文化祭の終わり。◆終わり◆
手元にある輝く星形の照明。
願いを書く事をコレは待っているのだけど、書くと決めたことは自分の事ではなかった。
「願い事…『私たちの子供たちが、素敵な縁に恵まれますように。』に、しようかな。」
「じゃー、ボクは『自分の力で伯爵家の地位を更に安泰にする。』かな?」
「二人して欲張りだね。」
「欲張りはダメなんて言われてないし?」
笑いながら温室を出る。
すっかり暗くなった外の世界は、熱くなった私の頬を冷ましてくれる。
胸がぽかぽかと温かい。
私自身、自分には剣しか取り柄がないと思っていたのかもしれない。それなのに、他にもできることがある未来を教えてくれた。その未来は、私が本当に望んでいた幸せだと自然と思える。
だから、彼の子を授かり、その子供たちが婚約者を見つける年まで、健やかに成長できるように…そんな欲張りな願いを込める。
最後の文化祭だもの、たくさんの願いを込めても良いよね。
本物の星空の下、たくさんの星が落ちてきたような幻想的な中庭。そこへ、二人一緒に願いを書いた星を浮かべる。
私たちの願いは星の中に溶けて消えた。その温かな輝きは、文化祭の最後を締めくくるダンスパーティーの会場を飾る一つの光となった。その光を眺めていた時。クラウは私の手を軽く引いて揺らす。
「踊っちゃう?なんだかんだで初めてだよね、文化祭のダンスパーティーで一緒に踊るの。」
「そうだけど、ダンス苦手で…」
「だいじょーぶ、誰もボクらを見てないから。みんなパートナーしか見てないっしょ?」
答えに困っていると、クラウの先導で自然と足を踏み出していた。みんなの願いが私たちを優しく照らし、近くにいるパートナーの姿は見えても、他の参加者はよく見えない。
「本当だ…今まで参加しなくて損したかも。」
「まっ!どんなとこでも、ボクと飛び込めば怖くない!ってね。」
「うん。」
私はクラウに引っ張られるようにダンスを楽しみ、気が付けば音楽に合わせて楽しく踊っていた。クラウの手や視線…仕草から、次のステップのタイミングが伝わってくる。間違えても、彼の手が元のリズムへと戻してくれる。
クラウはいつもそうだ。
私がうじうじしてても引っ張ってくれる。私の行く先を明るくしてくれる。流されやすい私に、こっちだよ!と示してくれる彼を信じれる。
「クラウ、愛してる!」
音楽で聞こえないかもしれない、それでも私の気持ちが溢れて言葉になった。そして、私の消えてもおかしくないその思いに、気がついた彼は最高の笑顔を見せてくれた。
「ボクも、リーシュが大好き!愛してるぞー!」
私の言葉をまっすぐ受け止め、私に感情をぶつけてくれる彼が愛しい。
男装していると言い出せなかった、情けない私。だけど、それがクラウとの縁を深め、こうして手を取って最高の青春の日々を呼んだ。
卒業後の進路だって男装を気に入った聖女様の声かけがきっかけとなった。
男装は、悪い選択ではなかったのかもしれない?
そう思えるのも、私に優しくしてくれる人達に出会えたからだ。
夜空に溶けていく光の粒と、鳴り止まない音楽。
最後の文化祭を、精一杯に満喫して青春を謳歌する事ができた。
きっとこれからは…
彼と共に歩む人生を謳歌するのだろう。
【終わり】
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アルファポリスで投稿したものを全年齢版編集したこの作品。こっちが本家としようか?…と悩んでるほど、コチラを気に入ってます。
リーシュの青春を謳歌したい願いが叶った、この3年生の文化祭で完結にしましたが、続いてオマケを少し投稿します。【卒業式】と【子供達とのお話】です。こちらもよろしくお願いします。




