第百二話 双竜
白銀龍と黒龍。
伝承に語られる二体の竜が、その力を解放します。
しかし相手もまた、異常な執念で進化を続けていました。
「これが私の完成形です」
黒幕が両腕を広げる。
黒い霧が夜空を覆う。
その異様な姿はもはや人間の面影すら残していなかった。
『完成形?』
シエルが静かに言う。
『そんなものではないわ』
次の瞬間巨大な翼が羽ばたいた。
◇
ドォォォォォン!!
◇
白銀の巨体が夜空を駆ける。
速い。
竜の姿になったシエルは人化の時とは比較にならなかった。
振り下ろされる巨大な爪。
黒幕が受け止める。
だが受け止めただけだった。
大地が陥没する。
黒幕の身体が沈む。
「ぐっ……!」
初めてだった。
黒幕の顔から余裕が消えたのは。
『シア!』
『任せるっす!』
黒龍が飛ぶ。
漆黒の巨体が夜空を裂く。
白銀龍の攻撃で生まれた隙。
そこへ黒龍の爪が突き刺さった。
◇
ドガァァァァァン!!
◇
凄まじい衝撃。
黒幕の身体が吹き飛ぶ。
山肌へ激突する。
岩盤が砕け散った。
「うわぁ……」
ユウトが引いていた。
「やっぱりあの二人おかしいだろ」
「今さらだな」
レオンが遠い目をする。
少し慣れてきたらしい。
だがシエルとシアは笑っていなかった。
分かっているのだ。
まだ倒せていないと。
案の定崩れた岩の中から黒い霧が溢れ出した。
「素晴らしい」
聞き飽きた声。
だが今度は違った。
声が歪んでいる。
苦しそうだった。
『効いている』
シエルが呟く。
『効いてるっす』
シアも頷く。
勝機はある。
そう思えた。
だが次の瞬間だった。
◇
ゴォォォォォォォォッ!!
◇
黒い霧が暴走する。
周囲の木々が枯れる。
大地が黒く染まる。
「なっ……」
レオンが絶句する。
その中心で黒幕は笑っていた。
いや。
笑いながら崩れていた。
肉体が耐えられていない。
それでも止まらない。
「あと少しです」
「あと少しで」
狂気に満ちた瞳。
そして
「終焉竜へ辿り着ける」
その言葉にユウトの表情が変わった。
空気が凍る。
黒幕の目的。
その核心がついに口にされた。
第百二話をお読みいただきありがとうございました!
白銀龍と黒龍の連携により、ついに黒幕へ有効打を与えることができました。
しかし彼は倒れるどころか、自らの肉体が崩れることすら気にしていません。
その目的は、終焉竜へ至ること。
研究所編もいよいよ最終局面へと向かっていきます。
それではまた次回!




