第百十九話 呼び声
レベル上げの日々は続きます。
ですが、少しずつ日常の歯車が動き始めようとしていました。
翌朝
シエルは一人、宿の外へ出ていた。
まだ日も昇りきっていない。
静かな朝だった。
「……」
目を閉じる。
すると。
頭の中へ直接響く声。
◇
『ア…シエル』
◇
その名を呼ばれた瞬間。
シエルの表情が僅かに曇る。
◇
『聞こえているな』
◇
「……はい」
静かに返事をする。
◇
『長らく報告が途絶えている』
『監視対象の状況を報告せよ』
◇
短い言葉だが彼女には十分だった。
「……問題ありません」
◇
『本当にそう判断しているのか?』
◇
「はい」
少しだけ間が空く。
◇
『ならば帰還せよ』
◇
その一言で空気が凍った。
「……」
◇
『……シエル』
『これは命令だ』
◇
声は途切れた。
シエルはしばらくその場を動かなかった。
「帰還……」
小さく呟く。
その時だった。
「シエル?」
後ろからユウトの声。
シエルは振り返る。
いつもの笑顔を作った。
「どうした?こんな朝早くから」
「何でもないわ」
「そうか」
ユウトは本当にそう思った。
疑いもしない。
その無邪気さが今は少しだけ苦しかった。
◇
朝日が昇る。
新しい一日が始まる。
だがシエルの胸には消えない迷いが生まれていた。
第百十九話をお読みいただきありがとうございました!
今回はシエルの様子に少しだけ変化が現れました。
まだ多くは語られませんが、ここから第二章の物語が少しずつ動き始めます。
ユウト達の成長とともに、それぞれが抱える過去や想いにも触れていく予定です。
引き続き第二章をよろしくお願いいたします!
それではまた次回!




