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脳内の数理シミュレーターが、その完璧すぎる栄養バランスを瞬時に逆計算し、解析を完了させてしまう。
(予測通りすぎる……! 脳に対する刺激がゼロだ……! 脳が……脳が退屈でフリーズする……!!)
アキラは白目を剥いたまま、脳内の過剰演算を停止させる「刺激」が得られない恐怖に打ち震えた。
「あら、美味しすぎて衝撃を受けていらっしゃるのでしょうか?」
エリはうれしそうに微笑むと、自分の膝の上に広げられた分厚い本へと視線を戻した。
その表紙には『星間連邦税法マニュアル(旧体系・第百四十二版)』と書かれている。
「やっぱり連邦の古い税法は素晴らしいですね……。特にこの、別表第三の『特殊生物資源における減価償却費の特例算定式』なんて、読んでいるだけでうっとりしてしまいます。キノコの菌糸が伸びるみたいに美しいロジックです……」
エリは頬を赤らめ、うっとりとした表情で税法マニュアルの条文を指でなぞっていた。
アキラは白目から正気に戻り、(どんな感性をしてんだ、この怪力娘は……)と引きつった目を向ける。
その時だった。
アキラが抱えていた魔改造タブレットが、けたたましい高周波の警告音を鳴らした。
画面上の『Oasis-CAD』と連動したパッシブ・センサーが、デブリ宙域の通信ノイズを突き破り、異常な熱源反応を捉えたのだ。
「なんだ……? デブリの反射波じゃない。高速でこちらにアプローチしてくる物体がある……!」
アキラはタブレットの画面を凝視した。
デブリ宙域の暗闇から、通信を遮断したまま、イカロス翼号の「ブラインドスポット(死角)」を突く形で接近してくる一隻の船影。
それは、まともな航行用ビーコンすら点滅させていない、継ぎはぎだらけの無骨な船体――海賊船「エントロピー号」だった。
「まずい……! このアプローチ角度、イカロス翼号の左舷(ポート側)に向かって一直線だぞ……!」
船体の構造的弱点である「不整合なキール」が存在する左舷。
そこへ向けて、正体不明の影が、狙いすましたかのように急速接近してきていた。
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