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転生したら最強種だけどレベルが最弱でした。  作者: マッティー
第二章 広がる世界

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第二百二十三話 竜王の恩寵

成体へと進化したユウト。


新たに得た力の中には、これまでとは少し違うものも含まれていました。


それでは、第223話をお楽しみください!

「……竜王の、恩寵?」


 ユウトは目の前に浮かぶ文字を、しばらく黙って見つめていた。


 成体へ進化したことで、補佐機構から告げられた新たな能力。完全人化、竜化、魔力制御の三つについては、名前を見るだけでも大体の想像がつく。


 完全人化は、その名の通り今まで不完全だった人の姿を完成させる能力だろう。竜化についても、おそらく人の姿から本来の竜へ戻るためのものだ。


 そして魔力制御。成体となったことで解放された膨大な魔力を、自在に操るための能力だと考えられる。


 いずれも詳しい仕組みまでは分からないものの、実際に身体に起きた変化と照らし合わせれば、ある程度は納得できるものだった。


 だが、最後に表示された能力だけは違っていた。


「……これだけ分からないな」


 ユウトの視線が、ある一つの文字列で止まる。


【竜王の恩寵】


 固有権能という聞き慣れない分類に加え、恩寵という言葉からは、具体的に何ができるのか想像がつかなかった。


(……こういう時は聞くのが一番か)


 ユウトは視界に浮かぶ文字へ意識を向け、補佐機構に問い掛けた。


「補佐機構。竜王の恩寵って何だ?」


《はい、マスター》


《固有権能【竜王の恩寵】》


《使用者と強い繋がりを持ち、互いに認めた対象へ恩寵を付与することが可能です》


「……恩寵を付与?」


 ユウトは思わず首を傾げた。


 何となく言っていることは分かるものの、肝心の恩寵を与えることで何が起こるのかが分からない。


 すると、そんな疑問を察したかのように、補佐機構が説明を続けた。


《恩寵を受けた対象は、使用者との繋がりを介し、個として定められた成長限界を超えることが可能となります》


「……成長限界を、超える?」


 その言葉を聞いた瞬間、ユウトの表情が変わった。


 もう一度、表示された説明を読み返してみる。


 個として定められた成長限界を超えられるというのは、どういうことなのだろう。


(……ちょっと待てよ)


 ユウトはゆっくりと視線を横へ向けた。


 そこには、シエル、シア、リトの三人がいる。


 これまで何度も共に戦い、危険な場面を乗り越えてきた、大切な仲間たちだった。


 ユウトは改めて、この世界での成長について考えてみる。


 敵を倒して経験値を得ることでレベルが上がり、それに応じて強くなっていく。


 少なくとも、これまでユウトが見てきた中で、そのような仕組みを持っているのは自分だけだった。


 この世界の人間や魔物には、そもそもレベルという概念が存在しない。


 もちろん、鍛錬や経験を積むことで強くなることはできる。しかし、ユウトのように敵を倒すことで経験値を獲得し、急激に力を伸ばしていくことはできないのだ。


 だからこそ、これまで心のどこかで気になっていたことがある。


(……俺だけが強くなり続けたら、どうなるんだろうな)


 今はこうして肩を並べて戦っている。


 だが、自分だけがレベルを上げ、進化を繰り返していけば、いつか仲間たちとの間に大きな差が生まれるかもしれない。


 そうなった時、今と同じように一緒に戦い続けることができるのだろうか。


 ふと、地下遺跡で出会った黒翼の男の姿が脳裏を過った。


 リトの本気の一撃を、指二本で受け止めた男。


 あれほどの強さを前にしては、自分だけが強くなれば何とかなるなどとは、とても思えなかった。


 これから先、あの男と同じような強敵が現れる可能性だってある。


 その時、自分一人の力だけで仲間を守り切れるとは限らないのだ。


「……もしかして」


 ユウトはもう一度、三人へ視線を向けた。


 強い繋がりを持つ相手に与えられる恩寵。


 そして、個として定められた成長限界を超えるという効果。


 もし、その説明が自分の考えている通りの意味なら。


(……この力があれば)


 自分だけではなく、仲間たちも今まで以上に強くなることができるのではないか。


(俺と一緒に……もっと先まで行けるのか?)


 その可能性に気付いた瞬間、ユウトの胸の奥に小さな熱が灯った。


「……ユウト?」


 不意に、シエルが不思議そうに首を傾げた。


「さっきからどうしたの? 急に黙り込んだと思ったら、今度は嬉しそうな顔をして」


「ああ、いや……ちょっと待ってくれ」


「……?」


 シエルは怪訝そうな表情を浮かべたが、ユウトは再び補佐機構へ意識を向けた。


 まだ確認しておきたいことがあったのだ。


「なあ、補佐機構。恩寵って、誰にでも与えられるのか?」


《否定》


「……やっぱりか」


《対象との強い繋がり、および相互承認が必要です》


《使用者側からの一方的な付与はできません》


「……相互承認、ね」


 ユウトはその言葉を反芻した。


 どうやら、この権能は誰にでも好き勝手に与えられるものではないらしい。


 ただ出会っただけの相手や、表面的に仲間になっただけの相手では、条件を満たすとは限らない。


 必要なのは、互いを認め合えるほどの強い繋がり。


 しかも、自分が一方的に与えようとしても駄目なのだという。


(……なるほどな)


 それを知って、ユウトはむしろ安心していた。


 もし誰にでも無条件で与えられるような力だったなら、それはそれでとんでもないことになるだろう。


 だが、共に戦い、共に旅をし、互いを認めた相手にだけ与えられるのであれば、話は違う。


 強い繋がりが必要だからこそ、この力には特別な意味があるように思えた。


「……あとで試してみるか」


「……何を?」


 独り言を聞き逃さなかったシエルが、すぐさま問い掛けてくる。


「いや、こっちの話」


「…………」


 シエルが僅かに眉をひそめた。


 明らかに怪しまれている。


 だが、ユウト自身もまだ能力のすべてを理解しているわけではない。今ここで説明しても、余計に話がややこしくなる気がした。


(……まあ、ちゃんと分かってから話せばいいか)


 ユウトは小さく頷くと、話題を切り替えるように手を叩いた。


「そうだ。せっかくだし、今の状態も確認しておくか」


《個体情報を表示します》


 補佐機構の返答とともに、ユウトの視界へ見慣れた半透明の表示が浮かび上がった。


 そこには、進化後の個体情報が並んでいる。


 最初に目へ飛び込んできたのは、種族の欄だった。


《種族 終焉竜・成体》


「……本当に成体になったんだな」


 改めてその文字を見ると、ようやく実感が湧いてきた。


 幼体としてこの世界に転生し、初めて進化した時には幼生体となった。


 そして今日、ようやく成体へ到達したのだ。


 ここまでの道のりが長かったようにも感じるし、振り返ってみればあっという間だったような気もする。


 何とも不思議な感覚だった。


「……さてさて」


 ユウトは少し楽しみになりながら、表示の下へ視線を移していく。


 進化によって新たに増えた能力や、以前よりも強くなった身体。


 実際に魔法まで使えるようになったのだから、変化があることは間違いない。


 しかし、その途中で視線がぴたりと止まった。


《Lv:1》


「…………」


 ユウトはしばらく、その表示を見つめていた。


 何度読み返しても、そこにある数字は変わらない。


「…………はぁ」


 深いため息が漏れた。


 分かっていた。


 もちろん、分かっていたのだ。


 幼体から幼生体へ進化した時も、レベルは一へ戻っていた。


 進化するたびにレベルが初期化されることは、ちゃんと覚えている。


 覚えているのだが。


「やっぱり1かよ!!」


 ユウトの叫び声が、訓練場に響き渡った。


「いきなり何よ!?」


 すぐ隣にいたシエルが、驚いて肩を震わせる。


「いや……何でもない」


「絶対何でもなくないでしょ」


「……気にしないでくれ」


 ユウトはがっくりと肩を落とした。


 せっかく、かなりレベルも上がっていたというのに、また一からやり直しである。


 理屈では理解していても、こうして実際に数字を見せられると、何とも言えない気持ちになってしまう。


「……俺のレベル、進化するたびに人生やり直してないか?」


 思わずそんなぼやきが漏れた。


 しかし、不思議と以前ほどの不安はなかった。


 ユウトはゆっくりと自分の右手を握り締め、その感覚を確かめる。


 確かにレベルは一へ戻っている。


 だが、身体から溢れてくる力は、幼生体だった頃とは比べものにならなかった。


 以前の進化でもそうだったように、これまで積み重ねてきた力がすべて失われたわけではない。


 むしろ、身体の基礎そのものが大きく変わっている。


 そして何より、魔力の扱いがまるで違っていた。


 これまでは身体の奥にある力を感じ取るだけでも苦労していたのに、今は意識を向けるだけで、その流れをはっきりと捉えることができる。


 どこへ流すのか、どれだけ集めるのか。


 そんなことを一つずつ考えなくても、魔力が自然と思い通りに動いてくれるのだ。


「……これが、魔力制御か」


 ユウトは感心したように呟いた。


 もちろん、進化によって得たものはそれだけではない。


 完全な人化によって角と尻尾が消え、今では人間と見分けのつかない姿になっている。


 さらに、竜化という能力も獲得した。


 まだ実際に試してはいないものの、必要に応じて人と竜の姿を使い分けられるようになったのかもしれない。


 それだけでも、以前とは大きな違いだった。


 だが、ユウトにとって最も気になっているのは、やはり最後に告げられた権能だった。


「…………」


 ユウトは再び、仲間たちへ視線を向ける。


 シエル、シア、リト。


 これまで共に旅をし、笑い合い、時には命の危険に晒されながらも、一緒に戦い抜いてきた仲間たちだ。


(……俺だけじゃないんだな)


 思えば、これまで手に入れてきた力のほとんどは、自分自身を強くするためのものだった。


 レベルを上げることも、進化することも、そして暴食によって新たな能力を獲得することも。


 いずれも、ユウト自身の成長へ繋がる力だった。


 だが、今回手に入れた権能は違う。


 自分と強い繋がりを持ち、互いに認め合った相手へ恩寵を与えることで、その者が持つ成長の限界を超えられるようになるという。


 それが本当なら、自分だけではなく、仲間たちにもさらなる可能性が生まれることになる。


 ユウトはもう一度、補佐機構の表示へ目を向けた。


【竜王の恩寵】


「……これ」


 改めて、その意味を考える。


「かなりすごい力なんじゃないか?」


 ただ、自分一人が強くなるための力ではない。


 共に歩く仲間と、今まで以上に遠くまで進むための力。


 終焉竜が成体へ至ったことで手に入れた、新たな固有権能。


 それはユウト自身の未来だけではなく、これまで共に歩んできた仲間たちの未来さえ、大きく変える可能性を秘めていた。

第223話を読んでいただきありがとうございます!


成体への進化によって獲得した、新たな固有権能【竜王の恩寵】。


それはユウト自身ではなく、共に歩む者たちにも新たな可能性を与える力でした。


ユウトだけでなく、仲間たちがこの先どのような成長を遂げていくのか。


ぜひ今後の展開も楽しみにしていただければと思います!


そして進化恒例のレベル1……。


分かっていても、やっぱりちょっと凹むユウトでした(笑)


「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


それでは、また次回お会いしましょう!

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