。


「……主」


「なんだ?」


「襲われてるっす」


「あ、そうだった」


「忘れるな!」


 リトの突っ込みにも、ユウトは悪びれる様子がなかった。


 魔物は必死に暴れているものの、頭を押さえられているため身動きが取れない。


 それでも力を緩める気配はなく、四本の脚で地面を踏みしめている。


「結構力あるな」


「……それで?」


 シエルが呆れたように尋ねた。


「ん?」


「どうするのよ」


「…………」


 ユウトは改めて魔物へ視線を向けた。


 倒そうと思えば、いつでも倒せる。


 ただ、せっかく初めて見る魔物なのだから、このまま終わらせてしまうのも少し惜しい気がした。


「……どうしよう」


「考えてなかったの!?」


「いや、倒すのは簡単なんだけど……」


「ならさっさと倒せよ」


 リトが当然のように言う。


 しかし、ユウトは少し考え込んだ後、別のことを思い付いた。


「……リト」


「なんだ?」


「こいつ食えるかな?」


「また食い物かよ!!」


 リトが思わず声を張り上げた。


「だって知らない魔物だぞ!? 知らないスキルがあるかもじゃん!」


「……そっか。食えばスキルを覚えるんだっけな!」


 リトはようやくユウトの意図を理解したらしい。


 ユウトには、捕食した魔物から能力を取り込む暴食進化がある。


 人間界では見たことのない魔物なら、未知のスキルを持っている可能性もあるのだ。


「主!」


 そんな話を聞いていたシアが、嬉しそうに声を上げた。


「お?」


「あーしも気になるっす!」


「だよな!」


「お前は食いたいだけだな!」


 リトの突っ込みに、シアは笑っているだけだった。


 その横で、シエルが額へ手を当てる。


「朝から元気ね……」


「それさっきも言った!」


「褒めてないわよ」


「知ってるよ!」


 相変わらず賑やかな一行だったが、魔物の方はそれどころではなかった。


 ユウトの手から逃れようと必死に暴れているものの、どれだけ力を込めても頭を動かすことができない。


 その様子を見て、ユウトはようやく考えを決めた。


「……とりあえず大人しくしてもらうか」


 押さえていた手に、ほんの少しだけ力を込める。


 ゴンッ!


「ギャンッ!?」


 鈍い音とともに、魔物の身体が地面へ沈み込んだ。


「…………」


 ユウトはしばらくその様子を眺めていた。


「……主」


「ん?」


「やりすぎじゃないっすか?」


「……え?」


 慌てて手を離してみると、魔物は地面に伸びたまま動かなくなっていた。


 どうやら、気絶してしまったらしい。


「…………」


 ユウトは困ったように頭を掻いた。


 そんな時、頭の中に補佐機構の声が響いた。


『対象の解析完了』


(お?)


『対象名称――トリニティラビット』


(トリニティラビット?)


 聞き慣れない名前だったが、三本の角を持つ姿を見る限り、確かに特徴を表しているようにも思える。


 ユウトが興味深く報告を待っていると、続けて解析結果が告げられた。


『固有スキル無し』


『暴食進化によるスキル獲得の可能性――ゼロ』


「……なんだ、食べる意味がないな」


 思わず口にしてから、ユウトはふと疑問を覚えた。


(……って、知ってたなら先に教えろよ!)


『解析前にマスターが倒してしまっただけです』


「…………」


 あまりにも正論だった。


 確かに、魔物が飛び出してきてから、ろくに解析を待たずに自分で取り押さえてしまったのだ。


 文句を言える立場ではなかった。


「……食べないんすか?」


 シアが残念そうに尋ねてきた。


「ああ。スキルがないみたいだからな」


「……どうするのよ、これ」


 シエルが地面に伸びた魔物へ視線を向けた。


 ユウトも少し考えたが、気絶しているだけなら無理にどうこうする必要もないだろう。


「気絶してるだけだから、寝かせておいてやろうぜ」


「……かわいそうに」


 シエルが小さく呟く。


「襲われたの俺なんだけど?」


 ユウトは思わず抗議した。


 確かに自分が気絶させたのだが、そもそも先に襲い掛かってきたのは向こうなのだ。


 それなのに、なぜか自分が悪者のようになっている。


「食べてみたかったっす……」


 その横では、シアが未練たっぷりに魔物を眺めていた。


「シア、いい加減肉から離れろ! アニキもだぞ」


 リトが呆れたように注意する。


「……分かったよ」


 ユウトは渋々頷いたが、すぐに隣のシアへ顔を向けた。


「おい、シア」


「なんすか?」


「お前のせいで俺まで怒られたじゃねーか」


「あーしはいつでも主の味方っすよ!」


「……もういい」


 まったく噛み合わない返答に、ユウトは深いため息を吐いた。


 結局、トリニティラビットはその場に寝かせておくことになった。


 未知の魔物との初遭遇は、思っていたよりも随分とあっけない結末だったが、少なくとも魔族大陸には人間界で見たことのない魔物が生息していると分かった。


 この先にも、まだ知らない魔物がいるのかもしれない。


 そんな期待を抱きながら、ユウトたちは再び街へ向かって歩き始めた。


 ◇


 それからさらに道を進んでいくと、遠くの景色に少しずつ変化が現れ始めた。


「……お?」


 何かに気付いたユウトが足を止めた。


「どうしたの?」


 シエルが尋ねると、ユウトは前方を指差した。


「あれ」


 遠くに、巨大な壁のようなものが見えていた。


 最初は地形の一部かと思ったが、目を凝らしてみると、どうやら人工的に造られたものらしい。


「もしかして、街っすか!?」


 シアが嬉しそうに声を上げる。


「そうみたいね」


「おお……!」


 ユウトの目が輝いた。


 昨日訪れた村とは、明らかに規模が違う。


 高い外壁が遠くからでもはっきりと確認でき、その向こうにはいくつもの大きな建物が見えている。


 人間界でも大きな街を訪れたことはあったが、魔族大陸で目にするのは初めてだった。


「すげぇ!」


「大きいっす!」


 ユウトとシアが揃って歓声を上げる。


「ようやく着いたか」


 リトが安堵したように呟いた。


「まだ距離はあるわよ」


 シエルが冷静に指摘する。


「いいんだよ!」


 ユウトは笑いながら答え、改めて遠くに見える街を眺めた。


 昨日の村では、多くの種族が共に暮らしていることを知った。


 人間界とは違う通貨や食べ物にも触れ、この大陸に対する印象は大きく変わっていた。


 そして、今日初めて遭遇した魔物も、これまで知らなかった存在だった。


 まだほんの一部しか見ていないというのに、魔族大陸には新しい発見が溢れている。


 あれほど大きな街なら、もっと多くの種族や文化に触れることができるかもしれない。


 何より、今の自分たちには情報が必要だった。


 この大陸がどのような場所なのか。


 古い遺跡や文献が、どこに残されているのか。


 そして、世界が三つに分けられたという記録について、何か手掛かりを得られる場所はないのか。


 考え始めると、自然と期待が膨らんでくる。


「……あそこなら、色々分かるかもしれないな」


 ユウトが小さく呟くと、シエルも頷いた。


「そうね」


「主!」


「なんだ?」


 隣から聞こえてきた元気な声に、ユウトが振り返る。


「お昼ご飯もあるっす!」


「お前は本当にそればっかりだな!」


 せっかく真面目に考えていたというのに、シアの関心はどうやら食べ物へ向いているらしい。


 しかし、当の本人はまったく気にした様子もなく、にっこりと笑っていた。


「主もさっき魔物食おうとしてたっす!」


「…………」


 言い返そうとしたユウトだったが、口を開いたところで言葉が止まった。


 確かに、少し前までトリニティラビットを食べようかと考えていたのは事実だ。


 もっとも、自分の場合はスキルを得るという目的があったのだが……。


「アニキ」


 そんなユウトの心情などお構いなしに、リトが声を掛けてきた。


「……なんだ」


「似た者同士だな」


「うるせぇ!」


 リトの笑い声に、シアも楽しそうに笑った。


 シエルはそんな三人を見て呆れたように首を振っていたが、その表情には僅かな笑みが浮かんでいた。


 ユウトはもう一度、遠くに見える街へ視線を向けた。


 高い外壁の向こうには、まだ知らない魔族大陸の暮らしが広がっている。


 そこでどのような出会いや発見が待っているのか、今は想像することしかできない。


「……よし、行こう!」


 ユウトが歩き出すと、仲間たちもその後へ続いた。


 魔族大陸で初めて訪れる大きな街。


 そこには、昨日の村では知ることのできなかった、新たな世界が待っていた。

第264話を読んでいただきありがとうございます!


大きな街を目指して村を出発したユウトたち。


その道中で遭遇したのは、人間界では見たことのない魔物――トリニティラビットでした。


未知の魔物なら、未知のスキルを持っているかもしれない。


暴食進化を持つユウトにとっては、新たな魔物との遭遇も立派な成長のチャンスです。


……今回は何もありませんでしたが。


そして、解析が終わる前に倒しておいて補佐機構に文句を言うユウト。


そんな寄り道を挟みながらも、ついに見えてきた大きな街。


村とは違い、そこではどんな景色が待っているのでしょうか。


次回、魔族大陸で初めての街へ!


次回もぜひお楽しみに!


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


それでは、また次回お会いしましょう!

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