第二百七話 暴走
いつもお読みいただきありがとうございます!
静かに広がっていた異変は、ついに誰の目にも明らかなものとなってきました。
それでは、第207話をお楽しみください!
翌日――。
ユウトたちは再び王城へ招かれていた。
「陛下がお会いしたいとのことです」
近衛騎士に案内され、一行は執務室へ向かう。
「今日は皆さんもご一緒にどうぞ」
扉が開く。
「よく来てくれた」
皇帝は昨日と変わらぬ穏やかな笑みを浮かべていた。
ユウトは内心ほっと息をつく。
(昨日のことは……気のせいだったのか?)
そう思った、その瞬間だった。
◇
ビキッ――。
皇帝の周囲の空気が歪む。
「……陛下?」
皇帝がゆっくりと顔を上げる。
瞳は黒く染まり始めていた。
◇
《警告》
《未知魔力反応急上昇》
《危険度――測定不能》
《対象の精神汚染が急速に進行しています》
◇
黒い霧が一気に噴き出す。
「ガァァァァァッ!!」
皇帝が咆哮した。
凄まじい魔力が執務室を揺らす。
「陛下!」
近衛騎士たちが皇帝のもとへ向かおうとする。
「やめろ!!」
ユウトの叫びが響く。
「近づくな!」
「しかし!」
「今の陛下は陛下じゃない!!」
一瞬、場が止まる。
しかし皇帝は止まらない。
黒い霧を纏った拳が壁を砕く。
王城が揺れた。
その時だった。
シエルが静かに前へ出る。
「私に任せて」
誰よりも穏やかな声。
白銀の魔法陣が足元へ広がる。
柔らかな光が執務室を包み込んだ。
シエルは皇帝を真っ直ぐ見つめる。
「少しだけ、眠っていて」
優しい声と共に光が降り注ぐ。
暴れていた黒い霧が苦しむように揺らぐ。
皇帝の身体から力が抜けていく。
そのまま静かに床へ倒れ込んだ。
◇
《対象の精神活動低下を確認》
《生命活動正常》
《深い睡眠状態へ移行しました》
《脅威レベル低下》
補佐機構が淡々と告げる。
◇
執務室に静寂が戻る。
近衛騎士たちは剣を下ろすことも忘れ、呆然としていた。
一人の宮廷医が皇帝へ駆け寄る。
「……呼吸はあります。傷もない……」
シエルは小さく息を吐いた。
「応急処置よ。それほど時間の余裕もないわね」
「根本的な解決にはなっていないってことだな」
ユウトは眠る皇帝を見つめる。
「……絶対に助けよう。必ず裏で糸を引いてるやつがいるはずだ」
その言葉に三人は静かに頷いた。
帝国の命運を懸けた戦いが、今始まろうとしていた――。
◇
《未知魔力解析率 2.1%》
《新たなデータを取得しました》
◇
最後までお読みいただきありがとうございました!
ついに皇帝の異変が表面化し、帝国も大きく動き始めました。
シエルの応急処置によってひとまず危機は乗り越えましたが、根本的な解決にはまだ遠く及びません。
そして、補佐機構が解析を始めた未知の魔力。その正体が明らかになる時、物語はさらに大きく動き出します。
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それでは、また次回お会いしましょう!




