格好いいクラウ。
木剣を持ち、近づいてくるクラウ。
その姿はいつもの愛らしい雰囲気とは違い、どこかキリッとしている。
「クラウが相手役? 」
やってもらっても良いのだろうか?と考えながら聞くと、クラウはいたずらっぽく目を細める。
「ふふっ、まぁ、一回やってみよ!」
引き続き訓練場で、クラウと対峙する。窓から入る涼しい風が汗を冷やす。クラウは木剣を軽く構え、ふわっとした雰囲気とは裏腹に、鋭い目で私を見つめる。
「可愛い…」
「はっ、可愛いボクに見惚れてると痛い目みるよ」
私は深呼吸し、木剣を握って踏み込む。相手の剣を落とし、押さえ込むだけ。決してクラウを傷つける目的ではない。だから思いっきりやろうと意気込んだ…なのに。
剣がぶつかり合う音が響く。
だが、クラウの動きは予想以上に読めない。クラウの剣を捕らえたと思ったのに私の剣を軽く受け流し、くるりと剣を回して私の手元を狙う。
次の瞬間。
私の木剣が地面に落ち、クラウの手が私の腕をがっちり捕まえた。
「はい、完了~!」
クラウがニヤリと笑う。
さっきクラスメイトに押さえ込まれた時とは全然違う。「今だ!」と思ったら終わってた。クラウの滑らかで自信に満ちた動き。痛みもなく、何があったかも分からず終わってる。
「そんな…」
「ははっ、ボクに負けて悔しい?」
「…クラウ、可愛いだけじゃなくてスゴク格好いいってみんなにバレちゃうよ…!」
抑え込まれているのもあり、顔が熱くなる。真っ赤になって呟くと、クラウは一瞬ポカンとした顔になった。そして、すぐにニヤニヤと笑い出す。
「ふっ、あははっ。それなら、みんなにボクのカッコいい魅力がバレる前に、剣を一度でも落としてみなよ!」
その挑発に、闘志がメラメラと燃え上がる。可愛くて格好いいなんて女性が見逃すはずがない!!ただでさえ彼はモテるんだ。更なる魅力が見つかってしまう前に、ここで食い止めなければならない。
「絶対落とす!」
「やってみー♪」
そうして暫くは訓練場で特訓を重ねた。クラウとの特訓は不思議と楽しくて、教官とは違う優しい教え方。教官の指導は「悔しいーー!まだまだ!」となるのに、彼の教え方は「どんどん上手くなってる?もっとやりたい!」と、やる気が溢れてくる。
「リーシュ、休憩」
「うん」
次はどうしたら…と考えて剣を構えていたら、突然休憩の合図がはいる。構えた木剣を下ろすと、疲れがドッと押し寄せた。喉もカラカラだ。
クラウの方を見れば、さっさと荷物置き場に行って水を飲んでいた。そして手招きされて隣に座ると水を分けてくれた。爽やかな果実の香る水で、とても美味しい。
「クラウ、強いね」
「…ボクさ、人を傷つけるのが怖くて、さっきみたいに相手の剣を落とすとか、無効化することで、だましだましやってた時期があったんだ。あれだけは得意なの。」
「驚いたよ。力を入れて持ってるはずの剣がすいって落ちる。」
訓練場の片隅で二人、汗を拭いながら水筒の水を分け合う。私は水筒を渡しながら、ふと呟いた。
「そういえば、クラウ…さっきすごい睨んでなかった?」
それはクラウが来るまで、捕縛訓練に付き合ってくれた人に対して向けられた眼差し。少しピリついてた気がする。
その話をすれば、クラウの手がピクリと止まり、彼は水筒を置いてちょっと拗ねたように唇を尖らせた。
「…そりゃ、睨むよ。リーシュがあんな風に男にガシッと押さえ込まれて密着してたら…ムカつくし!」
「やきもち?」
「やきもち!」
クラウが頬を膨らませて言うけど、その顔があまりにも愛らしくて、私は笑ってしまう。クラウは恥ずかしそうに目を逸らし、咳払いをする。
「んんっ、じゃあ、ほら、もう一回練習!他の奴にまた触られないように早く覚えてよね。」
「うん、クラウが教えてくれるなら早くコツを掴めそうな気がするよ。」
そうして、何度もクラウと練習を繰り返し、相手の動きを見て、観察して…ついに私はクラウの木剣を落とすことに成功した。カランと地面に落ちる木剣。二人で落ちた木剣に視線を落とし、顔を見合わせた。
「やった! クラウ、できた!」
私がはしゃぐと、クラウは嬉しそうに笑い、汗を拭いながら近づいてきた。
「やったじゃん、 さすがだよ。もうボクより上手くなってる。」
その言葉に、胸が温かくなる。気がつけば周囲に人がたくさん集まっていて私達を見ていた。
私達の剣術そのものも注目を集めたようだけど、一番はやはりクラウ。
普段は女の子のような装いで可愛らしい彼が、動きやすい服装で髪をひとつにまとめて剣を扱う。
その姿は珍しく、皆を驚かせるもの。
誰が見てもかっこよかった。
◇ ◇ ◇




