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可愛い君♂に恋する私は「男装」していると言い出せない。〜男の娘と男装女子はすれ違いすぎる。〜  作者: かたたな


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婚約してからすること。



 教科書とノートを鞄にしまい、二人で並んで学園の廊下を歩く。女子制服のスカートが歩くたびにふわりと揺れ、慣れない感触にまだ少し落ち着かない。


 しかし、隣を歩く彼の気配が心地いい。


 学園の敷地を抜け、寮へと続く石畳の道を歩く。夜風が涼しく、木々の葉がそよぐ音が静かな夜に響く。星がちらほらと瞬き始め、月明かりが道をほのかに照らす。私はクラウの横顔をチラリと見ながら、胸に浮かんだ思いを口にする勇気を絞り出した。


「クラウ…なんかキスが、こう、大人になったというか…」


 指をそわそわと動かしながら答えを待つ。

 だって、文化祭ではどちらが目を閉じて待つか?というのすら二人で話しながら進めていた。それなのに、婚約したあの日とか、さっきのキスは…。あの時と差がすごいと言うか…まるで経験者のような…。


 クラウの足音が一瞬止まり、隣から小さな笑い声が聞こえる。


「なにソワソワしてんのさ。リーシュが、ボクにもっと凄いキスしてきたの覚えてない?ほら、医務室で」

「…私?」

「うん。あんなもんじゃなかったよ?」

「私が??まさか。」

「嘘じゃないしー。でも、アレは魔力回復の為のものなのでノーカウントです!」


 クラウの言葉について考える。本当に本当だろうか?私は彼の仕草を見逃さないように目を細め彼を見つめた。クラウともっと凄いキス??


「もっと凄いの…さっきよりも。」

「そこ、想像しない!」


 まるで先生みたいに言う。

 そして、ふぅと息をついてから、すぐに柔らかく微笑んでくれる。


「キスとかもそうだけどさ、せっかく婚約者になれたし。恋人っぽいこと、たくさんしよ。もうすぐ高等部三年生になるし。残り少ない学園生活を思い出でいっぱいにしよ~よ。」


 その言葉に私は足を止めクラウを見た。まさか彼がそんな大胆な事を言うなんて。


「ぇ、いいの?」

「ん?いいけど…どした。」

「その、恋人らしいこといっぱいって…つまり、いっぱい肌を重ね」

「わーーーーーー!!」


 つまり、結ばれましょうってこと?と思い言葉にしようとした。しかしソレは目の前で両手をブンブン振って叫ぶ彼の言葉に遮られる。


「なに!いきなり!なに言おうとしたし!エッチ!!」


 顔を真っ赤にするクラウはやはり可愛い。


「違ったんだ。私の故郷だと恋人になった人たちは毎日一回はするって言ってたから。」

「毎日!?お盛ん過ぎるんだけど!」

「子供5人は一般的な地域だから。」


 笑って話すと顔を押さえてキャーとクラウが照れている。


「あのね、王都では恋人と楽しめるスポットいっぱいあるんだから!!デートいっぱいしようって意味で言ったの!」

「そっか。王都の人はしないんだ。」


 私が言うとクラウがピタリと止まる。


「婚約者なら…ま、全くしなくは、ない。最近は…そーゆーの緩いって言うし?」

「どういう時にするの?」

「…………そういう雰囲気の時?」


 そういう雰囲気の時。それは…


「今はそういう雰囲気に入らない…って事?」


 クラウの顔が一瞬固まった。私の言葉が彼の心に小さな波紋を広げたようで、普段の軽やかな雰囲気とは少し違う、どこか戸惑った表情が浮かぶ。


「え、リーシュ、今って…そういう雰囲気って思ってるわけ?」


 クラウの声は少し上ずっていて、耳までほのかに赤くなっているように見える。空に輝くそれを指差して言う。


「私達はさっき教室でファーストキスをして、月や星がきれいな夜空を眺めて寮まで歩いている。ここからクラウの部屋に行っても不思議ではない。」

「ボクの部屋で続きしようとしてるっしょ…」

「クラウのお部屋に行きたい。」

「真っ直ぐにも程があるんだけど。」

「じゃあ、クラウのお部屋で勉強教えて?」

「本当に勉強する気ある?」


 うーん、と凄く悩むように渋い顔をするクラウ。そして、私の表情を見た後に「はぁ」とため息をついた。


「本当に勉強するならいいよ。」

「やった!」

「でも、今日は遅いからまた今度ね。」

「今度かぁ。」


 クラウと私の足音が静かな夜に響く。

 クラウの「今度ね」という言葉に、なんだか胸が少しだけモヤっとする。いつ実現するかわからない「今度」って、なんだかふわふわしたもので、ほんの少し寂しくなる。


 ◇ ◇ ◇

今日中にあと3話投稿予定です!

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