魔力の補給。
目の前で、ハッキリと「余計なこと」とされた私との縁談。ちょっといい雰囲気だって思ってたからこそ、ダメージでかい…。
もっと好きになってって言ってたのに。
合いたかったって言ってくれたのにぃ…。
しかし、伯爵様も負けじと、とんでもないことを言い始めた。
「せっかく、好いた者がいると言っていたのを説得していたと言うのに!あと少しでお前との場を取り持てるところだったのだぞ!」
「はぁ!?リーシュに…好きな人!?…そんなの聞いたこと無いんだけど!いや!あったかな!!」
違う!違う!
伯爵様のご子息がクラウなんて知らなかったから!だから言った言葉であって!!
伯爵様の指揮は一流なのに、普通の対話では基本的に説明不足なところがあるよ。
しかし、婚約を「余計なこと」と言われた手前、どう誤解を解いていいか分からない。
どんな顔でいたらいいか分からないまま、立っていたらクラウに腕をぎゅうっと力強く握られた。
「とりあえず、リーシュの顔色悪いから…医務室行く。」
「そうか。ならば話は後だ。」
特に不調は感じないけれど…クラウからはそう見えるのだろうか?でも、この話は本当にこのままでいいの?
「体調は問題ないよ。それより…」
「いーから!」
親子喧嘩をしていたのは広場だったのもあり、周囲の好奇心の声でざわざわとしていた。
これが変な噂とかにならなければいいけれど。
そのざわめきを背に、グイグイと引っ張られるまま連れ込まれた医務室。医務室の先生は不在で、後始末で忙しいのだろうと察した。
肩を押され、ベッドに座らされる。
すると不思議とドッと疲れが押し寄せてきた。そんな私の額に手を当てて、クラウが何かを計る。
「やっぱり…体温が少し低い?」
乱れた髪から汗が滴り不快感がある。自分でも不快なのに、そんな私に躊躇せず触れる。
その行動が更に私を困惑させる。
その間も、せっせと綺麗な水とタオルを用意して、私の前に椅子を置いて座る。
「本当に怪我とか無いんだよね?」
独り言のように言いながら、私の顔に濡れたタオルで拭いだす。ヒヤリとしたその感覚と、ベタベタしてた肌がサッパリしていく感覚が心地よくて自然と目を閉じる。そのまま寝てしまいそうなくらい気持ちいい。いっそ辛い事を忘れて寝てしまいたい。
「大丈夫?」
「…うん。」
私との婚約を拒否した彼は、私の世話をやいていて…。嫌われてはいないけど、結婚するほど好きでもない。そんなところなのだろうか…と考えていた。
なんだか…どんどん体が重くなるような。
「目を閉じられると…前の事を思い出しちゃうなーもう。…集中、集中。」
前のこと?
なんだろう。
頭がぼんやりする。
「わぁ、もう水が濁ってる…。新しい水持ってくる。」
そう言って、目の前から人が遠ざかる気配がした。どこかへ行って欲しくないな…と思ったけど、少しするとちゃぷちゃぷと水を運ぶ音が聞こえて、近くにドンッと置く音がする。
「眠い?」
その声の後に、頬が温かい感触に包まれて、ゆっくりと目を開けた。目の前には、私を心配そうに覗きこむクラウがいて。
「やっぱり、この症状…魔力切れ寸前なのかな?リーシュ、大変だったね…お疲れ様。凄く頑張ってくれたんだよね?今、先生呼んで…」
彼の言葉が私を嬉しい気持ちにさせるのに、もっと、もっと…まだ足りない…と思ってしまう。
まだまだ何かが満たされなくて、それが何かわからなくて。でも、今分かるこの渇き。
ふと「…喉が、渇いたな。」って思った。
「リー、んん!」
体が勝手に動くように、抑えきれず彼の首に手を回して引き寄せ、唇を重ねていた。喉を潤したくて、目の前の温かさに触れた。その瞬間、彼の身体が硬直するのが伝わってくる。
でも拒否はされない。
不思議なことに、こうして深く触れると渇きが潤うような…どんどん何かが満たされるような気がした。
私の渇きを癒していき、胸の奥で何かが脈を打つ。始めは動かなかった彼が、ためらいがちに応じるように動き始めた。そのたどたどしい動きが、私の心をざわつかせる。もっと、もっと、満たされたい。
「んっ…リー、シュ…!?」
クラウの声は途切れ、かすかに抗うような響きが混じるも、すぐに熱い吐息に飲み込んだ。彼の両手が私の肩に置かれ、押し返すか引き寄せるか迷うように、指先に力がこもったり抜けたりする。
その不安定な仕草が、私の渇きをさらに煽る。
彼の頬を両手で包み、逃がさないようにそっと固定しながら、喉を潤す水のようだった。なぜか、この瞬間だけは、身体が軽くなる気がする。
やがて、長いキスを終えて唇を離すと、クラウの顔は赤く、潤んだ瞳が私を捉える。半開きの唇から漏れる荒い息が彼の動揺を物語る。
「た、多分…魔力切れ寸前の、衝動…なのかな。」
彼の声は震え、戸惑いと何か熱いものが混じっていた。私は、喉の渇きが少しだけ癒されたことを感じながら、かすれた声で答えた。
「…喉が、渇いて。」
「うん、ちょっと待ってて。」
そう言って、走って離れてしまう彼の気配。
前に倒れそうになる体をなんとか耐える。するとすぐに戻ってきた彼が私の体を支えてくれる。
「ごめんね、ボクみたいに魔法が使えない人間は…こうして魔力を分けるしか出来なくて。下心とかじゃない、…から。決して。」
そう聞こえた後に、再び唇に温かく柔らかい感覚が訪れる。唇の隙間から水が流し込まれる。それがとても甘く美味しく感じて、さらに求めて彼に近づく。
そっか…これが彼の魔力なのか。
…とても甘い。
「ん、もっと…欲しい。いっぱい」
「…うん。」
彼に水を求めて迫ると、一口水を含んだ後に再び深く口付けられる。でもそれだけじゃ足りなくて、もっと求めるように動いてしまう。口の端から水が溢れて、衣服を濡らしてしまうけど、それすらどうでも良くなってしまうほど夢中になった。
その濡れた薄いシャツから伝わる彼の体温が熱い。
体に力が入らなくなり、彼に寄りかかると肩を押されて座っていたベッドにゆっくり寝かされた。
もう終わり?と思った時。
ベッドがギシリと軋む。目を開けると、クラウの顔がすぐそこに。ピンクの髪が私の頬をくすぐり、潤んだ瞳が私を捉える。彼の指が私の乱れた髪をそっと撫で、柔らかな触感がくすぐったい。
「はぁ、クラウ…もっと。クラウの魔力…とても甘い」
「リーシュ、可愛すぎる。」
そう聞こえて、また深く口付けられる。少しの水と共に彼の魔力が体に染み渡る。
クラウの指が私の頬を滑り、熱い肌をなぞる。
思わず吐息が漏れ、背筋がゾクゾクと震える。
私の上着に彼の指が触れ、ボタンが一つ一つ外されていく。そのままされるがまま、上着を脱がされて熱くなった体が少しだけマシになった。
そして、シャツのボタンに手をかけられた時。
「…だめ。」
「っ!」
シャツの襟を、今ある力でしっかり握り込む。
その強い意志が伝わったのか「ごめん…」と一言聞こえ、彼の気配が少し離れた。
今はまだダメ。
これはサプライズ用の魔物の核だから。
彼の離れた気配に安心すると、服をぎゅっと握りしめたまま横を向いて丸まる。
魔力もある程度満たされたのか、ホカホカとして…。
それからは、クラウの様子を気遣う余裕もなく、深く眠りについた。
◇ ◇ ◇
3話しか上げれなかった…。明日は休日なので、明日に期待。




