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転生したら最強種だけどレベルが最弱でした。  作者: マッティー
第二章 広がる世界

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224/323

第二百二十四話 共に歩む者たちへ

新たに得た【竜王の恩寵】。


その力を、ユウトは共に歩んできた仲間たちへ――。


それでは、第224話をお楽しみください!

「なぁ、みんな」


 ユウトが声を掛けると、シエル、シア、リトの三人が揃って振り返った。


 成体へ進化したことで得られた新たな固有権能。その内容を補佐機構から聞いたユウトは、まず仲間たちへ説明しておこうと考えたのだ。


「さっき、新しい権能を手に入れたんだけどさ」


「……権能?」


 リトが興味深そうに眉を上げる。


「ああ。【竜王の恩寵】っていうらしい」


「また随分と大層な名前ね」


 シエルが僅かに目を細めた。


「俺もそう思う」


 ユウトは苦笑すると、補佐機構から聞いた内容を順番に説明し始めた。


 この権能は、自分と強い繋がりを持つ相手に与えられるものであり、一方的に付与することはできないらしい。


 互いに相手を認め合うことで初めて成立するという、少し特殊な条件が存在している。


 そして、何より重要なのが、その効果だった。


「恩寵を受けた相手は……その人自身が持ってる成長の限界を超えられる、らしい」


「……成長の限界?」


 シエルが聞き返す。


「ああ。俺みたいに急にレベルが上がるって話じゃないみたいだけどな」


 そこまで説明すると、三人はしばらく黙り込んだ。


 成長の限界を超える。


 言葉にすれば簡単だが、それがどれほど大きな意味を持つのか、すぐには理解できなかったのだろう。


 そんな中、真っ先に反応したのはシアだった。


「つまり、もっと強くなれるってことっすか?」


「……たぶんな」


「たぶんなんすか!?」


「俺だって今手に入れたばっかなんだよ!」


「それもそうっすね!」


「納得早いな、おい!」


 あまりにもあっさりとした反応に、ユウトは思わず笑ってしまった。


 実際、詳しいことはまだ自分にも分かっていない。


 ただ、この権能が自分自身を直接強くするためのものではないということだけは理解していた。


「……ただ、一つ問題があるんだよな」


 ユウトは改めて三人を見渡した。


「この力、俺が勝手に使えるものじゃないらしい」


「どういうこと?」


「相互承認が必要なんだと」


「……相互承認?」


 シエルが不思議そうに首を傾げる。


 ユウトは少しだけ考え、できる限り分かりやすい言葉を選んだ。


「たぶん、俺が一方的に『こいつは仲間だ』って思ってるだけじゃ駄目なんだ。俺が相手を認めて、相手も俺を認める。その両方が揃って、初めて恩寵を与えられる……みたいだな」


 そう説明しながら、三人の顔を順番に見つめる。


 これまで何度も共に戦ってきた仲間たちだ。自分としては、もちろん全員を信頼している。


 だが、相手からどう思われているかとなれば、話は少し違ってくる。


 すると、ユウトがそれ以上考えるよりも早く、シエルが口を開いた。


「それなら問題ないわ」


「……え?」


 あまりにも迷いのない返答だった。


 シエルはユウトを真っ直ぐに見つめ、穏やかな表情で続ける。


「里から私を連れ出してくれた時点で、私はあなたを認めているもの」


「…………」


 予想外にまっすぐな言葉を向けられ、今度はユウトの方が言葉に詰まった。


 普段なら軽口を返すところだが、どうにも上手い言葉が見つからない。


「……そ、そっか」


 照れくさそうに頬を掻くユウトを見て、シエルが小さく微笑んだ。


 すると、今度はシアが勢いよく手を挙げる。


「あーしもっす!」


「……シア?」


「主と一緒なら、もっともっと強くなりたいっす!」


 シアは満面の笑みで答えた。


 その様子に、ユウトも自然と表情を緩める。


「……シアは聞くまでもなかった気がするな」


「どういう意味っすか!?」


「いや、なんでもない」


 納得がいかない様子のシアを横目に、ユウトは最後の一人へ視線を向けた。


 すると、シエルとシアも自然と同じ方向を見る。


「…………」


 リトが露骨に嫌そうな顔をした。


「……なんで俺を見るんだよ」


「いや、一応?」


「今さらだろ」


 リトは呆れたように肩をすくめると、いつもの豪快な笑みを浮かべた。


「アニキについて行くって決めた時点で、とっくに認めてるよ」


「…………そっか」


 ユウトは小さく笑った。


 何ということはない、いつも通りのやり取りだったはずだ。


 それなのに、三人の言葉が思っていた以上に胸へ響いていた。


 相互承認。


 補佐機構が告げたその条件は、単に自分が仲間だと思っているだけでは満たされない。


 相手もまた、自分を認めてくれている必要があるのだ。


 そして今、三人は何の迷いもなく、その気持ちを言葉にしてくれた。


(……ありがたいな)


 ユウトは胸の奥に広がる温かな感情を噛み締めながら、静かに頷いた。


「……なら、迷う必要はないな」


 改めて補佐機構へ意識を向ける。


「補佐機構」


《はい、マスター》


「シエル、シア、リトに【竜王の恩寵】を付与する」


《対象個体を確認》


《相互承認を確認します》


 その表示が現れた直後だった。


「……え?」


 シアが不思議そうに足元へ視線を落とした。


 地面に淡い光が浮かび上がり、ゆっくりと広がり始めていたのだ。


「これは……」


 シエルも静かに目を細める。


 三人の足元には、それぞれ複雑な紋様が描かれ始めていた。


 細い光の線が幾重にも重なり、円を描くように広がっていく。


 その輝きは決して強いものではなく、三人を優しく包み込むような、穏やかな光だった。


「…………」


 ユウトもまた、胸の奥に不思議な感覚を覚えていた。


 何かが触れたような、ほんの僅かな感触。


 それは魔力とも気配とも違う、今まで経験したことのないものだった。


 シエル、シア、リト。


 三人の存在が、ほんの少しだけ近くなったように感じられる。


(……何だ、これ)


 上手く言葉にはできない。


 だが、確かに何かが繋がった。


 そんな感覚だけが、胸の奥に残っていた。


《相互承認を確認》


《対象:アルシエル》


《対象:ヴァルシア》


《対象:ヴァルフリート》


《三名への【竜王の恩寵】付与を開始します》


 補佐機構の通知とともに、三人の足元に浮かんだ紋様が一際強く輝いた。


 しかし、眩しさや圧迫感はない。


 進化した時のように膨大な魔力が噴き出すわけでもなく、身体に激しい変化が起きる様子もなかった。


 むしろ、その光はどこまでも穏やかだった。


「……あったかい」


 シアがぽつりと呟く。


 その言葉通り、三人を包む光には、どこか安心するような温かさがあった。


 やがて、足元の紋様がゆっくりと薄れ始める。


《付与完了》


 最後の通知が表示されると同時に、地面を覆っていた光が完全に消えた。


「…………」


 三人はしばらく黙ったまま、それぞれ自分の身体を確認していた。


 シエルは手のひらを見つめながら、魔力の流れを確かめている。


 リトも軽く拳を握り、何か変化がないかを探っているようだった。


 そしてシアは――。


「……ふんっ!」


 突然、その場で勢いよく飛び跳ねた。


「……なんで跳んだ?」


 ユウトが思わず尋ねる。


「なんか変わってないか確認したっす!」


「……それで分かるのかよ」


 ユウトが呆れている間にも、シアはもう一度膝を曲げる。


 ぴょんっ。


 先ほどと同じように飛び跳ねると、着地した場所で腕を組み、難しそうな顔をした。


「…………」


「……どうだ?」


 ユウトが恐る恐る尋ねる。


 すると、シアは勢いよく顔を上げた。


「何も変わらないっす!」


「……だよな」


 ユウトも思わず頷いた。


 シエルもリトも、見たところ特別な変化は感じられないようだった。


 確かに付与が完了したという通知はあったものの、身体能力が急激に上がったわけでも、魔力が増大したわけでもない。


(……本当に成功してるんだよな?)


 少し不安になったユウトは、再び補佐機構へ問い掛けた。


「補佐機構。本当に成功してるのか?」


《肯定》


《【竜王の恩寵】は対象の能力を直接強化する権能ではありません》


「……直接じゃない?」


《対象が経験、鍛錬、戦闘等によって得る成長に対し、個体として設定された限界を超えることを可能とします》


「……なるほど」


 その説明を聞いて、ユウトはようやく納得した。


 恩寵を受けた瞬間に、力が倍になるような能力ではないのだ。


 強くなるためには、これまでと同じように鍛錬を積み、戦い、経験を重ねる必要がある。


 ただし、本来ならどこかで頭打ちになるはずだった成長を、さらに先へ進められるようになる。


 才能や種族、生まれ持った力によって定められていた限界を、その先へ押し広げるための権能なのだろう。


「……結局、強くなりたきゃ自分で強くなるしかないってことか」


 ユウトが苦笑すると、シエルが静かに頷いた。


「ええ。その方がいいわ」


「……そうか?」


「急に強くなったところで、自分で扱えなければ意味がないもの」


「……確かにな」


 ユウトは納得したように頷いた。


 つい先ほどまでの自分が、まさにそうだった。


 膨大な魔力を持っていても、扱えなければ意味がない。シエルとの訓練を通じて、そのことは十分に理解している。


 リトも満足そうに口元を緩めた。


「分かりやすくていいじゃねぇか。今まで通り鍛えりゃいいんだろ?」


「ああ」


「じゃあ何も変わらねぇな」


 リトはそう言って笑うと、腰に下げた剣へ軽く手を添えた。


 これまで積み重ねてきた努力が無駄になるわけではない。それどころか、その努力によってさらに高みを目指せるというのなら、これほど嬉しいこともないのだろう。


「そうっすね!」


 シアも大きく頷いた。


「いっぱい戦って、いっぱい強くなるっす!」


「シアはもう少し慎重に戦え」


「えぇ!?」


 ユウトが即座にツッコミを入れると、シアは不満そうに頬を膨らませた。


 そんな様子を見て、シエルがくすりと笑う。


 リトも豪快に笑い始め、訓練場にはいつもの賑やかな空気が戻ってきた。


 ◇


 ユウトは三人の姿を見つめながら、小さく笑った。


 恩寵を与えたからといって、今すぐ目に見える変化が起きたわけではない。


 力が急激に増したわけでもなければ、何か新しい能力を手に入れた様子もなかった。


 だが、ユウトには確かな手応えがあった。


(……これからは、俺だけじゃないんだな)


 これまで、自分だけがレベルを上げ、進化によって力を得てきた。


 仲間たちもそれぞれの方法で成長していたが、いつか自分だけが先へ進んでしまうのではないかという不安が、心のどこかにあった。


 しかし、今回手に入れた権能は違う。


 シエルも、シアも、リトも。


 それぞれが努力を重ねることで、これまでの限界を超えて、さらに先を目指せるようになったのだ。


 もちろん、その道のりが簡単なものになるわけではない。


 これからも鍛錬を続け、危険な戦いを乗り越えていく必要があるだろう。


 それでも、自分一人ではなく、仲間たちと共に成長していけるということが、ユウトには何より嬉しかった。


「……いい力だな」


 思わず、そんな言葉が漏れた。


「……何が?」


 シエルが不思議そうに首を傾げる。


 ユウトは三人を順番に見つめると、少しだけ笑った。


「いや、なんでもない」


 今はまだ、何も変わらないのかもしれない。


 だが、これまで共に歩んできた仲間たちとの間には、確かに新たな繋がりが生まれていた。


 いつか、今日結ばれたこの小さな繋がりが、自分たちをまだ見たこともない場所へ連れていく。


 そんな気がした。

第224話を読んでいただきありがとうございます!


シエル、シア、リトへと付与された【竜王の恩寵】。


とはいえ、付与されたからといって突然強くなるわけではありません。


これまでの経験や鍛錬を積み重ね、その先にある「個の限界」を超えるための力。


ユウトだけでなく、仲間たちがどのような成長を遂げていくのかも、今後ぜひ楽しみにしていただければと思います!


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


それでは、また次回お会いしましょう!

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