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可愛い君♂に恋する私は「男装」していると言い出せない。〜男の娘と男装女子はすれ違いすぎる。〜  作者: かたたな


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マルーナさんの相談。




 婚約を了承し、盗み聞きをした後。ゼインの拘束を二人で解き終えた頃に、医務室の扉が静かに開いた。


 先生が私の様子を確認するために、忙しいのに来てくれた。先生は私の顔をじっと見つめ、優しく微笑むと「大丈夫、問題ないよ」と太鼓判を押してくれる。


 私はほっと胸を撫で下ろし、ゼインとマルーナさんと共に「これで帰れる♪」と弾んだ声で話していた。


 そこへ、クラウがひょっこりと姿を現した。


 彼の顔を見てれ嬉しくなったのも束の間。私の体調を確認すると「手続きがあるから。」とさっさと伯爵様と何処かへ行ってしまう。


「リーシュ、本当に婚約者なのか?あの態度」


 ゼインが眉間にシワを寄せてクラウの去った扉を見る。


「色々…あるんだよ。きっと」

「一発、引っ叩いて来ましょうか?」

「ははっ、だめだよ、マルーナさん」

「婚約者に最大限の愛を伝えられない殿方は婚約者失格ですわ」


 私の言葉に落ち込みようが隠しきれなかったのか、マルーナさんがらしくない事を言い出す。それが少し面白かった。だけど、彼が私に伝える愛は無いから…これで良いんだと思う。


「マルーナちゃんになら一度引っ叩かれてみたいな」

「ゼイン、気持ち悪いよ」

「それはそれでご褒美だから意味がないって言ってるんだ」

「ご要望が御座いましたら、いつでも構いませんわ」


 手をヒラヒラと振って、叩くそぶりを見せるマルーナさん。その様子に一瞬目を輝かせるゼインはやはり気持ち悪い。


 そんな兄は置いといて…「更衣室で着替えてくる」と一声かけてから部屋を出る。病衣から着替えることにした。更衣室では病衣を脱ぎ、学園に置いてあった武術用の衣服に着替える。もともと着ていた灰に汚れた制服は、学園から新しい物を支給してくれるらしい。ありがたい。


 袖を通せば柔らかい素材で、動きやすいその服。男女兼用でゆったりとした作りだ。


「この服、男女兼用でよかった…」と呟きながら、鏡の前で軽く身を整え、医務室に戻ると、廊下まで響く賑やかな笑い声が耳に飛び込んできた。ゼインとマルーナさんは、いつの間に仲良くなったのか??私がノックしてから入ると、笑顔で「お帰りー」と迎えてくれた。


 そして、ふと気になったことを聞いてみる。


「ゼインはいつ帰るの?」

「何だよ、早く帰って欲しいのか?」

「だって…私だってマルーナさんとゆっくり話したい。もっと仲良くなりたいのに。」


 ムッとして眉を寄せると、兄が笑った。その瞬間、つい故郷にいた頃の兄妹らしいじゃれ合いが出てしまった!?と少し恥ずかしくなる。

 慌てて平静を取り戻そうとすると、マルーナさんが柔らかな笑顔で私を見つめていた。


「俺は今しかマルーナちゃんと話す機会がないんだ。リーシュが遠慮してくれ。」

「えー…」


 ゼインが悪戯っぽく肩をすくめた。不満の声を漏らすと、マルーナさんがくすくすと笑い出した。


「ふふふ、私をめぐって争わないで。」


 そんな軽いやり取りを交わすけれど、私はマルーナさんとの約束が気になっている。


「だって…マルーナさん相談があるって…」

「覚えていて下さったのですね。」

「じゃー俺も聞く。悩める女の子の役に立てる男だぜ、俺は。」

「それは、マルーナさんの相談内容次第だけど。」


 マルーナさんに「どうする?」という意図の視線を向けると頷いてくれる。


「お二人に、相談できるなら心強いですわ。」

「よっし、決まり!」


 こうして、寮に帰るのではなく、マルーナさんの王都にあるお屋敷に行くことが急遽決まった。


 お友達のお家…

 

 そう思うとドキドキする。学園に来てからお友達の家に呼ばれ、入るのなんて初めてだった。

 マルーナさんの屋敷に足を踏み入れると、静かな豪奢さに圧倒される作り。さすが貴族!と出そうになった言葉をなんとか飲み込んだ。ゼインは素直に「スゲー」と言っていた。


 田舎者だと思われるでしょ!田舎者だけど!


 キョロキョロする私達をマルーナさんは母親のような温かい眼差しで見てくれる。


「執事長、彼らは私の友人です。丁寧なもてなしを」

「かしこまりました。お嬢様」

「執事…初めて見た…マルーナさん、メイドさんもいますか?」

「ふふっ、たくさんいますよ?ほらあちらに」


 マルーナさんが視線を向けると、メイド達が綺麗な礼を見せてくれる。


「わぁ!凄い。皆さん物語の登場人物みたい」

「おい、田舎者だと思われるぞ」


 ゼインに後ろから声をかけられ我に返る。田舎者なのだから仕方ない。貴族の屋敷など入る機会なんて無かったんだから。


 私たちが客間に通されると、マルーナさんは落ち着いた仕草で椅子に腰を下ろし、ゆっくりと話を始める。その傍には執事やメイド達が控えていて貴族の華やかさを常に感じる。


 感動しながら、マルーナさんの声に耳を傾けた。彼女の声は静かだけど切実で…。


「お二人に、改めて相談をさせて下さい。私は…幼い頃から、未来の断片が見えることがあります。でも、聖女様が帰還した後の未来だけは、どうしても見えないのです。」


 その話に息を呑んだ。

 本当に?と信じられない気持ちにと、その声から嘘ではないと分かる緊張感。


 マルーナさんの手が、胸の前でぎゅっと握りしめられているのに気づく。彼女の指先は微かに震えていた。


「私は…自分の人生がもうすぐ終わるのではないかと、そう思っています。」

「そんな…!」


 私は思わず声を上げ、言葉に詰まった。マルーナさんは目を伏せ、静かに続けた。


「それは幼い頃から覚悟していたことです。でも、家族が心配なのです。私だけならまだしも…私と共に家族にも何か起こるのではないかと。」


 その言葉に、部屋の空気が一瞬重くなった。ゼインが眉を寄せ、真剣な眼差しでマルーナさんを見つめた。


「多くの方達と占いを通じ、未来を見てきました、しかし聖女様が帰還した後の未来が見える者は現れませんでした」


 悲しそうに視線を下げながらも、必死で冷静を保とうとする彼女の言葉が響く。


「しかし、リーシュ様を見た時、ほんの少しだけ先の未来が見えました。だからリーシュ様に何か可能性があるのでは…と相談を持ちかけました。報酬は、今ある私の全てを差し上げます。だから…家族を守ってくださいませんか。」


 マルーナさんの申し出に、私は心臓が締め付けられるような思いだった。彼女は自分の未来をまるで無いもののように語る。その悲しみに、胸が痛くなる。未来が見える自分なりに、必死に戦ってきたのだろう。


「その、見えた未来の断片って…」

「王都を眺めるリーシュ様の姿…です。」


 それは…何のヒントもない…。


 今の私には何も分からない…けれど、マルーナさんの力になりたい。



◇ ◇ ◇

明日は、夜頃に3話くらい投稿になりそうです。よろしくお願いします。

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