第百六話 新たな姿
進化を果たしたユウト。
戦場の空気は一変し、ついに黒幕は初めて恐怖を知ります。
光が収まっていく。
戦場を包んでいた眩い輝きが少しずつ消えていく。
そしてそこにいたのは
◇
竜だった。
◇
だが誰も見たことのない竜。
◇
黒い鱗
夜空よりも深い漆黒
その隙間を走る金色の紋様
巨大な翼
鋭い角
そして全てを見透かすような黄金の瞳
◇
静かだった。
咆哮もない。
威嚇もない。
それなのに誰も動けない。
「なんだ……あれは」
レオンが呟く。
答えられる者はいない。
いや、二人だけは違った。
『ユウト……』
シエルの声が震える。
『主……』
シアも目を見開いていた。
その姿を知っていたから。
◇
黒幕が一歩後退る。
初めてだった彼が自ら距離を取ったのは。
「ありえない……」
震える声。
「そんな筈がない」
その瞳には。
恐怖があった。
今まで一度も見せなかった感情。
だがユウトは何も答えない。
ただゆっくりと前へ出る。
一歩。
また一歩。
その度に空気が重くなる。
大地が震える。
黒幕の額から汗が流れる。
「何なんですか……」
返事はない。
代わりに黄金の瞳が黒幕を見つめた。
その瞬間黒幕の身体が震えた。
本能だった。
理解ではない。
知識でもない。
生物としての本能。
逆らうな。
近付くな。
逃げろ。
そう叫んでいた。
「ふ、ふざけるな……!」
黒幕が叫ぶ。
黒い霧が膨れ上がる。
完成形。
その力を全て解放する。
「私は完成した!私が究極なんだ!」
だがユウトは静かだった。
そして初めて口を開く。
『そうか』
低い声。
今までとは違う。
竜の声。
威厳を帯びた声。
『なら』
黄金の瞳が細められる。
『試してみるか?』
その瞬間黒幕の顔から血の気が引いた。
第百六話をお読みいただきありがとうございました!
進化を果たしたユウト。
その姿はシエルやシアですら驚くものでした。
そして初めて黒幕が見せた恐怖。
今までとは立場が逆転した戦いが始まろうとしています。
それではまた次回!




