第二百三話 古代の断片
いつもお読みいただきありがとうございます!
古代文字の調査が少しずつ動き始めました。
長い年月をかけても解き明かされなかった歴史の断片へ、ユウトは一歩ずつ近づいていきます。
それでは、第203話をお楽しみください!
静寂だけが図書館を包み込んでいた。
ページをめくる音。
羽ペンを走らせる音。
遠くで本を書架へ戻す小さな物音。
それ以外は何も聞こえない。
「うぅ……」
そんな静かな空間に、小さな唸り声が響いた。
「難しいっす……」
シアは机へ突っ伏し、大きくため息を吐く。
「まだ十分も経ってねぇぞ」
リトが呆れたように呟く。
「十分も集中したら十分っす……」
「何言ってんだお前は」
ユウトは苦笑しながら古代文字の本へ視線を戻した。
(やっぱり簡単にはいかないな……)
昨日読めたのは、ほんの一文字だけ。
あれ以来、何冊読んでも成果らしい成果はなかった。
それでも諦めるわけにはいかない。
ユウトは研究記録と古代文字の書物を何度も見比べながら、一文字ずつ丁寧に目で追っていく。
◇
《解析を開始します》
不意に補佐機構の声が頭の中へ響く。
(またか)
《対象:古代文字》
《解析を継続します》
視界の中で文字が淡く光る。
《解析率 0.5%》
(増えた……?)
昨日より僅かではあるが上昇している。
《学習を継続》
その一文だけを残し、補佐機構は再び沈黙した。
(少しずつ覚えていくってことか……)
ユウトは小さく息を吐き、再び本へ目を落とす。
◇
「何か分かりましたか?」
気付けば、エレナがすぐ隣に立っていた。
「まだ全然です」
ユウトは苦笑しながら、書き写した文字を見せる。
「研究記録と照らし合わせながら読めないかなって」
エレナは紙へ目を向け、少しだけ驚いたように目を見開く。
「これは……」
「何かありましたか?」
「いえ……」
エレナは静かに首を振る。
「その文字は、私たちも最近ようやく意味を推測できたものなのです」
「独学でここまで辿り着く方は初めて見ました」
「えっ?」
ユウトは思わず目を丸くする。
「たまたまですよ」
慌てて笑って誤魔化す。
(補佐機構のおかげなんて言えないよな……)
胸の内でそっと呟いた。
◇
再び本を開く。
ゆっくりとページをめくる。
すると、一節だけ文字がぼんやりと浮かび上がる。
《文字列を一部解析》
『……終焉の日を忘れてはならない』
「終焉の日……」
昨日見えた言葉と繋がる。
だが、それ以上は読めない。
何が起きた日なのか。
誰が残した言葉なのか。
何一つ分からない。
分かったのは、その言葉が何か重要な意味を持っているということだけだった。
◇
ふと顔を上げると、大きな窓の向こうに中庭が見えた。
そこを皇帝が数人の騎士と歩いている。
「ルシアンの親父さんか」
何気なく眺めていた、その時だった。
皇帝の背後で、黒い霧が一瞬だけ揺らめいた。
「……っ!」
思わず立ち上がる。
しかし、次の瞬間には何事もなかったかのように消えていた。
「気の……せいか?」
ユウトは窓の外を見つめたまま、小さく呟いた。
最後までお読みいただきありがとうございました!
少しずつですが、古代文字の調査にも進展が見え始めました。
まだ謎は深まるばかりですが、その一つひとつが、この世界の真実へと繋がっていきます。
そして、気になる皇帝の異変も……。
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それでは、また次回お会いしましょう!




