第百三十一話 境界の先
迷いの山の先に広がる景色とは――。
ユウト達は白い羽に導かれ、さらに奥へと歩みを進めます。
迷いの山を進み始めてから、どれほど時間が経っただろうか。
日はまだ高いはずなのに、森の中は時間の感覚が曖昧になっていた。
◇
「主」
シアが足を止める。
「どうした?」
「疲れてないっすか?」
ユウトは少し考え、小さく笑った。
「疲れてる…正直、結構な」
「珍しいっすね」
「でも止まるわけにはいかない」
白い羽を見つめる。
光は少しずつ強くなっている。
「シエルが近い気がするんだ」
◇
二人は再び歩き始めた。
すると森の様子が少しずつ変わり始める。
木々は今までよりも太く、高く。
葉は淡い銀色に輝いていた。
「葉っぱが……」
シアが一枚手に取る。
しかし次の瞬間、その葉は光の粒となって消えてしまった。
「消えたっす!」
「魔力でできてるのか……?」
ユウトは空を見上げる。
木漏れ日までもが、どこか白く輝いて見えた。
「主」
「今度は何だ?」
「静かじゃなくなったっす」
耳を澄ます。
どこからともなく、水の流れる音が聞こえてきた。さらに風が吹く。
迷いの山へ入ってから初めて感じる風だった。
「変わったな」
「いつ変わったのか全然気づかなかったっす」
さっきまでとは空気そのものが違う。
どこか優しく。どこか懐かしい。
その時白い羽が、今までで一番強く輝く。
「……!」
光に導かれるように進む。
最後の木々を抜けた、その先には――
◇
「うわぁ……」
思わずシアが声を漏らす。
眼下には、雲海の向こうまで広がる幻想的な渓谷。
巨大な滝が何本も流れ落ち、その周囲には白く輝く木々が立ち並んでいた。
人の世界では決して見ることのできない景色。
そして渓谷のさらに奥。濃い霧に包まれた先に、何か巨大な影が見える。
「主……」
「ああ」
ユウトは静かに頷いた。
「あそこにいる」
確信だった。
白い羽は、その影を真っ直ぐ指し示していた。
第百三十一話をお読みいただきありがとうございました!
今回は迷いの山の空気が少しずつ変わり、人の世界とは異なる景色が姿を見せ始めました。
ここから先は、さらに幻想的で神秘的な世界が広がっていきます。
ユウト達が辿り着く場所、そして待ち受ける出会いを楽しみにしていただけたら嬉しいです!
引き続き第二章をよろしくお願いいたします。
それではまた次回!




