押し倒された。
彼はぎこちなく上着を脱ぎ、自分のブラウスのボタンを一つずつ外し始めている。
その指は震えていて、時折上手く外せなくてもたつく。白い肌が徐々に露わになり、傷一つない滑らかな胸元が目に入る。男らしい平らな胸がそこにある。
私のお腹辺りに腰を下ろしていた彼のお尻が、少しだけ後方に移動する。すると、私の腰辺りでお尻をもじもじと動かした。
なにその可愛い動き。
何か誘うようなその仕草に、私に一つの懸念が浮かんだ。
「くぅ、ここまでしても何の反応も無し!?」
「まさか…クラウさん。」
「んぇ!?なに?」
「私の付与魔法の影響で、こんな行動に?…」
私がそう言葉にした瞬間。彼の動きがピタリと止まる。そして少しだけ首を傾げた。
昨日、私が糸で編んだブレスレット。そして、クラウさんに贈る時、それに込めた付与魔法。あれが失敗して、彼の心を惑わせていないだろうか。
思い返すと、朝から様子が少し違う気がしている。
もしそうなら、急いで外さないと!と、彼に着けたブレスレットに触れて確かめようとした。しかし、その腕は触れる前に引っ込められてしまった。
「もし…そうだとしたら、責任とってくれる?体が…熱い。我慢、できそうにないんだ。このまま流されてくれないかな?」
彼の声は、どこか切なげに響く。その手が私のほうへ伸びてきて、頭の後ろにあったリボンをするりと奪ってしまう。私の長い髪が床に広がった。
「髪を解くと本当に女の子みたいだよね。あんなに強い君が、今はボクの下でされるがままってのも気分がいいな。」
そう言うと、彼の指先が私の唇を撫で、そのまま私に顔を寄せてくる。
ブラウスの隙間から覗く肌はあまりにも綺麗で、触れたい衝動に駆られるけれど…。でも、私の魔法が彼をこんな気持ちにさせているなら、このまま汚点を残すようなことはしたくない。
ここで流されれば確実に女だとバレる。最後まで流されてしまえば、クラウさんを庶民を食って捨てる悪い貴族令息にしてしまう。
私の失敗付与魔法のせいで。
「大変だ…」
「へ??」
「た、ど、どうしよう!?クラウさんが!」
咄嗟に身体強化の魔法を自分の体に巡らせる。そして、私の上に乗る彼を掴んでひょいと抱きかかえて立ち上がった。
「わ!なっ、何!?リーシュ君!?」
「先生ーーー!!誰かーーーー!!クラウさんが、私の付与魔法のせいでエッチになっちゃったーーーーーー!!」
静かな夜の校舎に、私の必死の叫びが木霊した。
「ちょっ、まっ……!? リーシュ君! 声が大きい、大きいってば!!」
抱え上げられた状態のクラウさんが、顔面を真っ赤にして私の肩を叩く。けれど、今の私は焦りでいっぱい。私の失敗付与魔法のせいで理性を失い、あられもない姿を晒している。このままでは彼の輝かしい未来に傷がついてしまう!
「いいから、今すぐ付与を解除してもらおう! 待ってて、医務室……いや、魔法学の先生のところへ行くから!」
「待って! 待ってって言ってるでしょ! 恥ずか死ぬ! 」
「クラウが死んだら嫌だよ!!」
暴れる彼を抱えたまま、私は教室の扉へ駆け寄った。しかし、両手が塞がっている為に足を扉の端に引っ掛けて開けようとしても開かない。扉は鍵がかかっている。
「あ、開かない!?閉じ込められた!誰かの陰謀!?」
「いや、それ、ボクの陰謀だから…。入る時ボクが閉めただけ。」
そう言えばそうだった…と少し我に返る。しかしクラウさんを抱えたままでは両手が塞がり扉の鍵は開けられない。
「クラウさん!鍵開けて。すぐに先生の所に連れてってあげるから!」
「もぅ…こんな姿で先生の前に突き出されたら社会的に死ぬってばぁ」
「でも、それは私のせいだし…急がないと」
私の腕に抱えられながら、冷静に衣服を整え始めるクラウさん。
「まさか…鍵にこんな助けられ方をするなんて思わなかったよ」
彼は深くため息をつくと、私の胸を押し返して床にストンと降りた。
「…一人で歩ける?一緒に医務室…」
「大丈夫。…はぁ、もうムードなんてあったもんじゃないよ…全て吹き飛んだじゃん。変に嘘つかなきゃよかった…完全にひよった。素直に言ってればまだ…でもなぁ」
「嘘??どこからどこまで?」
「いーから…気にしないで。忘れて。さっきまでのことは。」
何がどう嘘なのか…それを考えるよりも前に、彼が安定して立つ元気そうな姿にホッとした。
◇ ◇ ◇
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