オジ専門小悪魔エリスとの危険な個人授業 - エリスさんには、気を付けて下さいね……? -
ファルスには7日間の休学を言い渡した。聞き分けのない子なのでミネルヴァと学校医に頼まれて、担任教師の口から直々に言い渡した。語るまでもなくえらく手を焼いた……。
「それは困る……」
そこで『無理に参加しようとするならば俺が24時間この部屋でお前を見張る』とこちらも強情を張ってやった。
「なら7日だけでいいから休んでくれぃ、そんな格好で教練に参加されたら、胸が痛くなって俺ぁどうかしちまうよぃ」
「……変な人。でも、最強のデモンスレイヤー……教官の言葉なら、従う……」
「ミストルとエリスにも礼を言っておくんだぜぃ、夜中までお前を見守ってたんだからな?」
「エリスは無理、気が合わない……」
それも時間の問題だろう。なんて口に出して生まれかけた友情をヒビを入れる趣味はない。とにかくそういうわけでファルスは7日間の休養に入った。教練が終わったらミストルが面倒を見ると言っているから大丈夫だろう。雨降って地固まるってやつだった。
しかし一方、エリスの方はというと――
「教官……私、折り入って教官にご相談が……」
「お、おぅ……?」
昼休みになると校長室を訪ねてきた。えらく暗い顔で視線を落として、早いところ食堂に行きたい校長先生の前で言葉を濁らせた。
「私、臆病者です……」
「またその話かぃ。相手の力量を正しく見抜いただけだ、ファルスの蛮勇を見習うな」
「ですけどっ、これではいざという時に戦えませんっ!!」
「出る必要ねぃと思うけどなぁ……」
彼女に対する印象が少し変わった。エリスは強い人間に媚びて調子良く生きようとする人間ではなかった。むしろ逆で、強い独立心を持った女性だった。
「せめてもっと強くなれたら……もう少し前に出れたのでしょうか……」
「それはそうだ。ゾウと同じだけの力があればゾウの前に立てる」
「あの……今日の夕方以降は、お暇でしょうか……? 校長のお立場でお忙しいのは存じておるのですが……」
「いいとも、付き合おうっ! 夕食会はミネルヴァに押し付けりゃいいっ!」
数日はチクチクと言われてしまうだろうが、優先順位は心得ている。生徒ファーストだ。
「そ、それはミルに申し訳ない……い、いえ、今日だけはミネルヴァ先生に甘えることにします」
「よしっ、今日の放課後は校長先生と特訓だぃ!」
ちょうどそこにミネルヴァがやってきた。ミネルヴァに申し訳なくなったのかエリスは驚いて校長室を出ていった。すぐに俺の口からミネルヴァ教官に事情を伝えた。
「それは構いませんけど……」
構いませんって割にかなり不満そうだった。
「大丈夫ですか……?」
「ん、何がだぃ?」
「あの子の性格、校長先生ももうわかっているでしょう……? 誘われても断って下さいねっ!? 外交問題になりますよっ!」
口調からそんな気はしていたが、エリスはそんなに高い家柄の娘なのだろうか。だとするとかつてのミネルヴァの同類ということだろうか。
「そりゃまた大げさな。エリスは仲間を守るために前に出れなかった自分を悔やんでいるだけだ。俺はそんなあの子の力になりたいんだぃ」
「あの子ばっかりずるいです……」
「ずるいって、お前はもう卒業しただろう……?」
「フルーツパーラーに行くそうですねっ、生徒たちとっ!!」
「お、おぅ……っ、ならミネルヴァも――」
「一緒になんて行きませんっ、野暮ですよ、野暮っ!」
野暮と言う割に行きたそうだ。今夜の夕食会の代役を頼むからには、こちらも何かお礼をするべきだろう。
「今度、二人で行くか……?」
「え、いいんですかっ!?」
チョロいくらいあっさり釣れた。
「こんなおっさんと行って何が楽しいかわからねぃが、埋め合わせはするぜぃ。何が欲しい?」
「も、もう、調子のいい人ですね……っ。さ、再来週の安息日でいいですよねっ!? モテないおじさんと特別にデートしてあげますよっ!」
「モテなくて悪かったねぃ!」
とにかくそれで話がまとまった。まとまったというのにミネルヴァはまた不安そうな顔をしてこう言った。
「エリスさんには、気を付けて下さいね……?」
「お前はもう少し生徒を信じろやぃ!」
「校長先生がピュアすぎるんですっっ!! パクッと食べられちゃっても知りませんからねっ!!」
「誓ってそんな子じゃない、大丈夫だぃ!」
話がループして昼休みがなくなってしまっては意味がない。かわいいところのある元生徒の手を引いて、元生徒と楽しい昼食としゃれ込んだ。




