第十話 終焉竜、人になる
第十話です!
ついにユウト、人化します。
眩しかった。
黒い光が、ユウトの身体を包み込んでいる。
「うおぉぉぉっ!?」
熱い。
身体の内側が作り変えられていくような感覚。
骨が軋む。
魔力が暴れる。
そして何より。
「ちっさ!?」
視点が急激に下がった。
今まで巨大だった身体が、一気に縮んでいく。
翼が消える。
尻尾が消える。
爪が消える。
「うわ、なんか怖っ!?」
ユウトはパニックだった。
だが変化は止まらない。
黒い魔力が渦を巻き、やがてゆっくり収束していく。
そして。
静寂。
「……終わった?」
恐る恐る目を開ける。
まず最初に感じたのは。
「……軽っ」
身体が軽い。
驚くほど軽い。
次に気づいた。
「……喋りやすっ!?」
声だった。
ちゃんと喋れる。
人間の口だ。
感動した。
「うわぁぁぁ!!
普通に喋れるぅぅぅ!!」
「うるさい」
「っ!?」
ユウトは慌てて振り返る。
銀髪の少女が、呆れたようにこちらを見ていた。
だが次の瞬間。
彼女の表情が、ほんの少しだけ止まる。
「……へぇ」
「な、なんだよ」
「思ったより幼い」
「なんか傷つく」
ユウトは思わず頬を押さえた。
手だ。
ちゃんと人間の手になっている。
「おぉ……」
感動する。
指が五本ある。
いや元々あったけど。
ドラゴン形態と違って、めちゃくちゃ動かしやすい。
その時。
ヒロインがじっとユウトを見ていることに気づいた。
「……?」
「角」
「え?」
ユウトは頭を触る。
コツン。
「……あっ」
小さな黒い角が二本、生えていた。
「残ってるぅぅぅ!?」
「不完全だから」
「マジかぁ……」
さらに後ろを見る。
黒い尻尾も残っていた。
「なんで!?」
「人化が未完成なのよ」
少女は冷静に言う。
だがその直後。
彼女の視線が、ふっと逸れた。
「……あと」
「ん?」
「服」
「え?」
ユウトは固まった。
数秒後。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
全裸だった。
◇
「…………」
「…………」
地下神殿に、気まずい沈黙が流れる。
ユウトは黒竜用の布みたいなものを腰に巻いていた。
応急処置である。
「見るなよ……」
「見てない」
「絶対見たろ」
「見てない」
少女は真顔だった。
でも耳が少し赤い。
ユウトは見逃さなかった。
「お前、ちょっと照れて――」
「殺すわよ」
「すみませんでした」
圧が強い。
その時だった。
ゴゴゴゴゴ……。
神殿中央の結晶が、再び淡く光り始める。
《第一段階人化を完了しました》
《継承者保護プロトコルを終了します》
「第一段階?」
ユウトが首を傾げる。
少女が小さく息を吐いた。
「不完全な人化ってこと」
「つまり?」
「まだ幼体」
「そこ強調しなくてよくない!?」
だが少女は少しだけ真面目な顔になる。
「でも……普通はここまで早く人化できない」
「え?」
「終焉竜は成長が遅い種族だったはず」
少女はユウトをじっと見つめる。
「なのに、あなたは異常に早い」
「褒められてる?」
「分からない」
「怖い言い方やめろ」
その時。
ユウトはふと首を傾げた。
「……ところで」
「?」
「俺、どうやって戻るんだ?」
「戻る?」
「ドラゴンに」
数秒の沈黙。
そして。
「……あぁ」
少女は何かを察した顔をした。
「やり方知らないのね」
「えっ」
「今のあなたには無理」
「マジで!?」
ユウトは思わず叫ぶ。
「いや戻れないと困るんだけど!?」
「まだ人化が不完全だから」
少女は淡々と続ける。
「今は“変化した”だけ。
制御してるわけじゃない」
「えぇ……」
「慣れれば戻れるようになる」
「慣れなかったら?」
「そのまま」
「怖っ!?」
さらっと恐ろしいことを言われた。
その時。
黒竜が静かにこちらへ近づいてきた。
ズシン。
ズシン。
人化した今だと、余計にデカい。
「うわぁ……」
見上げるほど巨大だった。
黒竜はユウトをじっと見下ろす。
そして。
『グル』
ゆっくり頭を下げた。
「……え?」
ユウトは困惑する。
すると少女が小さく呟いた。
「上位竜が、格を認めた時の仕草」
「マジで?」
『グルル』
黒竜の声が、今までよりはっきり理解できた。
完全ではない。
でも分かる。
――守る。
――王。
「……王ってなんだよ」
ユウトは頭を抱えた。
全然実感がない。
すると少女が静かに言う。
「多分、外へ出た方がいい」
「外?」
「あなたは、この世界を知らなすぎる」
確かにそうだった。
ユウトはまだ、
終焉竜
人類
竜種
世界
何も知らない。
少女は続ける。
「人間の街へ行きましょう」
「街!」
ユウトの目が輝く。
異世界の街。
冒険者。
ギルド。
ファンタジー飯。
「行く!!」
「声大きい」
「すまん」
すると少女は小さく息を吐く。
「……その前に」
「ん?」
「服をなんとかする」
「それは本当にそう」
こうして。
終焉竜の幼体ユウトは、ついに外の世界へ向かうことになった。
人化しましたが、まだまだ不完全です。
次回からは外の世界編へ入っていきます!
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