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可愛い君♂に恋する私は「男装」していると言い出せない。〜男の娘と男装女子はすれ違いすぎる。〜  作者: かたたな


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その付与魔法は…?



 体調に問題ないことを確認し、両手が自由になったので扉の内鍵を開けた。


 カチャン…


 静まり返った夜の教室に、金属質の軽い音が響く。念のため、扉が開くか確認しようと手をかけた時。


 ふと背中に温かい柔らかな重みを感じる。甘い香りと状況から、その存在がクラウさんだと振り向かなくても分かる。



「クラウさん?」

「リーシュ…」

「なに?」

「さっきみたいに…『クラウ』って呼んでくれないの?」

「呼んで…いいの?」

「うん、呼んでほしい。」



 「死んじゃやだ!!」と焦った時に、つい呼び捨てをしてしまったけれど。そっちの方がいいのだろうか。そして、背中にグリグリと頭を押し付けてくる。その仕草が可愛い…甘えられているみたいで。嬉しい気持ちになったけれど、すぐに思い直す。


 これは、私の失敗した付与魔法がまだ効いているせい?


 今の状態が少し名残惜しいけど、ここで終わりにしなければならない。



「じゃあ…クラウ。そのブレスレット、返してくれる?」


「……え?」



 手を出してブレスレットを渡すように催促する。このまま私の付与魔法が効いていたら良くないから。だけど、クラウは絶望したような表情を見せ、ブレスレットごと腕を握って後ろに下がる。


「な、何で!これ、リーシュがくれたんじゃん。絶対返さない!」

「でも、それ着けたままだと…そういうことしたい気分になっちゃうんじゃない?私の失敗した付与魔法のせいで。」

「ちがっ……ぅ、でも、……やだ! これ渡したら、今度はリーシュがエッチになるかもしれないじゃんか。そっちの方が危ないよ!」


 必死に言い募る彼の姿に、つい口角が上がってしまう。エッチな自分……。その想像もつかない姿に、少しだけ興味が湧いてしまった。どうなってしまうんだろう。


「エッチな…私?ふふっ、面白いね」

「なっ!!笑ってる場合じゃないって」

「…そうだね、もし私がエッチになってしまったらクラウは逃げれないと思うから…」


 そう言うと、クラウはボッ!と顔を真っ赤にさせた。


「ぅっ、え?…それって…」


 彼の潤んだ瞳に見つめられ、胸の奥がキュンと鳴る。少し茶化しすぎたかもしれない。遊んでいる場合ではない。軽く咳払いをして、真剣な表情を作った。


「返してもらうのがダメなら…燃やす?」

「…はぁ!!やだし!!そもそも…、な、何の付与魔法したのさ!」


 聞くのを躊躇するように頬を染めて言葉を詰まらせたクラウ。私が何か変な付与魔法をかける可能性がよぎったのだろうか。それは友人として心外である。



「お腹に優しい健康の付与魔法。」

「………ボクは、おじいちゃんかよぉ」


 クラウの緊張が、一気に抜けたように肩が落ちる。彼は深いため息をつき、情けない声を上げた。


「だって、今日みたいな日は心配になるくらいよく食べるから。クラウにはいつも元気でいてほしい。」

「健気な孫め。あぁ…もー……。方向性は嬉しいけど、落差がひどいよ」



 身体に健やかな影響を与える付与魔法。


 それが失敗して、血気盛んであるクラウさんの体が、さらに男性として健康的に、エッチになってしまった…という可能性はあると思う。


 うんうん、と顎に手を当てて考えるけれど、私の付与魔法…5分も維持できたことがない実績を思い出した。5分とはいえ、使えたから合格にはなったものの…。



 失敗ついでに維持時間も延びたのだろうか。



 クラウは考える私から気まずそうに視線を逸らした。


「リーシュ、とりあえず髪…結おう。心臓に悪い。」


 心臓に悪いと言いながら、こちらをチラチラ見て胸を押さえる。さっきの慌てっぷりで乱れたと思うし、このままだとオバケかなんかに見えるとか?怖がられるのは嫌だから、さっさと結んでしまおうと髪をまとめ始める。


 すると、その手がクラウに捕まってしまった。


「ボクが結いたい。」

「いいの?ありがとう。」

「うん、ボクがやりたいだけだから。」

 

 最近は、髪を結って貰うことが無かった。だから久々に結ってもらえるのは嬉しい。せっかくの文化祭だから…と外へ出ると、ダンスパーティーの為に用意された灯りの元へやってくる。


 灯りがキラキラと周囲に溢れ、みんなの願い事が溶けた星型の照明が更に幻想的な世界に見せる。


 文化祭の締め括りとなるダンスパーティー。

 それも最後の曲が流れているところだった。文化祭の終わりを感じて名残惜しい気持ちになる。その光景を眺めながら、私達は会場脇のベンチに座った。クラウに背を向けるように体をずらすと、隣に座った彼が髪を編み始めてくれる。


 その髪に触れる指先が心地よくて、自然と目を閉じていた。


「さっきのは夢って話、したよね?」

「うん。夢で、何もなかった。」


 私が言うと、静かに「うん。」と返事が聞こえる。

 彼の指が、心なしか今までと違う動きをしているように思えて、編まれた部分がどんな感じなのか触ってみようと手を伸ばすと…


「まだダメだよ?」


 そう言われて大人しく手を下げた。



 ◇ ◇ ◇

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