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可愛い君♂に恋する私は「男装」していると言い出せない。〜男の娘と男装女子はすれ違いすぎる。〜  作者: かたたな


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クラウの新しい悩み。


 突然呼ばれた私の名前。

 呼ばれたからそちらに視線を向けると「きゃー! 」と女子生徒たちがキャッキャと騒ぎながら、笑顔でどこかへ走っていく。彼女たちの弾けるような声が、食堂の喧騒に溶けていった。


「なんだろう?」


  モグモグとサラダを食べながら呟くと、クラウがジトッとした目で、フォークを軽く揺らしながら教えてくれた。


「あー、あれさ。聖女様不在の時に、赤いマントを身につけた生徒たちがかっこよ過ぎるって話題になってんの。功績者として名前が貼り出されてたっしょ?『あれは格好いい学生名簿だ!』って女の子の間で話題になってる。」


 ってことは、先輩達もキャーキャー言われてるのかな?と考えたら、困ってる顔が容易に想像できて面白かった。婚約者一筋の先輩だけど、きっと婚約者も気が気じゃない。

 彼はパクリとサラダを口に運び、どこか呆れたように言葉を続けた。


「ボクは…ずっと不安でたまらなかった。君が怪我しないかって。しかもボロボロのマントだけ何回も帰ってくるんだよ?心臓に悪いったらありゃしないよ」

「何度も投げたからね」


「マントをあんなに雑に扱う人は初めてだよ。しかも日が経つにつれ、健気に働く住民に魔物を投げる学生がいるって苦情が入ったらしくてさ。」

「ちょっと煩かったから」


「そうだよね、君だよね?そんな事が出来る人間は君しかいないよ…まったく。苦情入れてきた人間を見て、みんな察したけどさ。」

「察してもらえて助かる」

「それも含め、色々とリーシュが心配だった」

「ふふっ、心配してくれる婚約者がいるなんて…幸せだな。」


 食堂の喧騒の中、二人だけの甘い時間が静かに流れた。クラウの指が、テーブルの上で私の手にそっと触れ、その温もりに心が溶けそうになる。


「でも、私が女だってみんな知ってると思っていたけど…今でも『リーシュ君』って言われるのが不思議…」


「それね。可愛い姿は1日だけで、次の日から男装に戻したじゃん?だから、『クラウの仕掛けたドッキリの可能性がある。』とか言われてんの。」

「はははっ」

「ボクが実は女説まで出回ってる。」

「クラウは可愛いからね。」

「まーね!」


 私達の姿が、思っている以上に周囲に混乱を与えているようだった。そんな面白い話の後なのにクラウの表情は浮かない。


「ボクは…何が出来るのかな?」

「なんでもできるよ?」

「…できないよ。君ほど凄い人間にはなれない。それなのに君の隣を陣取ってる。」


 私から見たらクラウは凄いのに、それが伝わらない。


「私がもっと魔物を狩ってくる必要ある?」

「なんでそーなるのさ。リーシュが危険な目に遭うのは嫌なんだけど。」

「クラウは凄い!って伝えたい。山ほどの魔物の素材や核より価値あるって。狩人のプロポーズにもあったでしょ?役に立つって。」

「もー。それじゃどんどんリーシュが凄くなっちゃうじゃん。ボクは、胸張って君の隣に立てる人間になりたい。」


 はぁ、とため息をついて真剣な眼差しで私を見た。


「ねぇ、リーシュ。君はボクに何か求めるものはある?」


「ずっと一緒にいたい。」


「それは決まってることだから、他でお願いしまーす。」



 私達がずっと一緒なのは決まっていること。そう簡単に言ってくれるのがどれ程私を喜ばせて、元気にして、やる気を出させるか。彼はその凄さに気づいてない。


「難しいな…私は魔物を仕留めれば核の数や大きさで頑張ったよ!褒めて!ってクラウに言えるけど、クラウの凄さは目に見えるそれがないから。伝わらないのが残念に思える。こんなに凄いのに…。」


 悩みながら美味しいチキンをパクりと食べる。


「このチキンが、どんなに美味しいって言っても、食べてない人には私の感動が伝わらない。それと同じ。」


 ひと噛みひと噛みを味わって食べる。その美味しいチキンはサラダにも合う。一緒に食べたら別の美味しさがある。


「このチキンの凄さをどう伝えたらいいのかって言ったら。一緒に食べるくらいしか方法がない。でも、クラウと一緒にいる時間は、私だけが独り占めしたい。誰にも分けたくない。」


「チキンが美味しいって。それ普通のチキンっしょ。」


 チキンを注文していないクラウに、私はチキンを切ってフォークに刺すとクラウの口元までビシッ!と差し出す。


「分かってない!ほら、食べてみて。」

「…うん。」


 小さく頷いて、私のフォークからチキンを食べたクラウ。するとパッ!と表情を明るくした。


「ん!?美味しー♪」

「だよね!ハーブの香りが絶妙なの!」


 クラウは、私の差し出した一口のチキンを美味しそうに食べてから、丁寧に自分の料理を切り分けて一口分を私のお皿に乗せてくれる。その所作は同じ学生とは思えないほど優雅だ。


「クラウは食べ方も綺麗。」

「まーね。幼い頃から習ってきたから…。」


 すると、クラウは手を止めた。そしてフォークとナイフをそっとお皿に置く。


「クラウ?」

「ボク、少し…見えたかもしれない。まだ確信は持てないけど。」



 そうして考えを巡らせるクラウを、美味しいチキンを食べながら見守った。




 ◇ ◇ ◇

明日の夜完結です!今日も4話投稿予定です。よろしくお願いします。

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