彼の気持ち。
それは、物語の挿絵のように…はたまた美術館へ飾られる絵画のように美しい光景だった。
私の前に、騎士のように跪く彼は誰よりも格好いい。
「ねぇ、リーシュ。」
「なに?」
クラウが意を決して口を開く。
「ボクは…女性が恋愛対象なのに、男でも良いって思うほど、…リーシュが好き。」
「クラウが…私を?」
「うん。…好き」
家のためではなくて?と考えるとまだ確信が持てない。そんな半信半疑なのが伝わったのか、更にこちらへ身を乗り出して言葉を続けてくれる。
「リーシュを押し倒して、まずは体から落とそう!って強行手段に出るほど…そんな必死に繋ぎ止めようとしてしまうほど好き。」
「…押し倒す…って付与魔法失敗したときの?」
「リーシュのせいにして、卑怯な行動に出た。それはごめん。でも、そんぐらい好き。返り討ちに合ったけど。…好き。」
押し倒すと言っても、相手は私。女とはいえ、強化魔法を使って逃れることも簡単だったと思う。武術の授業でも成績が良いのを知っている彼だから…そこも考慮しての押し倒しなのだろう。
「返り討ち…クラウを抱えて先生の所へ行こうとしたのが?」
そう聞くと、ふと視線を逸らしてほんのり頬を赤くして言ってくれた。
「あれは焦った。鍵閉めてて良かった。って…そういう話がしたいんじゃなくて…ボクはそれほどリーシュが好きって話!!」
勢いにみるみる頭が熱くなる。好きの言葉を貰うほどに私の心が喜びで満たされていくのにアワアワとどうしたらいいか分からなくなる。
私も『好き』と伝えたい。
でも、喜びからなのか震えてうまく口が動かない。いつ言えばいい?とタイミングを見失ったような感覚で、言葉も何が最適か浮かばない。完全にテンパっていた。
そんな静かに聞く私に、懺悔するように彼は言葉を続ける。
「ボクは君に助けてって…卑怯な婚約の迫りかたをした。自分でも…好きになるとこんな卑怯なやつになるなんて知らなかった。」
そう言って私の手を大切な物を握るように優しく包む。
「自分のやり口が卑怯だと理解した上で、それでも君を手放すなんて考えられない。このまま卑怯でいたら君が手に入るならずっと卑怯者でいる。優しいなんて、リーシュに言って貰える資格なんてないんだ。」
「そんなこと…ないよ…」
なんとか言葉を絞り出す。
その指先は、今にも無くなりそうな何かを掴むように切ない。自分に危害を加える魔物にさえも傷つけられない彼が、ここまでしてでも私を求めてくれる。
それは憧れていた、どのロマンチックなプロポーズより遥かに越える喜びがあった。
私は…、私の気持ちは決まってる。それでも確認がある。
「…クラウの家にとって私みたいな人材が必要だから、こうして口説いてる…わけじゃなくて、ちゃんと気持ちがあるって…思って良いってこと?」
「…そんな仕事みたいな感覚で婚約を了承してたの?」
「あの時は、そういう言い方していたから」
「まぁ…確かにそうだけどさ。じゃあ…やっぱりボクを助けるって気持ちしか今の君にはない?」
クラウは少し残念そうにこちらを見る。けど、そんなはずはない。
「ち、違うよ!!」
つい、声が大きくなってしまい、クラウが驚いたように目を丸くする。私がこんなに感情をむき出しにするなんて無かったから。
でも言葉が浮かばない。
ここまで、色んな言葉を重ねて『好き』と言ってくれた彼のように、思いを伝える言葉が見つからないんだ。
語彙力が無い!!
「そんな気持ちで婚約を了承なんてするわけないよ。」
「リーシュ…」
感情が溢れて、声が震えた。
私は、そのまま彼の腕を掴み走り出した。
こうなったら『先人の知恵』を借りるしかない!!!!!
◇ ◇ ◇
間違えて投稿しちゃった…取り下げ方が分からない(泣)明日の夜2話になります。スミマセン。




