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転生したら最強種だけどレベルが最弱でした。  作者: マッティー
第二章 広がる世界

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第二百四十九話 第二段階

空間の境界を安定して認識することに成功したユウト。


いよいよ次なる段階――境界への魔力接続に挑みます。


しかし、強すぎても弱すぎてもいけない繊細な魔力操作が必要となる今回の訓練。


力任せを得意とするユウトにとって、ある意味では戦闘以上に難しい挑戦になるかもしれません。


それでは、第249話をお楽しみください!

「では、始めましょう」


 ルミナの表情から、それまでの穏やかな笑みが消えた。


 床に描かれた巨大な魔法陣の中央で、ユウトも姿勢を正す。


「まずは先ほどと同じように、空間の境界を認識してください。そして安定して捉えられるようになったら、そこへごく僅かな魔力を伸ばします」


「……ごく僅か」


「はい」


「どれくらい?」


「ごく僅かです」


「だからどれくらい!?」


「感覚です」


「一番困るやつ!」


 思わず頭を抱えたユウトに、シエルが不思議そうな顔を向けた。


「そんなに難しい?」


「難しいよ! 料理の適量くらい分かんない!」


「主! あーしは全部いっぱい入れるっす!」


「お前は料理すんな」


「なんでっすか!?」


「死にたくないからだろう」


 ゴルダンが真顔で答える。


「失礼っす!」


「いや、ゴルダンが正しい」


「主まで!?」


 シアが頬を膨らませる横で、リトが笑いを堪えていた。


 そんな一行を見ていたルミナが、小さくため息を吐く。


「……そろそろ始めてもよろしいですか?」


「すみません」


 ユウトが頭を下げると、仲間たちも大人しく口を閉じた。


「ユウト」


「はい」


「先ほども言いましたが、今回は非常に危険です。決して焦らないこと。そして私が止めたら、すぐに魔力を切断してください」


「分かりました」


 その真剣な口調に、ユウトも素直に頷いた。


 空間の境界に触れただけで、存在そのものが消えてしまう可能性がある。つい先ほど聞かされた警告を、忘れたわけではなかった。


「補佐機構の補助もあるのでしょう?」


「……え?」


 突然の言葉に、ユウトの表情が固まった。


 ルミナは何でもないことのようにこちらを見つめている。


「…………」


「…………」


「……何のことでしょう?」


「隠すの下手ね」


「アニキ、今のは無理があるぞ」


「主、顔に出てるっす!」


 仲間たちから一斉に指摘され、ユウトは観念したように肩を落とした。


「……あります」


「やはり」


「なんで分かったんです?」


「あなたが時折、誰もいないところで百面相をしているからです」


「そんなに!?」


「ええ」


「恥ずかしい!」


 思わず両手で顔を覆うユウトの肩に、リトがそっと手を置いた。


「アニキ……今更だ」


「リト!」


 その様子にルミナは小さく笑ったが、すぐに話を戻した。


「その補助も利用してください。今は成功することより、安全に感覚を掴むことが重要です」


「……はい」


 ユウトは深く息を吐き、気持ちを切り替えた。


 そして魔法陣の中央で目を閉じ、補佐機構へ意識を向ける。


(補佐機構)


『はい』


(頼む)


『空間境界の認識補助を開始します』


 直後、周囲の音がゆっくりと遠ざかっていった。


 聖塔を満たす魔力も、仲間たちの気配も、少しずつ意識から切り離されていく。


 やがて訪れたのは、何も存在しない暗闇のような感覚だった。


(……よし)


 ユウトは意識を集中させ、空間の境界を探る。


 だが、先ほどまでとは違っていた。


(……あった)


 暗闇の中に、細い光が浮かび上がる。


 何かと何かを隔てる境目。


 以前は見つけるだけでも苦労したそれを、今度はすぐに捉えることができた。


『空間境界を確認』


『認識状態、安定』


(よし)


 ここからが本番だった。


 ユウトは自分の内側にある魔力へ意識を向ける。


(……ごく僅か)


 ほんの少しだけ魔力を取り出し、目の前の境界へ向かって伸ばしていく。


 焦らず、慎重に。


 ところが――。


『警告』


(え!?)


『魔力出力が過剰です』


(これで!?)


『出力を七十二パーセント低下させてください』


(細かっ!)


『集中してください』


(はい!)


 慌てて魔力を弱めようとするが、どれほど減らせばいいのか感覚が掴めない。


(七十二パーセントってどれくらい!?)


『…………』


(だから黙るな!)


 補佐機構へ意識を向けた途端、目の前の光が揺らいだ。


(あっ!)


 次の瞬間、境界が暗闇の中へ消えてしまう。


『空間境界を見失いました』


(…………)


『再試行を推奨します』


(分かってるよ……)


 ユウトは小さく息を吐き、集中を解いた。


 目を開けると、心配そうにこちらを見る仲間たちの姿があった。


「……ダメだった」


「でしょうね」


「即答!?」


 ルミナは特に驚いた様子もなく頷いた。


「最初から成功するとは思っていません」


「さっき俺の適性高いって言ってませんでした!?」


「適性と技術は別です」


「ぐうの音も出ない!」


 あまりにも正論で、ユウトは反論できなかった。


 その隣で、リトが吹き出す。


「アニキ、魔力操作下手なのか?」


「うるさい!」


「力任せに戦ってきた弊害ね」


「シエルまで!」


「主! ドーンなら得意っす!」


「それ今一番いらない能力!」


 ユウトが声を上げると、ルミナも楽しそうに笑った。


「もう一度やりますか?」


「もちろん!」


 答えるのに迷いはなかった。


 ユウトは再び目を閉じ、補佐機構の補助を受けながら空間の境界を探し始めた。


 しかし、魔力を繊細に操る作業は、思っていた以上に難しかった。


『魔力出力が過剰です』


(また!?)


 出力を抑えることに気を取られると、今度は境界の認識が揺らぎ始める。


『境界認識が不安定です』


(くそっ!)


 ようやく魔力を境界の近くまで伸ばせたと思っても、接続には至らない。


『魔力接続に失敗』


(……もう一回!)


 失敗するたびに集中を立て直し、ユウトは何度も挑戦を繰り返した。


 ◇


「……何回目っすか?」


「数えるのやめた」


 リトはとうとう床へ座り込み、魔法陣の中央を眺めていた。


 その先では、ユウトが目を閉じたまま集中を続けている。


「主、頑張るっすねぇ」


「こういうところだけは妙に諦めないのよね」


 シエルが小さく笑った。


 普段は面倒なことを嫌がるユウトだが、一度やると決めたことには意外なほど粘り強い。


 何度失敗しても、今のところ諦める様子はなかった。


「…………」


 ルミナは何も言わず、魔法陣の中央に立つユウトを見守っていた。


 その眼差しは穏やかながら、先ほどから一度も彼の動きを見逃していなかった。


 ◇


(……焦るな)


 暗闇の中で、ユウトは自分に言い聞かせた。


 空間の境界は、もう安定して見えている。


 問題は、そこへ伸ばす魔力だった。


(……強すぎてもダメ)


 力を込めるのではなく、できる限り細く、慎重に。


 一本の糸を伸ばすような感覚で、魔力を少しずつ境界へ近付けていく。


 すると――。


『魔力出力、正常範囲』


(…………!)


『境界認識、安定』


(……いける)


 ユウトは喜びを抑え、さらに集中した。


 目の前の細い光へ向かって、自らの魔力がゆっくりと伸びていく。


 あと少し……もう少しだけ。


『接触まで――』


 そして、魔力が空間の境界へ触れた。


(――っ!)


 その瞬間、世界が消えた。


 上下も左右も、前後さえも分からない。


 先ほどまで見えていた光は失われ、闇すら存在しなくなっていた。


 音もなければ、距離という感覚もない。


 ただ、何もないはずの空間が、どこまでも広がっているように感じられた。


(…………!?)


 ユウトは混乱した。


 自分がどこにいるのか、身体がどうなっているのかさえ分からない。


(なんだ……ここ……)


『警告』


『空間境界との接続を確認』


『直ちに切断してください』


(……え?)


『直ちに切断してください』


 補佐機構の声が繰り返される。


(わ、分かった!)


 ユウトは慌てて魔力を切断した。


 その瞬間――。


「――っはぁ!」


 周囲の感覚が一気に戻ってきた。


 足元には魔法陣があり、目の前には白い石壁と、こちらを見つめる仲間たちの姿がある。


「ユウト!」


「主!」


 シエルとシアが駆け寄ってきた。


「大丈夫っすか!?」


「…………」


 ユウトは荒く息を吐きながら、自分の両手を見つめた。


 身体はちゃんとここにある。


 そのことを確かめ、ようやく少しだけ安心できた。


「……今の」


「接続できましたか?」


 ルミナが静かに尋ねる。


 ユウトはゆっくりと頷いた。


「……はい」


「その先に、何か感じましたか?」


「何かっていうか……」


 ユウトは言葉を探した。


 あの感覚を、どう説明すればいいのか分からない。


「……何もなかった」


「…………」


「でも……何もないのに、どこまでも続いてるような……」


 自分でも矛盾したことを言っていると思う。


 しかし、あの場所で感じたものを言葉にするなら、それが一番近かった。


 ルミナは黙って耳を傾けていたが、やがて静かに頷いた。


「それで正しいのです」


「……え?」


「あれが――」


 彼女は足元の魔法陣へ視線を落とした。


「空間と空間の、狭間です」


「…………」


 ユウトも魔法陣を見下ろした。


 ほんの一瞬、触れただけだった。それでも、あの奇妙な感覚は鮮明に残っている。


 何も存在しないのに、果てさえ感じられない場所。あの先に、異なる空間へと繋がる道があるというのだろうか。


「……あそこを通って」


 ユウトが小さく呟く。


「別の場所へ行くのか?」


「正確には、狭間を経由し、異なる空間座標同士を繋ぐのです」


 ルミナはユウトへ視線を戻した。


「そして、それこそが――」


 その声に、ユウトも顔を上げる。


「空間転換(クロノシフト)です」


「…………!」


 ユウトは目を見開いた。


 古代の記録を調べ、遠く離れた聖国までやって来て、何度も失敗を繰り返した。


 その末に、ようやく辿り着いた。


 まだ魔法を使えるようになったわけではない。


 それでも、空間転換(クロノシフト)の入口に、確かに触れることができたのだった。

第249話を読んでいただきありがとうございます!


何度も失敗を繰り返しながら、ついに空間の境界への魔力接続に成功したユウト。


そしてその先で感じたのは、光も闇も、距離という概念すら存在しない――「空間の狭間」。


どうやら空間転換(クロノシフト)とは、この狭間を経由して異なる空間座標同士を繋ぐ魔法のようです。


しかし、境界へ接続できただけではまだ入口に立ったに過ぎません。


次なる課題は――狭間の中から「異なる空間」を見つけ出すこと。


果たしてユウトは、次の段階へ進むことができるのでしょうか。


次回もぜひお楽しみに!


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


それでは、また次回お会いしましょう!

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