第百二十話 隠し事
少しずつレベルを上げながら、いつもの日常を取り戻し始めたユウト達。
ですが、その日常にも少しずつ変化が訪れようとしていました。
ユウト達は再び依頼を受けていた。
「今日は何食べるんすか?」
シアが真顔で聞く。
「依頼を受けるんだ」
「食べる前提じゃないっすか」
「………」
ユウトは何も言い返せなかった。
図星だった。
◇
目的地へ向かう道中シアは相変わらず騒がしい。
ユウトもいつも通り。
だがシエルだけが静かだった。
「……」
昨日からずっとそんな調子だ。
「なぁシエル」
「なに?」
「何かあったか?」
一瞬だけシエルの肩が震えた。
「何もないわ」
返事は昨日と同じだった。
ユウトは少し考える。
「…ならいいけど」
それ以上は聞かなかった。
聞かれたくないこともある。
そう思ったからだ。
シエルは少しだけ目を伏せた。
「……ごめんなさい」
小さな声。
「ん?なんか言ったか?」
「何でもないわ」
風に消えるほど小さかった。
◇
そのまま依頼を終え三人は街へ戻る。
宿へ戻る途中。
「主」
シアが小声で話しかける。
「シエル、絶対何かあるっす」
「やっぱりそう思うか?」
「昨日からずっと変っす」
ユウトも頷く。
「でも話したくなったら話してくれるだろ」
「それまでは待つ」
その言葉を少し離れた場所で歩いていたシエルは、静かに聞いていた。
「……」
胸が痛む。
隠したくて隠しているわけではない。
けれど今はまだ話せない。
話してしまえばこの穏やかな日常は、終わってしまう気がした。
第百二十話をお読みいただきありがとうございました!
今回はユウト達の日常と、その裏で揺れ動くシエルの心情を描きました。
信じてくれる仲間がいるからこそ、隠し事をしていることが苦しくなる。
そんなシエルの葛藤も少しずつ描いていけたらと思っています。
そして第二章の物語も、ゆっくりと本筋へ向かって動き始めます。
それではまた次回!




