第十一話 終焉竜、街へ行く
第十一話です!
ついにユウト、街デビューします。
地下遺跡を出た瞬間。
「うわぁ……」
ユウトは思わず声を漏らした。
空が広い。
風が気持ちいい。
そして何より。
「人間サイズって歩きやすっ!?」
「今更?」
銀髪の少女が呆れたように言う。
だが本当に感動していた。
今まで巨大ドラゴンだったせいで、移動するだけでも大変だったのだ。
木にぶつかる。
洞窟狭い。
滑る。
転ぶ。
色々酷かった。
「人間って便利だな……」
「元人間でしょう」
「そうだった」
ユウトは頷きながら歩く。
だがその時。
ブワッ――。
「うおっ!?」
突然、黒い魔力が漏れた。
周囲の草木が一斉に揺れる。
「……また」
少女が小さくため息を吐く。
「威圧漏れてる」
「だから蛇口みたいに言うなって!」
本人に自覚はない。
だが終焉竜の魔力は、人間には刺激が強すぎるらしい。
その証拠に。
近くにいた小動物たちが、一斉に逃げ出していた。
「うわ、また逃げた……」
「本能的に危険だと分かるのよ」
「ちょっと傷つく」
すると少女がこちらを見る。
「ちなみに今の、人間相手なら気絶してる」
「怖っ!?」
終焉竜怖すぎる。
その時だった。
ユウトの腹が盛大に鳴った。
グゥゥゥゥ……。
「…………」
「…………」
「腹減った」
「知ってる」
少女は呆れた顔をする。
「人化すると消耗が増えるの」
「マジで?」
「不完全だから」
「その言葉便利だな!?」
すると少女は少し考え込み。
「……街まで行けば食べられる」
「街!!」
ユウトの目が輝いた。
◇
数時間後。
森を抜けた先で、ユウトは完全に固まっていた。
「……おぉ」
高い城壁。
大きな門。
行き交う馬車。
武器を持った冒険者たち。
異世界だった。
ガチの異世界だった。
「すげぇ……」
思わず見入る。
すると少女が小さく首を傾げた。
「そんなに珍しい?」
「珍しいだろ!?
ファンタジー世界だぞ!?」
「……変なの」
少しだけ呆れたように言う。
だがその時。
ユウトの腹が再び鳴った。
グゥゥゥゥ……。
「……先にご飯?」
「お願いします」
即答だった。
◇
街の中は、さらに凄かった。
屋台。
鎧屋。
武器屋。
冒険者。
獣人。
「うおぉぉぉ!!」
ユウトはキラキラした目で周囲を見回す。
「マジで異世界だ!!」
「落ち着いて」
「無理だろこれ!!」
完全に田舎から初めて都会へ来た人だった。
その時。
ふわりと、いい匂いが漂ってくる。
「……肉」
ユウトの目が輝いた。
屋台だった。
串焼き肉。
ジュウジュウ焼けている。
「うまそう……」
無意識に近づいていく。
すると。
「おいおい」
後ろから声がした。
「随分いい女連れてるじゃねぇか」
チンピラだった。
三人組。
ニヤニヤ笑っている。
ユウトは首を傾げた。
「……え?」
「嬢ちゃん、こんなのより俺たちと遊ばねぇ?」
男が少女へ手を伸ばす。
その瞬間。
ゾワッ――。
空気が変わった。
「……ぁ?」
男たちの顔色が変わる。
ユウトの瞳が、一瞬だけ赤く染まった。
黒い魔力が、わずかに漏れる。
威圧。
ただそれだけだった。
だが。
「ひっ……」
一人が腰を抜かした。
もう一人は顔面蒼白。
最後の一人は。
バタッ。
「泡吹いてるぅぅぅ!?」
気絶していた。
ユウトは慌てる。
「え!?
なにこれ俺悪くなくない!?」
「だから威圧漏れてるって言った」
「蛇口扱いやめろ!!」
少女は小さくため息を吐く。
だが。
ほんの少しだけ。
口元が笑っていた。
「……ふふ」
「今笑った!?」
「笑ってない」
「絶対笑っただろ!!」
そんなやり取りをしていると。
周囲の冒険者たちが、ざわつき始めていた。
「おい……今の見たか?」
「魔力だけで気絶させたぞ……?」
「なんだあいつ……」
ユウトは青ざめる。
「え、俺目立ってる!?」
「かなり」
「終わったぁぁぁ!!」
終焉竜の人間生活。
前途多難である。
街編スタートです!
でも終焉竜、全然普通に暮らせそうにありません。
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