第百二十三話 失踪
穏やかな日々は、突然終わりを迎えることがあります。
その日もまた、いつもと変わらない朝が始まる――はずでした。
翌朝。
「ふわぁ……」
ユウトは大きくあくびをしながら目を覚ました。
「今日もレベル上げだな」
軽く体を伸ばし、部屋を出て食堂へ向かう。
「おはようっす」
シアは既に朝食を食べていた。
「おはよう」
席に着き、周囲を見回す。
「シエルは?」
「それがまだ来てないっす」
「え?」
ユウトは首を傾げた。
「部屋にもいなかったっす」
「珍しいな……」
いつもならシエルは誰よりも早起きだ。
「宿の人に聞いてみるか」
二人は宿の主人へ声を掛けた。
「あぁ、銀髪のお嬢さんかい? 夜明け前に出て行ったよ」
「夜明け前?」
「珍しいっすね……」
二人はシエル達の部屋へ向かう。
すると、机の上に一枚の紙が置かれていた。
◇
『ごめんなさい』
◇
たったそれだけ。
「……」
ユウトは紙を見つめる。
「主」
シアが小さく声を掛ける。
「シエルらしくないっす」
「……あぁ」
ユウトも同じことを思っていた。
何かあった。
昨日までの様子を思い返せば分かる。
それでも何も聞かなかった。
「俺が待つって言ったからな」
小さく呟く。
後悔はしていない。
だが放っておくつもりもなかった。
その時、窓際で何かが風に揺れた。
◇
一枚の白い羽。
◇
「これ……」
シアが拾い上げる。
「シエルの……?」
ユウトは羽を見つめる。
ほんの僅かに魔力が残っている。
「たまたま落ちていくようなもんじゃない…」
「残していったんだ」
シアがユウトを見る。
「主」
「行くぞ」
迷いはなかった。
「迎えに行く」
「俺たちの仲間だから」
その一言で十分だった。
ユウトは白い羽を握り締める。
シエルが何を抱え、どこへ向かったのかは分からない。
それでも迎えに行く理由は一つだけだった。
仲間だから。
第百二十三話をお読みいただきありがとうございました!
ついに第二章が大きく動き始めました。
シエルの失踪、残された短い言葉、そしてユウトの決意。
ここからは新たな舞台へ向けて物語が進んでいきます。
シエルが何を想い、どこへ向かったのか。
その答えも少しずつ明らかになっていきますので、引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです!
それではまた次回!




