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テツのヘッドホンから流れる変拍子ジャズが、突如として激しいシンバル連打のパートへと突入した。それと同期するように、操縦コンソールのインジケーターが明滅し始める。
『――ピーッ! ピーッ! 警告。アプローチ角に予期せぬ偏差が発生。減速ベクトルが目標軌道から離脱中』
けたたましい高音の警告ブザーが、狭いブリッジに鳴り響いた。
「どうしたテツ! 何が起きている!?」
「やべえ! フル逆噴射に入ったら警告ログが出た! 右舷スラスターの取り付け角、闇市場で溶接した時から右に一・二度ズレやがってたんだ! 減速のベクトルが外側に逃げて、船体が横滑り(ドリフト)を起こしてる!」
「なんだと!? パルス噴射で軌道を修正するんだ!」
「駄目だ、全開で逆噴射しても慣性が殺しきれねえ! ズレた一・二度の角度のせいで、減速しようと吹かせば吹かすほどターゲットの側面に吸い寄せられていく!」
コンソール上のホログラム画面で、赤く点滅するエントロピー号の光点が、イカロス翼号の船体へと一直線に突き進んでいく。
しかも、その突撃先は――イカロス翼号の最も構造的に脆い左舷(ポート側)。アキラが先ほど「欠陥キールが存在する」と見抜いた、まさにその最悪のピンポイントだった。
「ブレーキが効かねええええ! ノーブレーキでツッこむぞ!!」
テツが変拍子ジャズの破調に合わせて悲鳴を上げる。
「バカ野郎! これじゃ安全第一どころか、双方の船体が激突して大労災事故だ!!」
バルド船長の胸元の「安全第一」ワッペンが、恐怖と緊張による激しい震えでカタカタと揺れた。
正面の強化ガラス越しに、イカロス翼号の薄暗い船外装甲が、目の前いっぱいに巨大化して迫ってくる。
もはや衝突を物理的に回避する術は存在しなかった。
「うわあああ! ぶつかるううう!!」
テツとゲンが頭を抱えて絶叫する。
その極限のパニックの中、バルド船長は恐怖で顔を極限まで引きつらせながらも、己の魂(コンプライアンス意識)に従って絶叫した。
「全クルー! 衝撃に備えろ! 全員、安全帯のフックよし!! 指差し確認ーーーッ!!」
「「フックよし!!」」
絶望の悲鳴と指差し確認の唱和が同時にブリッジへ響き渡った次の瞬間。
ドォン―――――――ッ!!
宇宙空間の静寂を破り、二隻の欠陥船同士が、最悪の角度で激しく正面(横っ腹)から激突した。
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