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可愛い君♂に恋する私は「男装」していると言い出せない。〜男の娘と男装女子はすれ違いすぎる。〜  作者: かたたな


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二年生の文化祭本番


 朝から賑やかな学園はとても新鮮で、別の世界に来たみたいだった。王都の住人からするとお祭りの一つみたいな感覚だからとても華やかに賑わう。


 屋台の甘いお菓子の香りが漂い、遠くで軽快な音楽が響く中、クラウさんと二人で肩を並べて歩いていく。


 美味しい料理と、魔法や武術を生かしたゲーム。その景品で取れた小さな猫のぬいぐるみを「クラウさんに、似合うね。」と差し出すと「よーし、今日からボクのうちの子だ!」と頬を緩ませた。ふわふわのぬいぐるみを大切そうに持って歩いてくれる。


「ね、リーシュ君。」

「なに?」

「このぬいぐるみが、ボクに似合うって思うってことはさ!リーシュ君は、ボクを可愛いって思ってるってことだよね?」


 心なしかウキウキと瞳を輝かせるクラウさん。文化祭を楽しんでるんだな、と伝わってくる。


「クラウさんは初めて会った時から可愛いよ。」

「だ、だよね!」


 変わらず自分に自信のある彼は、笑顔がキラキラしてる。


「じゃ、じゃあさ。リーシュ君は…可愛いのと綺麗なものだったら、…どっちが好き?」

「どっちも好き。」

「浮気者ーーーーーー!!」

「クラウさんもそうじゃないの!?」


 素直に答えたのに、私の両頬を両手で挟んでむにむにと動かす。マッサージみたいで少し気持ちいい。小顔効果とかありそうな動きだった。猫のぬいぐるみを器用に小脇に挟んで落ちないようにしているところに可愛いものへの愛を感じる。


「よし、リーシュ君。占いに行こう。」

「占いって、マルーナさんの?」

「そ!こうなったら、リーシュ君自身が気がついてない自分の気持ちを炙り出そう!」

「自分の気持ちは、自分が一番よく分かると思うんだけど。」

「いいや、まだ気がついてない気持ちがあるはず!大切な気持ちが。」

「えーと…例えばどんな気持ち??」

「た、たた、例えば!?」


 自分の気持ちに気づかないとしたらどんな気持ちなのか。クラウさんへの気持ちはだいぶ前から自覚しているし。自分の将来の不安とかもある程度あるけど…その上で何があるのだろう?


「恋心…とか。」

「恋に気づかない、なんてことはないと思うけど。」

「あるかも…知れないじゃん…。」


 

 少ししょんもりと下を向くクラウさん。今日のクラウさんは感情表現が更に豊かな気がする。これも文化祭の力かもしれない。


「ねぇ、リーシュ君。真面目に考えて、可愛いと綺麗どちらかしか選べないとしたらどっちか好き?」


 可愛いと綺麗…。どちらかしか選べないってどういう状況だろう??何か小物を買うって話かな?それとも、また街へ遊びに行くならって話?…んー、どちらにせよ。私は…


「じゃあ、綺麗…かな?」


 そう軽く言った瞬間。彼の表情は何かに絶望するように変わった。そんなショックを受けるような重要な話だったのかな?


「何か…重要な話?ああ、悩みがあってマルーナさんに聞いて欲しい…とか?」

「よし!マルーナさんとこ行くの一旦やめよ!」

「え…占いたいことがあるんじゃないの?」

「いーの!」


 もし、小物を買うにしてもお店に行くにしても。綺麗系の方がまだ持ちやすいし入りやすい…と思ったのだけどダメだったみたいだ。


 少しだけ不満げな態度を見せたクラウさんだったけど、すぐに別の模擬店へと興味を示し、笑顔を見せた。こうした彼の切り替えの速さは付き合いやすくて助かる。


 しかし、楽しい時間はあっという間で、販売担当の時間がやってきた。


「後でまた合流しよーね。どこかで時間潰してるからさ。」

「うん。また後で。」


 クラウさんは、マルーナさんの衣装作りと内装のまとめ役など準備で大変だった為、販売当番は免除。そんなクラウさんが軽やかに手を振って見送ってくれる。私は振り返りながら答え、教室へと急いだ。


 販売担当の時間は怒涛のように過ぎた。マルーナさんの占いが一番人気なのだけど、おまじないもなかなか人気でホッとする。

 おまじない作りをした子達が「売れ残ったら好きな人に贈ってみようかな。」とソワソワしていたけれど、その分は無さそうだ。


 きっと後日、その子は想い人の為に作るんだろうな…と思うと、甘酸っぱい青春を感じる。


 交代の生徒が来ると「時間通りに来てくれてありがとう!」と丁寧にお礼を言って教室を出た。クラウさんを探して歩き回り、中庭に差し掛かった時。木々の影に隠れるようにして見えたのは、クラウさんと一人の女子生徒。彼女は頬を染め、うつむきながら何か言っている。重そうな雰囲気に思わず近くの木の陰に身を潜めた。


 風が運ぶ彼女の声が、かすかに耳に届く。 


「…ずっと前から好きだったの。中等部のころから…。クラウの趣味にも理解ある方だし、家格も合うし…ゆくゆくは婚約も。」


「あー、ごめんね。ボクたち、友達のままの方がきっと仲良くやっていけると思う。これからも友達でいてくれると嬉しいな。ね?」


 有無を言わせぬ圧に女子生徒は小さく頷き、私から見ても無理していると分かる笑顔を向けていた。


 私に向けた言葉ではないのに、クラウさんの言う「友達」という言葉が、小さな棘のように心に刺さる。


 相手の女の子は貴族らしい華やかさのある可愛い令嬢だった。そんな女の子の告白を断っているってことは、彼女より可愛い女の子じゃないとお付き合いや婚約は難しい…ってことだよね。


 私が女だとクラウさんに知らせたところで発展はなく…今の関係がただ疎遠になる未来が見えた気がした。


 そして、さっきの会話であった「家格」という言葉。


 貴族ではそれが大切なのを忘れていた。この学園では運良く家格を意識するような出来事が無かった。それは、貴族の人達が平等に接してくれていたからだ。


 みんなの優しさで、私は勘違いしていたんだ。


 クラウさんと、結ばれる可能性がほんの僅かでも存在するんじゃないかって。



 ◇ ◇ ◇



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