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転生したら最強種だけどレベルが最弱でした。  作者: マッティー
第一章 目覚めし終焉竜

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第十三話 冒険者ギルド

第十三話です!

冒険者ギルドへ突入します!

 冒険者ギルドの扉をくぐった瞬間、ユウトは思わず足を止めた。


「……おぉ」


 外から見ても大きな建物だった。


 だが、中へ入ってみると想像していた以上に広い。


 高い天井に頑丈そうな石造りの壁。


 何人もの人間が横並びになっても余裕がありそうな受付。


 壁際には巨大な掲示板が並び、その表面を大量の紙が埋め尽くしている。


 さらに奥からは酒と料理の匂いまで漂ってきた。


「マジでギルドだ……」


「だから何度も言ってるでしょう」


 隣からシエルの呆れた声が飛んでくる。


「いや、分かってるけど!」


 ユウトは小声で返しながらも、視線は忙しくあちこちへ動いていた。


 剣を腰に下げた男。


 大きな盾を背負った女。


 杖を手にした老人。


 革鎧姿の若者たち。


 中には明らかに自分より年下に見える者までいる。


(うわぁ……本物だ)


 頭では理解していた。


 ここが異世界であることなど、今さら疑いようもない。


 自分自身がドラゴンになった時点で充分すぎる証拠だ。


 それでも目の前に広がっている光景は、ユウトが日本にいた頃に思い描いていた「異世界そのもの」だった。


「掲示板ある!」


「あるわね」


「冒険者めっちゃいる!」


「いるわね」


「受付嬢もいる!」


「……何がそんなに嬉しいの?」


「ロマンだよ!」


「意味が分からないわよ」


 シエルは心底理解できないという顔をしている。


 ユウトは気にしない。


 むしろテンションが上がりすぎて、また威圧が漏れないよう意識する方が大変だった。


(落ち着け俺……喜ぶと漏れる。喜ぶと漏れる……)


 先ほど屋台で店主を怯えさせたばかりだ。


 今度こそ静かにしなければならない。


 そう思いながら歩き始めた、その直後。


 ドンッ。


「うおっ」


 誰かの肩へぶつかった。


「前見ろよ、坊主」


「すみません!」


 反射的に頭を下げる。


 ぶつかった冒険者は怪訝そうにユウトを一瞥したが、それ以上何も言わずに歩き去っていった。


「…………」


 ユウトはその背中を見送り、ほっと息を吐く。


「怖ぇ……」


「あなた、終焉竜でしょう」


「それとこれとは別だろ!」


「人間一人に怯える終焉竜ってどうなの」


「俺は昨日まで普通の人間だったんだよ!」


 人間相手だから怖い。


 むしろ人間だった記憶があるからこそ、知らない大男に睨まれれば普通に怖い。


 終焉竜だからといって、精神まで急に最強になるわけではないらしい。


「それにしても……」


 ユウトは改めてギルド内を見渡す。


 あちこちで会話が飛び交っている。


「今日はどの依頼受ける?」


「北の森はやめとけ。最近ゴブリンが増えてるらしい」


「薬草採取なら南側だな」


「昨日の討伐報酬、まだ受け取ってないんだけど」


 そんな声が聞こえるたびに、ユウトの目が輝いていく。


(これだよこれ……!)


 依頼。


 討伐。


 報酬。


 どれもこれも、物語の中でしか知らなかった言葉だ。


 気づけばユウトは、吸い寄せられるように巨大な掲示板の前へ立っていた。


「うわ……」


 紙が何十枚も貼られている。


 魔物討伐。


 護衛。


 採取。


 運搬。


 失くし物探しのようなものまである。


「本当に依頼書だ……」


「何だと思ってたのよ」


「ゲームのクエストみたいなやつ」


「げーむ?」


「気にすんな」


 シエルが怪訝そうな顔をする。


 ユウトは適当に誤魔化しながら、一枚ずつ依頼書へ目を向けていった。


 その中で、一枚の紙が目に留まる。


【ホーンウルフ討伐】


 討伐対象――ホーンウルフ。


 危険度――D。


 推奨冒険者ランク――F。


「おっ」


 ユウトは少し身を乗り出した。


「これ、いかにも初心者向けって感じだな」


「そうね」


「角の生えた狼か……」


 名前だけなら分かりやすい。


 どれくらい強いのだろう。


 そんな軽い疑問を抱いた、その瞬間だった。


 頭の奥で何かが弾けた。


《解析対象を確認》


「……え?」


 ユウトが目を瞬かせる。


《情報照合を開始します》


「ちょ、待て待て」


 聞き覚えのある感覚。


 地下遺跡でも何度か聞いた、あの無機質な声に近い。


「どうしたの?」


 シエルが振り返る。


「いや、今なんか……」


 言い終わる前に、視界の中の依頼書が僅かに揺らいだ。


 そして。


【ホーンウルフ】


 危険度:D


 群れ行動:あり


 戦闘傾向:突進、噛みつき


 脅威評価:低


 総合判定:

《一般冒険者向け》


「おぉぉ!?」


 ユウトは思わず声を上げた。


 近くにいた冒険者が何人か振り返る。


「……声」


「すみません!」


 小声で謝りつつ、ユウトは再び依頼書へ目を向けた。


 だが今見えている情報は、紙に書かれている文字ではない。


 明らかに自分の視界へ直接表示されている。


「何だこれ……」


「どうしたの?」


「依頼書見てたら、急に情報が増えた」


「情報?」


「ホーンウルフの行動とか、危険度とか……」


「元から書いてあるんじゃないの?」


「いや、書いてない」


 ユウトは紙と視界に浮かぶ情報を何度も見比べる。


「なんか頭の中で『解析開始』って……」


「解析……」


 シエルの表情が僅かに変わった。


「知ってるのか?」


「知らない」


「お前そればっかだな!」


「知らないものは知らないわよ」


 シエルは少し考え込むように顎へ手を添えた。


「ただ……地下遺跡であなたに知識が流れ込んだ時、似た反応があったでしょう」


「あったな」


「終焉竜の権能か、遺跡で何かが解放された可能性はある」


「権能……」


 その言葉だけで妙に格好いい。


「終焉竜専用スキルみたいな?」


「すきる?」


「だから気にすんなって」


 シエルがますます怪訝そうな顔をする。


 ユウトは誤魔化すように、もう一度ホーンウルフの依頼書を見る。


 今度は意識的に念じてみる。


(解析……)


 一瞬だけ視界が揺らぎ、同じ情報が浮かび上がった。


「……できる」


「何が?」


「自分で出せるっぽい」


「便利ね」


「反応薄いな!?」


「あなた、さっきから新しいことばかり起きてるでしょう」


「慣れるなよ!」


 もっと驚いてほしい。


 本人としてはかなり重大な出来事なのだ。


 だがシエルにとっては、終焉竜なのだから何か変な能力があっても不思議ではないらしい。


「でも……」


 ユウトは小さく呟く。


(魔物だけなのか?)


 気になった。


 依頼書に書かれた魔物を解析できるなら。


 他のものは?


 生きている人間は?


 そんな疑問が浮かんだ、その時。


「おぉぉぉぉ!」


 ギルドの奥から大きな歓声が上がった。


「帰ってきたぞ!」


「でけぇな!」


「よく仕留めたな!」


 ユウトがそちらへ顔を向ける。


 入口とは別の搬入口らしき場所から、数人の冒険者が姿を現したところだった。


 その後ろには。


「うわっ……!」


 巨大な熊のような魔物が引きずられている。


 人間の倍以上はありそうな巨体。


 鋭い爪。


 厚い毛皮。


 すでに息絶えているにもかかわらず、かなりの迫力があった。


 それを運んできた冒険者たちも、見るからに強そうだった。


 大剣を背負った男。


 弓を持った女。


 杖を手にした魔法使い。


 装備には無数の傷が刻まれ、動きにも妙な落ち着きがある。


「すげぇ……」


 ユウトは素直に呟いた。


「そう?」


 シエルが首を傾げる。


「いや、どう見ても強そうだろ!」


「普通じゃない?」


「お前基準がおかしいんだよ!」


 黒竜と戦えるような存在に聞いたのが間違いだった。


 だが。


 その瞬間。


《対象を解析します》


「……え?」


 再び頭の奥へ声が響いた。


 次の瞬間、大剣を背負った男の周囲に文字が浮かび上がる。


【人族】


 脅威評価:D


 剣術適性:C


 身体能力:C


 危険度:低


「……おぉ」


 ユウトは目を見開く。


(人間にも使えるのか)


 隣にいる杖を持った女へ視線を移す。


【人族】


 脅威評価:C


 火属性適性:B


 魔力制御:C


 危険度:中


「えぇぇ……」


「今度は何」


「いや、ちょっと待って」


 どうやら依頼書だけではない。


 生きている相手そのものを見ても、ある程度の情報を読み取れるらしい。


 ただし。


(レベルは出ないんだな)


 自分のステータスを見る時のような具体的な数値は一切表示されていない。


 見えるのは、危険度。


 適性。


 脅威評価。


 どれも大まかなものだけだ。


(俺だけ数値で、他の人は評価なのか……?)


 その違いが何を意味するのかは分からない。


 だが。


 少なくとも、相手の強さをある程度判断することはできる。


「シエル!」


「なに」


「俺、新しい能力覚えたかもしれん!」


「そう」


「反応薄っ!?」


「さっき聞いた」


「今度は人にも使えたんだよ!」


「へぇ」


「へぇ!?」


 本当に興味がないのか。


 それとも、自分基準ではそれほど珍しい能力ではないのか。


 ユウトには判断できない。


「じゃあお前はどうなんだよ……」


「何?」


 何気なくシエルへ視線を向ける。


(解析)


 軽い気持ちだった。


 次の瞬間。


「…………」


 ユウトの表情が固まった。


【古代白銀竜】


 危険度:SS


 脅威評価:A


 魔力制御:S


 竜術適性:S


 総合評価:

《高位古代竜種》


「…………」


「どうしたの?」


 シエルが首を傾げる。


「いや……」


 ユウトはもう一度表示を見る。


 見間違いではない。


 先ほどの冒険者たちとは、明らかに桁が違う。


「うわぁ……」


「何よ」


「お前、やっぱりめちゃくちゃ強いんだな」


「今さら?」


「いや、知ってたけど!」


 巨大な黒竜と正面から戦っていた。


 地下遺跡でもゴーレムを一人で何体も相手にしていた。


 弱いはずがないことくらい、とっくに分かっている。


 それでも。


 こうして比較できる形で見せられると、改めて実感する。


「危険度SSって……」


「何の話?」


「いや、こっちの話」


 シエルは怪訝そうに眉を寄せた。


 ユウトは慌てて視線を逸らす。


(待てよ)


 そこで、一つ気になることが浮かんだ。


 他人を解析できる。


 魔物も見られる。


 シエルの情報まで表示された。


 ならば。


(自分は?)


 ユウトはゆっくり自分の手を見る。


 終焉竜。


 幼体。


 遺跡では王だの継承者だのと呼ばれた。


 だが。


 今の自分がどれほどの存在なのか。


 ユウト自身、まったく分かっていない。


 黒竜より上なのか。


 シエルより上なのか。


 それとも、種族だけが特別で今はまだ弱いのか。


「…………」


 胸の奥で、妙な期待と不安が混ざり合う。


(俺の評価……どうなってるんだ?)


 ユウトは静かに息を飲んだ。


 そして自分自身へ向けて、解析を試そうと意識を集中させる。


 終焉竜の幼体。


 今の自分は、一体どれほどの存在なのか、その答えを知る時が、すぐそこまで来ていた。

次回はいよいよ冒険者登録かもしれません。

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