第百八話 終幕
長きにわたる戦いも、ついに終幕へ。
それぞれが抱えていた想いに、一つの決着が訪れます。
ドゴォォォォォォォォォォォン!!
◇
ユウトの拳が炸裂する。
完成形。
そう呼ばれていた怪物の身体が吹き飛んだ。
山を砕き。
大地を抉り。
夜空を切り裂く。
そして遥か彼方で地面へ激突した。
◇
轟音。
衝撃。
静寂。
誰も言葉を発せなかった。
「なんなんだこれは……」
レオンが呟く。
◇
『まだだ』
黄金の瞳が先を見つめる。
そこには倒れた黒幕がいた。
身体は崩壊している。
黒い霧も消え始めていた。
もう戦えない。
誰の目にも明らかだった。
「なぜ……」
黒幕が呟く。
「なぜ届かなかった……」
「なぜ……」
震える声。
今までの余裕はない。
狂気もない。
ただ一人の男がそこにいた。
『届く訳ないだろ』
ユウトが歩く。
ゆっくりと。
静かに。
『お前は誰も見てなかった』
黒幕の瞳が揺れる。
『No.1も』
『被験体達も』
『全部ただの実験材料だった』
返す言葉はない。
『だからお前は一人だった』
その言葉に黒幕は目を閉じた。
思い出す。
遠い昔。
村を救いたかった。
誰かを助けたかった。
それだけだった。
だが力を求めた結果
失った。
家族も。
故郷も。
全て。
「私は……」
掠れた声。
「間違っていたのか……」
ユウトは答えない。
代わりに静かに手を伸ばした。
終焉因子。
純粋な力が黒幕へ流し込まれる。
黒い霧が揺れる。
暴走していた因子が静まる。
その瞬間だった。
黒幕の瞳に。
僅かな正気が戻った。
「……そうか」
男が空を見上げる。
星空。
懐かしい夜空。
「私は随分と遠回りをしたらしい」
小さな笑み。
そして身体が崩れ始める。
終焉因子によって無理やり繋ぎ止められていた命。
もう限界だった。
「ありがとう」
誰に向けた言葉だったのか。
それは分からない。
だがその表情は穏やかだった。
次の瞬間男の身体は光となって消えた。
◇
風が吹く。
静かな夜だった。
長い戦いが終わった。
第百八話をお読みいただきありがとうございました!
研究所編の決着となる回でした。
黒幕は最後に自らの過ちと向き合い、静かに幕を下ろします。
そしてユウト達の戦いもようやく終わりを迎えました。
次回は少しだけ肩の力を抜いて、戦いの後のお話になります。
それではまた次回!




