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転生したら最強種だけどレベルが最弱でした。  作者: マッティー
第二章 広がる世界

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233/322

第二百三十三話 初めての空中戦

成体となり、本来の姿へと戻ったユウト。


圧倒的に向上した力と速さを武器に、ゴルダンとの戦いはついに空へ。


ユウト、初めての空中戦です!


それでは、第233話をお楽しみください!

 ドォンッ!!


 遥か上空で、二つの影が激突した。


『おおおおっ!』


「ぬぅっ!」


 ユウトの巨大な爪とゴルダンの拳が真正面からぶつかり合い、その衝撃が周囲の空気を震わせる。


 まるで空中で爆発が起きたかのような轟音が、山岳地帯へ響き渡った。


「ぐっ……!」


 互いの力が拮抗したのは、ほんの一瞬だった。


 しかし、押し負けたのはゴルダンの方だった。


「……っ!」


 衝撃に耐え切れず、ゴルダンの身体が後方へ弾かれる。


 それでもすぐに翼を大きく広げると、空気を受け止めながら後退する勢いを殺し、数十メートル先で体勢を立て直した。


『……いける!』


 ユウトは確かな手応えを感じていた。


 力負けしていないどころではない。真正面からぶつかり合うのであれば、むしろ自分の方が上回っている。


 竜化によって得られた力は、想像していた以上のものだった。


『このまま!』


 ユウトはその隙を逃さず、すぐさま追撃へ移った。


 巨大な翼を一度、強く羽ばたかせる。


 ドンッ!!


『うおっ!?』


 次の瞬間、周囲の景色が一気に後方へ流れた。


(……やっぱ速ぇ!)


 先ほど初めて空へ飛び上がった時と同じだった。


 僅かに翼へ力を込めるだけで、巨大な身体が信じられないほどの速度まで加速していく。


 ただし、今回はもう慌てない。


『ゴルダン!』


 ユウトは一直線に距離を詰めると、右腕を引き、巨大な爪を振り抜こうとした。


 しかし、ゴルダンは迫るユウトを前にしても、冷静さを失っていなかった。


「力任せに飛ぶだけか」


『なに!?』


 ゴルダンの翼が僅かに傾く。


 それだけで飛行する軌道が変わり、真正面にいたはずの身体が急激に上昇した。


『うおっ!』


 ユウトの振り抜いた爪が、何もない空間を切り裂く。


(……上!?)


 慌てて顔を上げた、その瞬間だった。


「遅い」


『っ!』


 真上へ移動していたゴルダンが空中で身体を反転させ、頭から急降下してきた。


 ユウトが回避しようと翼を動かすよりも早く、その拳が背中へ迫る。


 ドガッ!!


『ぐおっ!』


 強烈な一撃が黒鱗に叩き込まれ、ユウトの巨体が一気に高度を失った。


『くそっ!』


 視界の中で地面が急速に近付いてくる。


 ユウトは慌てて両翼を広げ、全身へ意識を集中させた。


『止まれっ!』


 バサァッ!!


 広げた翼が一気に空気を掴み、落下していた身体へ強烈な抵抗が掛かる。


 その衝撃に巨体が揺れたものの、どうにか速度を落とし、地面へ叩きつけられる寸前で停止することができた。


『危な……!』


 ユウトはすぐに顔を上げた。


 ゴルダンは遥か上空で静止したまま、こちらを見下ろしている。


「力も速度も、先ほどまでとは比較にならんな」


『そりゃどうも!』


「だが――」


 ゴルダンの翼が僅かに動いた。


「それだけだ」


『何だと?』


 次の瞬間、ゴルダンの姿が視界から消えた。


『――っ!?』


 ユウトは慌てて周囲を見回す。


(……どこだ!?)


「飛び方がまるで素人だ」


『後ろ!?』


 背後から聞こえた声に振り返るが、すでにそこには誰もいなかった。


『また!?』


 今度は左側から気配を感じる。


 しかし、ユウトが顔を向けた瞬間には下へ移動し、そちらを追えば右へ、さらに上へと位置を変えていく。


『ちょこまかと!』


 ゴルダンの姿は見えていた。


 動きそのものを捉えられないわけではないし、速度に関しても、もはや大きな差は感じられない。


 それなのに、まったく捕まえられないのだ。


「空で戦うとは、こういうことだ」


 ゴルダンの声だけが、次々と異なる方向から聞こえてくる。


『くっそ……!』


 ユウトは翼を強く打ち、一気に前へ飛び出した。


 しかし、ゴルダンは身体を僅かに傾けるだけで軌道を変え、横へと逃れてしまう。


『だったら!』


 ユウトも追い掛けるように身体を傾けた。


『うおっ!?』


 ところが、思ったようには曲がれなかった。


 巨大な身体が外側へ大きく膨らみ、ゴルダンのいた場所を通り過ぎてしまう。


「…………」


 ゴルダンはそんなユウトを冷静に見つめながら、すぐ横を通り抜けていった。


『今の顔ムカつく!』


「事実を見ていただけだ」


『絶対馬鹿にしてただろ!』


「戦闘中だぞ」


『お前に言われたくねぇ!』


 思わず言い返したユウトだったが、自分でも問題には気付いていた。


(……速さじゃない)


 ただ真っ直ぐ飛ぶだけなら、今の自分の方が速い可能性すらある。


 だが、急旋回や急上昇、急降下といった動きでは、ゴルダンの方が圧倒的に上手かった。


 空中で静止することも、速度を落とさずに進む方向だけを変えることも、まるで呼吸をするようにこなしている。


(……地上と全然違う!)


 地面があれば足を踏み込み、その反動を使って身体の向きを変えられる。


 しかし、空中には身体を支えるものがない。


 翼や尾の動き、身体の角度、そして周囲を流れる空気。それらすべてを上手く利用しなければ、思い通りに動くことはできないのだ。


「どうした?」


 ゴルダンはユウトの周囲を旋回しながら、余裕のある声を向けてくる。


「その程度では、この身体を捉えることなどできんぞ」


『言ってろ!』


 ユウトは再び追い掛けた。


 しかし、急いで方向を変えようとしたことで、またしても軌道が大きく膨らんでしまった。


 ◇


「……ユウト」


 地上では、シエルが上空を駆け回る二つの影を見上げていた。


 黒い巨体がゴルダンを追い、凄まじい速度で空を移動している。


 しかし、追い付きそうになるたびに、ゴルダンはするりと軌道を外し、ユウトの攻撃を回避していた。


「主、大丈夫っすかね?」


 シアが不安そうに空を見上げる。


「力では負けてないわ」


 シエルは落ち着いた声で答えた。


「確かにアニキの方が強そうだけどよ」


 リトも目を細めながら、上空の動きを追っていた。


「なんか……」


 少し言いにくそうに言葉を詰まらせる。


「遊ばれてないか?」


「…………」


 シエルは数秒ほど空を見つめたまま黙っていたが、やがて小さく息を吐いた。


「飛ぶのが絶望的に下手なのよ」


「言い方!」


 リトが思わず振り返る。


「事実でしょう?」


「もうちょっとこう……慣れてないとか!」


「同じ意味よ」


「全然違うだろ!」


 リトが抗議しても、シエルは表情一つ変えなかった。


 その隣ではシアも、上空を飛び回るユウトの姿をじっと見つめている。


「主、さっきから曲がる時めちゃくちゃ大回りしてるっす」


「ほら」


「追い打ちすんなよ!」


 リトは呆れたように頭を抱えた。


「お前らそれ、本人には絶対言うなよ?」


『聞こえてるぞぉぉぉぉ!!』


「!?」


 三人が一斉に空を見上げた。


「聞こえてんのかよ!?」


『全部聞こえてるわ!』


「そんな上から!?」


「竜になって耳も良くなってるんじゃないっすか?」


「知らないわよ」


『シエル! 絶望的に下手って何だよ!』


「そのままの意味よ!」


『後で覚えてろよぉぉぉ!』


「後でいいから前見なさい!」


『え?』


 その瞬間だった。


「隙だらけだ」


 すぐ横から、ゴルダンの声が聞こえた。


『うおっ!?』


 ユウトが慌てて振り向いた時には、すでに遅かった。


 ドガァンッ!!


 強烈な蹴りが、ユウトの顔面へまともにめり込んだ。


『ぐあああっ!』


 衝撃で黒い巨体が空中を大きく回転する。


「主ぃぃぃ!?」


「アニキぃぃぃ!」


「……馬鹿ね」


 シエルが深いため息を吐いた。


 ◇


『くっそぉ……!』


 ユウトは翼を大きく広げ、どうにか空中で回転を止めた。


『いってぇ……』


 頭を振りながら、痛みとともに乱れた意識を立て直す。


 今の攻撃は完全に自業自得だった。


(……シエルの言う通りだ)


 悔しいが、認めるしかない。


 今の自分には力も速度もある。身体能力だけなら、ゴルダンに負けているとは思わなかった。


 だが、その力を十分に扱えていない。


 成体へ進化してから初めて竜化し、そのまま初飛行を経験して、今は空中戦まで繰り広げている。


 慣れていない身体を上手く動かせないのは、考えてみれば当然のことだった。


(……だったら)


 ユウトは少し離れた場所にいるゴルダンへ視線を向けた。


(覚えりゃいい)


 できないのであれば、できるようになればいい。


 幸いなことに、目の前には空を自由自在に飛び回る相手がいる。


 ゴルダンが翼を動かす角度や、身体の傾け方。旋回する時、上昇する時、そして下降する時にどのような動きをしているのか。


 先ほどからずっと見ていたのだ。


(……真似すればいいんだ)


 ユウトはゴルダンの一挙手一投足へ、改めて意識を集中させた。


「どうした?」


 少し離れた場所で空中に静止しているゴルダンが、こちらを見据える。


「もう終わりか?」


『まさか』


「竜の力とは、その程度か?」


『…………』


 ユウトは何も答えず、大きく翼を広げた。


『言っただろ』


「何?」


『初めてなんだよ』


 ゆっくりと翼を動かす。


『飛ぶのも』


 今度は身体を僅かに傾け、空気の流れを確かめた。


『この身体で戦うのも』


 先ほどまで見てきたゴルダンの動きを、頭の中で思い返す。


『全部初めてだ』


「それがどうした」


『だから――』


 ユウトの口元が僅かに上がった。


『今覚えりゃいい!』


「……何?」


 ゴルダンの眉が動いた次の瞬間、ユウトは身体を下へ向けた。


「何をする気だ?」


『うおおおおおっ!』


 巨大な翼の角度を変え、一気に急降下する。


 黒い巨体が、凄まじい速度で地面へ迫っていった。


 いや、ただ落下しているのではない。ユウト自身が意識して加速しているのだ。


「主!?」


「ユウト!?」


 地上から仲間たちの声が上がる。


『まだだ……!』


 ユウトは翼を少しずつ身体へ寄せていった。


 翼が受ける空気の抵抗が減るにつれ、落下する速度はさらに増していく。


(……もっと!)


 周囲の景色が凄まじい勢いで流れ、風が全身の鱗を激しく叩いた。


 眼下の山肌が、見る間に大きくなっていく。


「アニキ止まれぇぇぇ!」


『まだ!』


 本能的に翼を広げたくなる。


 このままでは地面へ激突してしまう。身体の奥から、そんな危険を知らせる感覚が何度も湧き上がってきた。


 だが、ユウトはまだ翼を広げなかった。


(……ゴルダンはもっとギリギリで変えてた!)


 地面まで残り数十メートル。


 二十。


 十。


「ユウト!」


『ここっ!』


 その瞬間、ユウトは翼を一気に広げた。


 バァンッ!!


『ぐっ――!?』


 広げた翼が大量の空気を受け止め、身体へ凄まじい負荷が掛かる。


 急降下していた巨体が、強引に前方へ引っ張られた。


『うおおおおっ!』


 ユウトは首を起こし、身体を大きく反らす。


 さらに尾を振って姿勢を整えながら、翼の角度を調整していく。


 そして――。


「……!」


 地上から見上げていたシエルの目が、僅かに見開かれた。


 地面すれすれで、ユウトの巨体が水平飛行へ切り替わったのだ。


 先ほどまで大きく膨らむことしかできなかった軌道が、鋭く、直角に近い角度で変化していた。


『……できた!』


「今喜ぶんすか!?」


『喜ぶだろ!』


 ユウトは地表を滑るように飛び続けた。


 周囲の岩や僅かに生える木々が、凄まじい速度で後方へ流れていく。


(……分かった)


 ただ翼で無理やり方向を変えようとしても、思い通りには曲がれない。


 速度や身体の角度、尾の動き、そして翼が受ける空気の流れ。


 そのすべてを使って、初めて自由に飛べるのだ。


(……全部使う!)


『こういうことか!』


 ユウトは翼を傾け、身体を斜めへ倒した。


 さらに右の翼を僅かに持ち上げると、巨体が滑るように進む方向を変えていく。


『おおっ!』


 先ほどまでのぎこちない動きとは、明らかに違っていた。


「…………」


 上空でその様子を見ていたゴルダンの表情が変わる。


『……次!』


 ユウトは地表すれすれを飛んだまま、今度は翼を強く打った。


 ドンッ!!


 黒い巨体が一気に斜め上へ加速し、ゴルダン目掛けて急上昇していく。


「――速い!」


 ゴルダンは咄嗟に反応し、横へ逃れた。


(……見える!)


 ユウトもすぐに翼の角度を変える。


 先ほどまでなら、そのまま直進して相手のいた場所を通り過ぎていただろう。


 しかし、今度は違った。


 逃げたゴルダンの動きに合わせて、ユウトの飛行する軌道も滑らかに変化していく。


「なっ――!?」


『捕まえた!』


 一気に距離が縮まった。


 ゴルダンが咄嗟に両腕を交差させる。


『もらったぁ!』


 ドガァァァンッ!!


「ぐぅっ!」


 巨大な爪が防御の上から叩き込まれ、その衝撃でゴルダンの身体が大きく吹き飛ばされた。


『まだ!』


 しかし、ユウトはそこで止まらなかった。


 すぐに翼を動かして追撃へ移る。


 ゴルダンが右へ逃れれば、ユウトも右へ。下へ向かえば、その動きに合わせて高度を下げていく。


 先ほどまでのように、相手の動きを追うたびに大きく軌道が膨らむことはなかった。


「貴様……!」


『おお!』


「何だ!?」


『ちょっと分かってきた!』


「戦いの最中に……!」


 ゴルダンの表情が明らかに歪んだ。


 先ほどまで、空中戦の技術には圧倒的な差があった。


 しかし、ほんの数度動きを見て、実際に何度か飛んだだけで、ユウトの飛行技術が目に見えて変わり始めている。


 それも、今まさに戦っている最中に。


「…………」


 地上から見上げるシエルの目も、僅かに細くなった。


「主、急に飛べるようになってないっすか?」


「さっきまで曲がるだけで精一杯だったよな?」


 シアとリトが驚いたように顔を見合わせる。


 シエルは上空のユウトを見つめたまま、小さく息を吐いた。


「覚えるのが早いのよ」


「それで済ませていいのか?」


「本人に言ったら調子に乗るから黙ってて」


「聞こえるんじゃないっすか?」


「…………」


 三人が同時に空を見上げた。


『聞こえてるぞ!』


「やっぱり!」


『シエル! 今俺のこと褒めただろ!』


「褒めてない!」


『いや今の絶対褒めてた!』


「前を見なさい!」


『今度はちゃんと見てるよ!』


 ユウトがそう言い返した直後、ゴルダンの拳が迫った。


 しかし、今度は慌てることなく翼を僅かに傾け、巨体を横へ滑らせる。


 拳が黒鱗のすぐ前を通過した。


「っ!?」


 その動きは、先ほどまでゴルダンが見せていた回避方法に近かった。


『ほらな!』


 ユウトは笑みを浮かべながら右の爪を引いた。


『悪いな』


「…………!」


『俺――』


 ゴルダンが距離を取ろうと、強く翼を打つ。


 しかし、ユウトもほぼ同時に加速していた。


『覚えるの、結構早いみたいだ!』


 再び二つの影が、凄まじい速度で空を駆け抜ける。


 しかし、先ほどまでのような一方的な追い掛け合いではなかった。


 逃げるゴルダンと、それを追うユウト。


 両者の距離は、もはやほとんど開かなくなっていた。

第233話を読んでいただきありがとうございます!


ついに始まったユウト初の空中戦!


力も速さもゴルダンを上回り始めたものの――。


飛ぶのが絶望的に下手でした(笑)


しかし、戦いの中で少しずつ感覚を掴み、あっという間にゴルダンの動きへ対応し始めるユウト。


竜化によって手にした力を、徐々に自分のものへと変え始めています。


果たしてゴルダンは、この成長にどう対抗するのか。


空中戦はまだまだ続きます!


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


それでは、また次回お会いしましょう!

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