見えた未来は?
マルーナさんの相談は分かった。
しかし、どうすれば?と考えた時、ゼインが突然立ち上がり、明るい声で言う。
「よっし、じゃあその占いとやらで、俺の未来を占ってみてくれ! マルーナちゃんに占ってもらったことないからな。何か分かるかもしれないぜ。」
マルーナさんは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに頷いた。
「…やってみましょう。」
彼女は目を閉じ、深く息を吸った。長い睫毛が微かに揺れ、静かな集中が部屋を包む。彼女の美しい横顔を眺めていると、次の瞬間、目がぱっと開き、頬がほんのり紅潮した。
「何か見えた?」
私がそっと尋ねると、彼女は少し戸惑ったように唇を噛んだ。
「…裸のゼイン様が…見えました。」
「え?」
私は思わず声を上げ、ゼインを見た。ゼインはいつもの悪戯っぽい笑みを浮かべることなく、真剣な眼差しでマルーナさんを見つめていた。
「俺はどこで裸だったんだ?」
「ここの王都の街中で、でございます。」
王都の街中で全裸に!?
変態じゃないか。
そう思うけれど、兄は何か深く考えて立ち上がる。
「それは、まずいな…」
私もそう思う。
兄がそんな変態だったなんて。
しかし、兄の真剣な表情に言葉を呑み込んだ。
すっかり狩人の表情をしている兄に、恐る恐る聞いてみる。
「何か分かったの?」
「おそらく液状の魔物だ。俺が服を脱いで狩りをするのは、予想外にソイツに出くわした時だからな。」
「あー。」
液状の魔物は、水のように、いろんな所へ吸収されるように移動する。水分を含みにくい専用の防具でなければ、衣服に吸収され魔物に包まれてるも同然の状況となってしまう。全裸でも危険だが、全裸の方がマシ…という相手。
良かった、兄は街中で全裸になる変態ではなかった。いや、液状の魔物が出れば全裸なのだが。
「その魔物の発生源を特定する必要があるが…見えた未来が一番短い者は分かるか?」
「それは…私、です」
「なら、この屋敷に居るんだろうな…」
ゼインは部屋を見回してすくっと立ち上がる。
「罠を仕掛ける。この屋敷に俺以外の人間は避難させてくれ…できるか?」
屋敷にゼインだけ?
初対面の人間を屋敷に残すなんて許してもらえるだろうか?不安が胸をよぎるけれど、マルーナさんが決然とした表情で立ち上がった。
「私が説得してまいります!」
そうして走り出したマルーナさん。
それから、早かった。
マルーナさんは家族を説得し、ご家族も使用人も都内の宿泊先へ向かった。マルーナさんの普段からの行いが良いからなのだろうか…みんな彼女を信頼していた。そうして順調に物事が進み、兄をマルーナさんのお屋敷に残したまま、私の寮の部屋へ移動する。
兄に「マルーナちゃんは心細いだろうからお前が側にいろ。」と言われ、私の寮の部屋でお泊まり会をする事となった。
「本当に、ありがとうございます」
「いいよ。」
ウキウキと部屋を片付けながら、寮のベッドを彼女に譲った。私は今夜は寝ずに彼女の傍で護衛をするつもりだった。そうしたらマルーナさんも眠れないから…と、たくさんお話をした。
窓から朝日が差し込むのを確認して、すやすやと寝ているマルーナさんに視線を向ける。私は彼女が心配で夜通し見張りをしていた。死を覚悟していた彼女が目覚めたら、どんな言葉を言うのだろう。考えると、早く起きないかな?なんて考えてしまう。
「友達とお泊まり…楽しかったな。」
不謹慎だけど、とても楽しいお泊まり会で「青春だな…」と楽しい時間を噛み締める。
そうして、起きたマルーナさんと笑顔で「おはよう」と笑った。
朝の身支度を整えて、部屋の確認をする。
「忘れ物ない?」
「はい。一晩お世話になりました。」
「いいよ。楽しかったから。」
「私もです。」
そんな会話をしながら、二人で部屋を出る。鍵をかけて「さあ、屋敷の様子を見に行こう!」となった時…ふと、誰かがいる気がして、そちらを見た。
しかし、誰もいない。
見られていたとしても何か悪い事をした訳じゃない。むしろ良いことをしたから、特に気にせず寮を出た。
◇ ◇ ◇




