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可愛い君♂に恋する私は「男装」していると言い出せない。〜男の娘と男装女子はすれ違いすぎる。〜  作者: かたたな


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3年生になった二人。

 

 三年生となったクラウの生活もガラリと変わった。


 彼は貴族の子供たちに勉強やマナーを教える家庭教師を目指し、学園での学びを続けながら、幼い弟や妹を持つクラスメイトに積極的に声をかけていた。試しに短時間の家庭教師をやらせてほしい…と。


 もともと成績優秀で、気さくに誰とでも話せる彼だから「クラウだったら安心」とばかりに行き先はすぐに決まった。


 最初はもちろん大変そうだった。けれど、子供に対する接し方のコツを掴んでからの彼は凄かった。

 

 剣術の指導が厳しすぎたあまり、大人の男性が怖くなってしまったご子息。別の家庭教師を探しているところだった。見た目が可愛い彼だから、その子と打ち解けるのは早かったそうだ。交流を重ね「クラウ先生の指導なら…」と剣術も徐々に始めたらしい。


 もう一人は幼いご令嬢。

 全く勉強をしなかったそうで、家庭教師は全員拒否。見かけた途端にかくれんぼが始まるらしい。

 しかし、男性と聞いて現れた可愛い見た目のクラウに興味津々になったその子。女の子の好きなお洒落の話題からマナーに上手く結びつけ、徐々に勉強もしてくれるようになった。



 そこから話題になり、次は我が家にも!と待ち予約が入るようになったそうだ。



 最近のクラウは、更にイキイキと輝きを増した気がする。



 その結果…



 家庭教師として伺った先の家族と仲良くなって帰ってくる彼。その丁寧な指導と褒め上手な性格は多方面への好感を生んだ。


 そして、この日も見かけてしまう…

 

「ちょっと、近いんだけど。離れて。婚約者いるから距離には気をつけて欲しいんだけど?変な噂立つと困るんだよね。」

「でも、家の都合の婚約でしょう?」

「それも誤解だから。フツーにボクがリーシュを好きなの」


 可愛らしい令嬢から、アプローチされる彼。家族と仲良くやれる。そして両親の評価もいい…となれば好感度もグングンと上がる心境は分かる。結婚後の平穏が目に見えて分かるから。


 クラウの言葉は一切誘惑に負けていない。はっきりと断る言葉に安心する。態度は揺るぎない上に、思わせぶりな素振りなど一切ない。



 …でも、なんだか、気持ちがしゅんと縮んでいくのを感じる。私は静かにその場を離れた。


 


「はぁ…」



 落ち込んだ気持ちで歩いていたからか、自然とたどり着いたのはクラウに初めて話しかけられた場所。私が膝を抱えていた中庭の片隅だった。


 ここは良い感じに日陰で、木々に囲まれているから周囲から見えにくく安心感がある。試しに同じ場所に膝を抱えて座ってみる。


 暗くて狭いけど木漏れ日の心地良い場所。

 暫くの間、目を閉じて風の音を聞いていた。

 


 …




 三年生になってから。


 本音を言ってしまうと…あまり楽しくない。

 クラスが違う上に、家庭教師をしているから、クラウに会える時間は激減。


 更に追い打ちをかけるのは自分の変化。


 私の腕は、傷が増えて逞しくなっていく。


 魔力切れを起こして以来、ある程度鍛えるようにしている。何かあった時に、全力でクラウを守りたいから。今となっては伯爵様も、夫人も、クラウの妹も。マルーナさんも。私に優しくしてくれる人達を守りたい。


 昔と違い、鍛えることには納得してる。

 もう、モテる必要はないのだし。

 クラウにだけ好いて貰えれば…それでいい。

 でも、どうしても逞しくなる自分の体を見ると不安になる。



 クラウは可愛いものが好きだから。



 それでいて、クラウの周囲には可愛らしい優雅な女の子が常にいて…。屋敷に出向いた彼と優雅にお話出来る。


 ほんの少しだけ目を開けて、恐る恐る自分の手を見る。すると薄目で見たってわかる程、傷が目立っていた。


 そんな痛む心に寄り添うように柔らかい風に包まれ、葉の揺れる音に癒された。



「ここに…住んじゃおうかな。」



 できることなら、このまま木々の葉に隠れて姿を見せなくて済めばいいのに。そうしたらクラウにも失望されない。


 また、目を閉じて、このまま寝てしまおうか…と考えた。



「それは困るんだけど?」



 しかし、今一番見つかりたくない人に見つかってしまった。その声にビクリと震える。抱えていた膝を離して慌ててしまった。


 クラウはなんで、こんな見つけにくい所にいる私を見つけてしまうのだろう。


「少し姿が見えて、リーシュかな?って思ったら気になって見にきたんだ。凄い既視感なんだけど?」


 そうして不思議そうな顔をして近づいてきたクラウは日の光を浴びて余計に輝いて見える。


「眩しい。」

「ははっ、まーね。最近のボクはかっこよく輝いちゃうんだなぁ!」


 冗談っぽく言う彼だけど、それが私にとって本当だから困ってしまう。そのまま眩しいフリをして視線を逸らすと、クラウは私の顔を覗き込んできた。


「リーシュ…なんか落ち込んでる?」

「っ…。」


 うまく返事をできない。

 この気持ちを、なんて彼に伝えたら良いんだろう。考えていると、両頬をむぎゅっと強めに挟まれてクラウと視線が合うように無理矢理顔を上げられる。


「何、誰かに意地悪でもされた?誰?言ってみ。」

「そういうわけじゃ…ない。」


 圧が凄い。

 なんだかこの圧、婚約迫られた時に似てる。


 自分の女の子らしさが薄れていくこと。彼の側に可愛い女の子がいる不安。それぞれがフワッとした不安で、どう言葉にして良いかわからない。言葉にしたところで、解決しないし困らせるだけだとも思ってしまう。


 だって、彼は最善の行動を取ってくれている。


 これ以上、求められることがない。


 クラウの手から解放されると、その温もりの残った頬を擦ってからその自分の手を見た。


「ね、リーシュ。」

「?…なに?」


 名前を呼ばれ、手を後ろに隠すとクラウを見る。するとクラウはにこりと笑っている。


 すると、クラウが私の髪に触れて言った。


「リーシュ、久々に髪を結ってもいい?」

「いいの?」

「うん、ボクがしたいから。」

「ありがとう…」


 私は目を閉じ、その温もりに身を委ねた。



 ◇ ◇ ◇

明日は、完結に向けてたくさん投稿いたします!よろしくお願いします。

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