彼との出会いを振り返る(クラウ視点)
妙な疲れを感じるボクの足は、伝統ある作りをした寮の廊下をダラダラと歩き、自分の部屋にたどり着いた。
パタン。
自室に戻ると、鞄を置き、手を洗うと部屋着に着替える。部屋着らしくゆったりとしていて、手触りはふわふわ。そんな完璧な部屋着に包まれてベッドへ寝転ぶ。
枕をぎゅっと抱えてから天井を暫く見つめ、リーシュ君の事を考えた。
彼と出会ってから…彼と過ごす時間はなかなかに気楽で楽しい。
髪の編み方を教えてあげれば、慣れないながらも何度も繰り返し練習する。その姿は「頑張れ!」って応援したくなる。
仕上げとして彼の髪をボクが結い、整え終わると、手鏡に映る自分を見て柔らかく微笑む。その一瞬は、女の子みたいだといつも思う。妹も髪を結ってあげると、いつもこんな風に喜ぶから。
ボクが、男性に髪を結う機会が無いだけかもしれないけど。
リーシュ君は高等部に入学当初から「綺麗な男の子がいる。」と話題になっていた。ボクも彼を初めて見かけた時は「ほんとだ、綺麗な男の子」と感心したものだ。
男の子にしてはガサツな感じはなく、落ち着いている。背がそこまで高くないからボクみたいに可愛い服を着れば似合うんじゃない?機会があれば提案してみようかな!なんて考えていた。
そんな彼が、ある日中庭の隅っこで佇んでいて…。そりゃあチャンスじゃん?「何があったんだ?」って興味あるじゃん?前から彼の綺麗な髪に一度触れてみたいと思ってたし。まずは髪から…って。
そしたらまさか、ここまで仲良くなるなんて思いもしなかった…。
それにあの強さ。
筋肉質でもないし、長身でもない。それなのに厳しい訓練を涼しい顔でこなしていく。自分より大きな生徒にも怯まない。相手の力を利用したり、流すのが上手い。きっと手合わせをする相手は打ち込んでも手応えがなく、幻覚とでも戦っているような錯覚に陥るだろう。そんな立ち回りをする。それは相手からすれば恐怖でしかない。
深い森で霧に包まれ、霧に剣を振っても何も手応えがなく、しかし霧の向こうから確かに自分を狙う存在がいる…って感じ。
こわっ。
怖いといえば…肝試しの時のこと。
「自分が女だったら落ちてたわ…」なんて思う程かっこよかった。
あの時は、ノリで肝試しに参加したものの…想定していたより怖くて…ギブアップしようと思っていた。なのに、戻るのも怖くて踞って…。そんな暗くて怖い場所をだよ?まるで昼間の学校を歩いてるかのように現れたんだ。その上、ボクに声をかけてきた。
夜、人がほとんどいない学園で、暗闇の中を人が踞ってたら怖くない?
ボクだったら本人には話しかけず、人を呼んでくるのが精一杯だ。
そんな場所で期待と希望でいっぱい!みたいな声色で隣を歩くものだから、怖さを忘れてつい頬が緩んでしまった。しかも、本当にウキウキとしていたらしく彼から聞いた憧れの学園生活には親近感が沸いていた。
そういうところは、ボクたちと同じなんだなーって。
そうやって、せっかく心が和んでたのに、脅かし役が現れて。一瞬で体が固まった。次の瞬間には抱き寄せられていて、物陰に隠れ頭を撫でられて。心地よさと安心感があり、柔らかく包まれる温かさの中でリーシュ君が男だと一瞬忘れていた。
だって…やっぱりなんか…柔らかかった。
それに香水とは違う甘い香り。
それでも、男であるボクを背負って「軽い」とか言って…安定して歩く体力は男と認めざるを得ない。男1人を運ぶなんて女性にできることじゃないんだから。
あの対応をしたのが麗しき女子生徒だったなら、彼に確実に彼女が出来ていたに違いない…。なんて思うと、肝試しで彼に遭遇したのがボクで申し訳ない。
彼が願う恋人のいる学園生活のチャンスを、男が恋愛対象に入らない男のボクが使ってしまったのだから。
その時は一瞬「もしかすると、ボクに下心があったり?ボク可愛いし。だからこんなに世話をやいてたり??」なんてことを考えたけれど、ボクを降ろして何の見返りも求めずにあっさり帰ろうとする彼に拍子抜けだし。
綺麗な顔してかっこよすぎるでしょ。
頼もしいヤツだな!と感心した。なのに…一年の文化祭で頼られるとヘトヘトになるまで頑張ってしまう。彼の育った環境かな?協力しないと生きていけない所で育った彼は、求められたら助けてしまうのだろうか。
善意を利用しようとする奴から「ボクが守らなければ!」と、世話を焼いてしまった。頑張ったね!とたくさん褒めたくなった。
あの時は…不謹慎だけど可愛いと思ってしまったっけ。頑張って疲れ果てて…泣いてる子がいたら胸がギュンッてなるじゃん。
「ふふっ」
思い出すとまた胸が甘く痛む。ベッドの上でゴロンと向きを変えると鞄に付いているウサギのマスコットが目に入った。
リーシュ君と行ったパンケーキ屋さんで貰ったもの。そのマスコットはリボンを後から付けた。リーシュ君がボクにくれたクッキーの袋をくくっていたリボンが結構可愛かったから…
「クッキー…美味しかったな。また作ってくれないかな」
眺めながら更に思い出す。
二年生になると、運良くリーシュ君と同じクラスになった。嬉しくてどんどん話しかけて…一緒の時間が増えた。
楽しいし。癒されるし。心配だし。
最高の友達……いや、親友!!
そう確信していた。
それな親友にわけのわからない独占欲に似た感情を持っている自分。それだけでもいっぱいいなのに、あんな情報を耳にするとは。
◇ ◇ ◇
自信あふれる男性が、恋に思い悩むのがまた良いんだ…。明日も21時15分頃の投稿です。よろしくお願いします。




