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【全年齢版】可愛い君♂に恋する私は「男装」していると言い出せない。〜男の娘と男装女子はすれ違いすぎる。〜  作者: かたたな


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運動基礎の生徒。(クラウ視点)



 一方、グラウンド脇では…。




 のんびり体操や軽い運動をしながら、ボクたちのように武術を希望しない「男子生徒」も含め、女子生徒は会話に夢中になっていた。話題は武術組の凄まじい訓練の光景。


「こ、怖い先生ね。武術組。…あれ、絶対脱落者出るわよ。」

「あそこだけ闘技場かって勘違いしそうになるわ。」


 みんな目を丸くしてグラウンド中央を見つめる。

 木剣がぶつかり合う音や教官の怒号が響く中、ボクの視線は自然とリーシュ君に引き寄せられた。女の子たちの話は盛り上がり始めるけれど、ボクは会話には入らず体を伸ばした。体操に集中するフリをして、リーシュ君の動きを見たかったから。


「リーシュ君さ、避けてばかりかと思ったら踏み込んでからの攻めがカッコいいよね!一気に立場が逆転していくの。」

「あんなに強かったなんて意外よね!」

「綺麗な見た目だからさ、物語の騎士様みたいなところも良い!表情変えない所とか、将来『氷の騎士』とか言われてそう。」


 誰かの言葉に、みんなが「わかる!」と盛り上がる。リーシュ君の素早い剣さばき、隙のない動きは、戦い慣れた騎士そのもの。ピクリとも動かさない表情が、彼の美しさを際立たせた。気がつけば、女子生徒の即席ランキングで「格好いい男の子一位」にリーシュ君が輝いていた。


 でも、突然一人がポツリと言った。


「リーシュ君にもう少し身長あればな。」

「うん、確かに。」

「武術組で一番背が低いかなー?」


 この一言にボクはちょっとムッとする。彼に身長まであったら完璧すぎるでしょ。そんな完璧人間いてたまるか。ボクには、彼のあの真っ直ぐな目と、あんな厳しい訓練にも食らい付いて負けない姿だけでも尊敬する。


 それは、ボクが諦めてしまった憧れ。


 ボクは…あんな風になりたかった。



 軽く体を動かしながら、リーシュ君を見つめた。汗と土にまみれ、木剣を握り直す彼の姿。彼の腕には打撲による衣服の汚れが目立ってきた。きっと服の中では痣もできてるんじゃないかな…


 (痛そう…大丈夫かな?)


 それでも怯まず立ち向かう。教官の「次!」という声に、リーシュ君がまた構える。その背中に、ボクの心は勝手に「頑張れー!」って叫んでた。この声は絶対に届かない。だけど応援せずにはいられなかった。



 しばらくして、授業の終わりを知らせる鐘が鳴り響く。



 先生の「終わり!」と分かりやすい声かけを聞いてから、武術組がぐったりしながら歩いていた。リーシュ君は表情は変わらないけれど、一瞬だけ肩を押さえたように見えたのがどうしても気になった。


 思わず手を振って、「リーシュ君、カッコよかったよ!」って声をかけにいった。


 何だか心配で。


 すると…授業中にはピクリとも動かさなかった彼の表情が、少し照れた?いや、困ってる?みたいに笑う。それを見た瞬間、ボクの胸はなんだかザワりとした。


 思わず胸に手を当てると少し早い鼓動が手に伝わってくる。


 (なんだろ…これ。)


 居心地が悪い。


 だけど嫌じゃなくて、ワクワクふわふわするような。お店で可愛いものを見つけた時に似ている?でも、なんか違う。よくわからない。…これ!と言えない気持ち。そんな自分の変化はとりあえず見ないフリをして、リーシュ君に駆け寄る。


「怪我してるっしょ?医務室行く?」

「うん、…先生いるといいんだけど。時間あるかな…」

「…じゃーさ。ボクが傷薬塗ったげるよ。怪我用の軟膏持ってるし。」


 言ってから、ポケットに入っていた傷や打撲用の軟膏を取り出すと、傷の具合が見たくて彼の武術授業指定の上着を引っ張った。


 すると、その引っ張った手を掴まれて、指を離されてしまう。


 嫌だったかな?と彼を見ると、顔を真っ赤にしてボクの手を掴んでない方の手で襟元をギュッと握っていた。


「見られるの…は、恥ずかしいから…。でも、ありがとう。」


 表情を変えず、武術の授業中でも涼しい顔をしていたリーシュ君が!!


 お顔を真っ赤にしてる!!


 スッゴい貴重なんだけど!!


 そんなレアな彼をまじまじと見てしまった。そして、少し潤む瞳で「クラウさん?」と名前を呼ばれてハッ!!と我に帰る。



「嫌とかじゃなくて。ほんとに恥ずかしいだけで。」



 ボクが何も言わないからか、リーシュ君が言葉を続ける。なんだか…可愛いな…



「じゃー、これあげる。自分で塗れそう?」

「え!助かるよ。次の授業まで時間無いから…。ありがとう。でも、塗ったら後で返しに行くから。」

「いや…、ぅ、ううん?分かった。返してくれるの…いつでもいいし。じゃーね。」

「うん、またね。本当にありがとう!クラウさん。」



 ボクらには次の授業が迫っている。

 だから、手だけ振ると余計なことは言わず、準備のために去っていくリーシュ君の背中をただ眺めた。本当はあげても良かった薬。使いかけだし、そんな高価でもない。だけど「返しにボクのところへ来てくれる。」と思うと嬉しかった。


 朝、髪の結い方を教える時くらいしか話せないからかな?いつも、ほんの少し物足りなさが残る。


 自分に訪れた不思議な感覚の余韻に、目を閉じて少しだけ浸ってしまった。



 ◇ ◇ ◇

休日は4話。平日は2話投稿出来たら良いな…と考えています。評価や反応頂けると、とても励みになります!

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