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可愛い君♂に恋する私は「男装」していると言い出せない。〜男の娘と男装女子はすれ違いすぎる。〜  作者: かたたな


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婚約してからの学園。


 公開プロポーズが成功し、楽しい休日も終わり。クラウと共に朝を迎えたこの日は、婚約してから初めての登校日だ。


 噂は広まり、学園は熱気に包まれていた。


 クラウが日頃、公言していた「可愛い女の子が好き」という言葉が皆を困惑させている。


「え? クラウがリーシュ君の猛アプローチで婚約!? リーシュ君って…男だよね!?クラウ目覚めたの!?」



 教室や廊下でそんな会話が飛び交う。

 クラウの好みを知る皆にとって、私との婚約は衝撃だ。男装を続けていた身としては、やはり複雑な気分。


 その空気のなか。

 クラウに借りたスカートの制服を着て、彼の隣を歩く。隣にはニコニコとご機嫌なクラウの姿があった。


 スカートの裾がふわりと揺れ、慣れないリボンが首元でくすぐる。鏡の前で何度も確認したけど、男装用の制服に慣れた身体には少し落ち着かない。だけど、この制服はクラウのお下がりで、彼の香りに包まれるこの状況は、私の胸を幸せでいっぱいにする。


 クラウの調子はいつも通りに戻り、制服も髪型も女の子のように可愛い。


 堂々と可愛い制服を着られて嬉しい。


「誰!? あの美人!!」


 クラスメイトたちの驚きの声が一斉に響き、教室がざわめく。恥ずかしくなり、意味もなく髪をいじってしまった。視線が一気に集まり、居心地が悪い…。


 そんな私をよそに、隣にいたクラウが胸を張り自慢げに笑った。


「ふふん、ボクの婚約者だもんねぇ~!」


 その堂々とした宣言に、教室がさらにどよめく。


「まさか、リーシュまでクラウの手によって男の娘にされたのか!?」

「なわけないでしょー!女の子だったの!ボクが見つけた原石!それを輝かせたの!」


 おおー!!と賑わった教室。女性だったことをクラウがサラッと言い「スゴいもの見つけた!」というテンションで話し、クラスメイトと騒ぐものだから、私は性別を隠していた負い目からあっさり脱出していた。


「やっぱり付き合ってたんじゃーん!」

「ずっと一緒いて仲良かったもんな。」


 茶化すクラスメイトの言葉に、クラウは手をヒラヒラさせて言う。


「でも、ボクがリーシュを好きって気がついたのは文化祭の少し前あたりだし。それまでは本当にトモダチ。隠したり嘘は言ってないよー?」

「遅くない?」

「絶対もっと前からだって。」


 クラウが会話の中心で、クラスメイトとわちゃわちゃ会話をする。こうしてしばらくは私達の婚約で話題は持ちきりだった。



 その日の放課後。



 教室の窓から差し込む夕陽が、机にオレンジ色の光を投げかける。静かな教室に、私とクラウの二人だけが残っていた。私はクラウに借りたスカート制服のまま、隣に座る彼に勉強を教えてもらっている。


 放課後に教室で勉強を教わるなんて…青春だな!


 私の心はウキウキとしていた。教科書を広げ、ペンを手に説明するクラウの声はいつもより少し硬い。ペンが紙を擦る音と、時折響くクラウの優しい声が、教室の静寂に心地よく響く。


 すると、教室の外から騒がしい声が聞こえてきた。廊下を通りかかった男子生徒の声。廊下から私たちの姿が見えたようだ。


「おい、可愛い子がいるぞ!」

「え、誰だ? 名前何て言うんだろう?」


 その囁きに、私はハッとして顔を上げる。またクラウ目当ての奴が来たな…と男装をしていた頃の癖で反射的に席を立とうとした。だけど、クラウの手が私の腕をそっと掴む。不機嫌そうな彼の瞳が、静かに私を見つめる。


「リーシュ、いいよ。ボクが言うから。」


 クラウは立ち上がり、教室の扉に近づくと、覗き込む男子生徒たちに素っ気なく声をかけた。


「勉強中だから、あっち行ってー。集中できないしー。」


 その声はいつものキラキラした調子とは違い、どこか冷たく、はっきりしている。男子生徒たちは「クラウ意地悪するなよー」「少しだけあの子と話せない?」と言う彼らに「だーめ。」とだけ言って扉を閉めた。


 クラウは椅子に座り直し、教科書を手に持つけど、唇を尖らせ、明らかにふてくされている。瞳が不機嫌そうに曇っていて、私はペンを止めて彼をじっと見つめた。


「クラウ不機嫌だね。」

「リーシュが男装しなければ、こうして仲良くなる前に、どっかの男に持っていかれてたんだろーなーって思って。制服貸したの失敗だったなってさ。嫉妬でまたおかしくなりそう。」


 ジトッとした眼差しで私を見つめてくる。その表情が、なんだか愛らしい。おかしくなるっていうのは、私に婚約の話をしたあの時の精神状態のことだろうか?あれもあれで嬉しかったけど、クラウが不安になるのは嫌だ。


 すると、突然教官のように腕を組み、少し固い言葉がクラウから飛んできた。


「ボクの婚約者は、今日、男にモテすぎだと思います。明日から男装に戻ってください。」


「可愛いって言ってくれたのに?クラウは可愛い方が好きなんじゃないの?」


 クラウはぐっと苦い顔をしている。


「可愛すぎだから…言ってんの…。リーシュの潜在的な可愛さと、磨きあげすぎた自分の腕前が憎い。」


 クラウの声は小さく、でもどこか切実で、頬が真っ赤に染まる。私は思わず笑みをこぼした。



 ◇ ◇ ◇


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