第二百四話 秘めた力
いつもお読みいただきありがとうございます!
少しずつですが、古代文字の解析が進み始めました。
新たな知識を得る一方で、ユウトはその力を隠すという選択をします。
そして、帝国で静かに進行しているもう一つの異変も――。
それでは、第204話をお楽しみください!
ユウトは静かに本のページをめくっていた。
昨日まで意味の分からなかった文字。
だが、今日は違う。
《解析を開始します》
補佐機構の声と共に、いくつかの文字が自然と頭へ入ってくる。
《解析率 0.8%》
(少しずつだけど……確実に増えてる。)
昨日よりも読める文字が増えていた。
それでも文章全体を理解するには程遠い。
まるで欠けた地図を少しずつ埋めていくような感覚だった。
「……やっぱり、一朝一夕にはいかないか」
小さく息を吐き、内容を書き留めていく。
その様子を、少し離れた場所からシエルが静かに見つめていた。
◇
「……何か分かったの?」
休憩のため人気の少ない窓際へ移動すると、シエルが静かに尋ねた。
ユウトは少しだけ考える。
話すべきか。
隠すべきか。
数秒の沈黙のあと、小さく頷いた。
「……ほんの少しだけ」
シエルの表情が僅かに変わる。
「補佐機構のおかげだと思う」
「まだ一部しか読めないけど、少しずつ解析が進んでる」
「そう……」
シエルは腕を組み、しばらく考え込む。
「そのことは今は誰にも話さない方がいいわね」
迷いのない一言だった。
「やっぱり?」
「ええ…この情報は価値があり過ぎる」
「もし帝国に知られれば、あなたは研究対象になるかもしれない」
その言葉に、ユウトは苦笑する。
「それは勘弁だな」
「でしょう?」
二人は小さく笑い合った。
◇
「主ぃー!」
元気な声が響く。
振り返ると、シアが本を両手で持ったまま駆け寄ってきた。
「これ見るっす!」
「どうした?」
「全然読めないっす!」
「…よくこれ見ろとか言えたな」
ユウトが即座にツッコむ。
その横でリトが深いため息を吐いた。
「……お前、その本」
「ん?」
「逆さまだぞ」
「…………」
シアは自分の本とユウトの本を交互に見比べる。
「あっ」
「気付くのおせぇよ!」
図書館の静寂を壊さないよう笑いを堪えるエレナの姿が見えた。
◇
一方その頃――。
皇帝は執務室で書類へ目を通していた。
「……」
不意に頭へ鋭い痛みが走る。
「ぐっ……!」
思わず額を押さえる。
視界の端で、黒い霧がゆらりと揺れた。
「また……か」
息を整えながら目を閉じる。
しばらくすると霧は何事もなかったかのように消えていた。
「……疲れているだけだ」
誰に言うでもなく呟き、再び書類へ視線を戻す。
その表情には、僅かな焦りが浮かんでいた。
◇
しばらくして、一人の近衛騎士が図書館へ姿を現した。
「ユウト様」
「はい?」
「陛下がお呼びです」
突然の呼び出しに、一同は顔を見合わせる。
「今からか?」
「はい。ご案内いたします」
ユウトは静かに本を閉じた。
(このタイミングで……?)
胸の奥に小さな違和感を覚えながら、皇帝の待つ執務室へ向かうのだった。
最後までお読みいただきありがとうございました!
今回は、ユウトが「知ること」と「隠すこと」の大切さを学ぶ一話となりました。
少しずつ明らかになる古代の謎と、不穏な気配を見せ始めた皇帝。
物語も少しずつ次の展開へと動き始めます。
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それでは、また次回お会いしましょう!




