【オマケ】卒業式
私たちは、甘い学園生活を送り無事に卒業を迎えた。
イチャイチャする許可を貰った私は、思いっきり彼に甘えた。卒業時には「誰もが認める相思相愛のバカップル」として有名になっていた。伯爵様の耳にももちろん入ることになるのだけど、私たちを見るたび嬉しそうに微笑むだけ。
卒業パーティーも開催されたのだけど、雰囲気だけ味わうと早々に二人だけで抜け出した私達。パーティーそっちのけで人のほとんどいない校舎を巡っていく。それは今までの思い出を拾い集めるような…そんな気持ちになる。
「中庭のここ!リーシュが膝抱えてたところ。ここから始まったんだよね。」
「それを言うならあの場所はクラウが膝抱えてたところだよ?暗い校舎の肝試し。」
「あれは膝抱えてたんじゃないし!踞ってただけ!」
他人からすれば「何がそんなに面白いの?」なんて言われるような思い出一つ一つを話して回る。
今は静まり返った教室の扉を押し開け、中を覗き込む。
「ここは、クラウが男の子だと知って驚きすぎた2年生の教室。」
「今考えてみても気づくの遅すぎなんだけど。」
「みんなはもっと早く気がついてたの?」
「ボクが言われる前に早めに言ってたからね。」
「なんか悔しい。」
「何度も伝えたつもりでいたんだけどなー」
私達は、出会った頃と同じ制服で、思い出を語りながら歩く。
明日から、この学園の学生ではなくなるなんて信じられない気持ちだった。
「最初はどうなるかと思ったけど…ここに来て良かった。クラウに会えて最高に楽しい学園生活になった。」
「ふふっ、ボクにたくさん感謝するといーよ!」
得意気に言うクラウは本当にいつも通りのクラウに見える。
「スカートの制服着た可愛いクラウ、やっぱり…可愛い。」
「まーね。でも、今日でこれも終わり。学園卒業と一緒に、可愛いボクも卒業するんだ。」
可愛いクラウも卒業?その言葉が不思議でクラウをまじまじと見る。
「可愛いものは、好きなままだよ?でもさ、…ボクも変わってきたんだ。」
「?」
「不思議なんだけどさ、リーシュに「可愛い」より「格好いい」って言って貰いたいって気持ちが今は強いんだよ。」
「今も格好いいよ?」
「もっとなの!ボクは『可愛い2割、格好いい8割』くらいがいいの!」
私に格好いいって思って貰いたい…。それは、私がクラウに可愛いって思って貰いたい気持ちと同じなのかな。
「9割可愛いクラウも、今日で見納めなんだ。」
「そーいうこと。」
そう思った時に、前から思ってたことをひとつのお願いしてみることにした。最後だから…。
「ねぇ、クラウ。可愛い服を着たクラウが今日で終わりなら、ひとつやってみたいことがあるんだ。」
「なに?できることならするけど?」
「ありがとう、クラウ。それならさ。」
クラウの制服のスカートの裾を軽く持ち、前に膝をつく。
「スカートに入ってみたい。」
「…は?」
「クラウのスカートの中に入ってみたい。」
「はぁ!?聞き間違いかと思ったんだけど!?」
「聞き間違いじゃない、真剣なの。なぜならスカートの中には夢が詰まってるから。」
「初等部男子かよぉ」
いや、今時は初等部男子だってもっとちゃんとしてる…と、ぶつぶつと呟きながら、頰を赤らめて抵抗する。私はスカートを持ち上げようとすると、クラウの手が慌てて押さえつける。
「や、やめなさい!少年の心は卒業するんだよ!」
「今日が終わるまでが卒業式なんだもん!」
スカートの裾を押さえながら抵抗するクラウ。私は彼の瞳をまっすぐ見て悲願する。
「お願い」
「…変態リーシュ」
「クラウ限定で変態なだけだよ?」
「子犬のような瞳でよくそんなお願い出来るね…」
「だめ?ほんの少しでも?」
「…」
そう聞くと、頬を赤らめながらスカートの裾を軽くあげる仕草をする。その仕草に期待で目を輝かせた。
「ご…いや、1秒だかんね!リーシュ、分かった?」
「1秒じゃ何も出来ないよ」
「何もしないんだよー?」
顔を真っ赤にして、クラウが観念したようにスカートの端を握り直す。
私は逃さないと言わんばかりに、迷わずその布へと潜り込んだ。
視界がふわりと遮られ、薄暗い空間にクラウの香水の甘い香りと、彼自身の体温が満ちる。
「……あ」
「……ちょっと、リーシュ。何してるのさ、本当に」
頭上から降ってくるクラウの声は、いつもの勝ち気な響きを失って、今にも消えてしまいそうに震えている。
彼の脚に触れないよう細心の注意を払いながら、その狭い空間で膝をつき、上を見上げた。
しかし、スカートの上からクラウの手によって押さえられてしまい、見上げても彼の膝とスカートの裏地しか見えない。
完璧に大切な所が上から押さえられ見えない。これは防御力が高い。制服の布に包まれただけの状態になった。
「上、見ようとしたっしょ?」
「当たり前じゃないか」
「当たり前に許されると思わないでよね!学校だよココ!」
遮光された布地を通して、明かりがわずかに透けている。
卒業してしまえば、彼はもうこの服を纏うことはない。それは、とても名残惜しい。
「……もう、1秒なんてとっくに過ぎたよ」
クラウの戸惑う声が響く。
気づかれてしまえば仕方ない。ゆっくりと顔を出した。乱れたスカートを整える彼の手を、私は立ち上がりざまにそっと握る。
「ありがとう、クラウ。最高の卒業記念になった」
「……変態。一生言い続けてやるからね」
「『お前のお母様は、スカートの中に入った変態だよ』って?」
「自分の子供になんてこと聞かせるんだよ!!君の想像の中のボクは!!」
「へへっ、私に一生言ってくれるなら、それは大切な思い出だね」
「もー!!卒業式の思い出がコレって!!ありえないんだけど!もっとちゃんとした思い出作りに行くよ。今。すぐにね!!」
そう毒づきながらも、彼は握り返す手に力を込めた。
「明日からは絶対ダメだよ。スカートもないし……だから、スカートじゃなくてボクの胸に飛び込んでおいで」
「そっちのほうがいいね」
彼は私の額に自分の額をこつんとぶつけた。
甘い学園生活の終わり。
この後は、友人達との別れを惜しんでそれぞれに挨拶に行った。クラウはポツリと「やっと卒業らしくなった…危なかった」と言っていた。
【オマケおわり】
ここを最終回にするにはヒドすぎる…と思ってオマケになったお話。




