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【Day 4 / 08:30 ―― 第八宇宙港・第四ターミナル(辺境セクター行き)】
タカシに「超激安チケット」という名の借用書を握らされてから四日。
アキラは、第八宇宙港の最果てにある、錆びついた第四ターミナルの搭乗ゲートに立っていた。
ここは、アッパーフロアの一等市民たちが使う清潔なロビーとは程遠い、オイルと推進剤、そして剥がれかけた塗装の匂いが混ざり合う、薄暗くうらぶれた区画だった。周囲には、くたびれた荷物を抱えた労働者や、あからさまに違法なサイバーパーツを埋め込んだ乗客たちが退屈そうに列を作っている。
『――安心! 安全! 快適! 夢の辺境クルーズなら、実績と信頼のイカロス翼トラベルにお任せください!』
ゲートの天井近くでは、色彩が微妙に滲んだ安価な三次元ホログラムが、耳障りなほど陽気なファンファーレと共に、能天気なマスコットキャラクターのダンスを繰り返し再生していた。
「安心と安全」という言葉が耳に届くたび、アキラの胃の腑は鉛を飲まされたように重く沈み込んでいく。
「……最悪だ」
アキラは、目の前のガラス窓に映る自分の姿を見て、小さく毒づいた。
鏡を見るのが嫌で、魔改造マルチツールのハサミを使って自分で適当に切り落とした髪は、あちこちが不揃いでボサボサに跳ねている。黄金比と称えられたかつての整った顔立ちは、四日間の不眠と栄養不良、そして激辛トウフによる胃の荒れによって、どこか幽鬼のような陰を帯びていた。
胸元に黒い粘着テープを貼った、泥汚れの消えないIHIの防塵ツナギ。それが今の彼のすべてだった。
アキラは、目の前の搭乗連絡橋の向こうに鎮座する、辺境行き激安シャトル「イカロス翼号」の船体を見上げた。
全長約百二十メートル。ずんぐりとした中型輸送船を旅客用に強引に改装した、お世辞にも美しいとは言えない歪なシルエットだ。
その船殻を、アキラの「エンジニアとしての眼」がスキャンするように見つめた瞬間。
彼の脳細胞が、本人の意思とは無関係に、超高速で視覚情報の解析を開始してしまった。
(――待て)
アキラの足が、ピタリと止まる。
船体中央部、キール構造の接合プレート。
そこを固定する直径三十ミリのチタン合金製ボルト群。
等間隔に並んでいるはずのその配列が、ほんの、わずかだけ、歪んで見えた。
(ボルトピッチが……ズレている。ゼロ・コンマ・ミリ単位じゃない。ゼロ・コンマ・ゼロ一ミリ、右に偏っている。いや、あの位置の応力集中度から逆算すれば、これは意図的に穴の位置をズレさせて、強引に組み上げた証拠だ……!)
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