スケベしかいない。
クラウは腕を組むけれど、今言った事に罪悪感があるように表情を歪めた。そして何か閃いたようでこちらを見る。
「リーシュが『そのままがいい』って言うなら、明日からボクが男の制服着る。リーシュの隣にしっかり立って、男どもを威嚇してやる。」
口調は悪戯っぽいのに真剣で。その光景を少し想像してみた。クラウが男の制服で、キリッと私の隣に立つ姿。それも良いかもしれない。婚約発表の時のようなビシッとした姿を思い出した。
「クラウなら男子の制服も着こなせるね。」
私が笑うと、クラウの表情がパッと輝く。でも、すぐに言葉を続けた。
「でも…私が明日から男装に戻るよ。」
「え、いいの?無理してない??」
クラウが不思議そうに首を傾げる。私は少し照れながら、そっと言葉を紡いだ。
「男らしいクラウを知っているのは、私だけでいたいかなって…」
その言葉を聞いた彼の顔がカッと赤くなる。彼の瞳が大きく見開かれ、すぐにいたずらっぽい笑みを浮かべる。教室の空気が甘く熱を帯びた気がする。
「リーシュが…可愛いこと言う。破壊力がエグい」
クラウの声は軽やかで、でもどこか低く、耳元で響くように甘い。教科書を閉じ、クラウがそっと私の手を握る。彼の指先が私の手に絡み、温もりがじんわりと伝わる。二人の距離がぐっと縮まる。彼の長い可愛らしい髪が私の頬をかすめ、クラウの香りがふわりと漂う。
「ほんと、失敗だったな。ボクもリーシュの可愛い姿、独り占めすればよかった。」
クラウの指先が私の手の甲をそっと撫で、ゆっくりと動く。
「可愛いものは、みんなで『可愛い』って共有するのが楽しかったのに。独り占めしたいなんて初めて。」
「クラウ…」
私が名前を呼ぶと、彼はそっと私の頬に手を伸ばした。彼の指先が、柔らかく私の肌に触れる。私は思わずキュッと目を閉じると、クラウの息遣いが近づき、最初は軽く、羽のように私の唇に触れた。
一瞬のキスは、柔らかく、甘く、心臓をドキンと跳ねさせる。
コレが…一応ファーストキスになるのだろうか?と言おうとしたけど、その隙はなかった。
彼の唇が再び私の唇に重なり、今度は少し強く。クラウの手が私の頬を包み、指先が髪をそっと梳く。
「んんっ…」
私は小さな声を漏らし、彼の肩に手を置く。心臓が…大変な事に。クラウの唇の柔らかさと熱さに全身がゾクゾクと震える。私の心を完全に奪ってしまうようなキスだった。
クラウの指先が私のリボンを解き、ボタンを2つほど外され、少しだけ胸元が涼しく感じる。クラウの指先が、ゆっくりと首筋に降りていく。
「今日の武術の授業でさ。男たちの視線が酷かったな。リーシュの揺れる胸見て、完全に鼻の下伸ばしてたし。」
クラウの声は低く、嫉妬を滲ませ、耳元で囁くように響く。
「男装しなくていいと思ったら、胸を押さえるやつ、忘れちゃって…そのせいで…。私の揺れる胸見たら走り込み!って謎ルールできて、私以外みんな追加で走らされた。」
「『あれは罠だ!!どうしても見るだろ!』…とか言ってたね。武術選択したやつってスケベしかいないの?」
「クラウは見てくれないの?」
「見てほしーの?」
「クラウになら?」
「ホント、スケベしかいないの!?」
クラウが呆れたようにため息をつき離れる瞬間。片手で髪をかき上げ、夕陽に照らされた顔が少しだけ照れてるようにも見える。普段の愛らしいクラウとは違う、男らしい表情と仕草を目で追ってしまう。
このクラウを知っているのは、私だけ。その思いが、胸の奥で強く響き、明日から男装に戻ろうと改めて決意した。
私は衣服を整え、なんとか心臓の鼓動を落ち着けようとする。クラウも教科書を手に取り、勉強に戻るけど、彼の頬はまだ赤く、瞳はどこか照れくさそうに揺れている。
「問題!間違えるごとに、ちゅーしちゃうんだからね!覚悟してよ!」
クラウが照れ隠しでもするように言う。
「それならご褒美がいいな、間違えたくなるから。」
「そこは…ルールをそのままに、たくさん間違えてちゅーしようとか思わないんだ?」
「だって、クラウに褒めて欲しいから。」
少し考えて真剣にそう言うと、クラウは目を丸くし、すぐに顔を真っ赤にして机に突っ伏した。
「可愛い過ぎて心臓が持たないんだけど…!」
さっきまで深くキスしてきた人物が急に初心になった。私は突っ伏したクラウの髪をそっと撫でると、彼の肩から少し力が抜けた気がする。
甘い余韻に浸りながら、クラウの復活を待った。
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