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【全年齢版】可愛い君♂に恋する私は「男装」していると言い出せない。〜男の娘と男装女子はすれ違いすぎる。〜  作者: かたたな


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嫌な変化。(クラウ視点)


 親友として、安心する時。

 大切な親友だからこそ、モヤモヤがつのる時。


 最近、何だかよくわからない。


 文化祭に向けてやることがいっぱいなのに、この不安?は何度も押し寄せ来てさ。もうなんなの!!って叫びたくなる。


 リーシュ君が誰かと仲良さそうに歩くたび…なんか…こう「何の話ししてんのー?」って割って入りたくなる。それはウザいにも程があるからしないけど。…親友なら…リーシュ君が誰かと良好な人間関係を築くのを喜ぶべきだし。



 モヤモヤと考え、少しぼんやりしていると、装飾班の生徒が「この飾り、こっちの壁に合うかな?」と話しかけてくる。「うん、いいんじゃない?」と妙に焦って答えた。


 作業に集中しようと頭を振るけど、視界の隅でリーシュ君が他の女の子たちに囲まれてる姿がチラつく。


 おまじない小物の制作班は、ほとんど女の子。

 リーシュ君がブレスレットの編み方を教えてる間、女の子たちが「リーシュ君、これ合ってる?」「ねえ、少し見て下さらない?」と次々に絡んでいく。

 別のおまじないの小物について相談したり。それを一緒に作ったり。


 それは端から見たら彼を取り合っているみたいだ。


 ある子はわざとらしく手を滑らせてリーシュ君の手に触れたり、別の子は「この色、リーシュ君に似合いそうですよ!」なんて言ってキャッキャ笑ってる。リーシュ君も丁寧に対応して、嫌いじゃないみたい。 


 …モテるんだな。


 今までボクが側にいたから、女の子がアピールできなかったのかもしれない。ボクが…邪魔してたのかな。


 リーシュ君は優しいし、頼れば快く手を貸してくれる。聞き上手で落ち着いているし…それが一緒にいて心地良い。


 何より、あの何考えているかわからない綺麗な顔。あまり変わらないその表情が笑顔になった瞬間は嬉しくなる。それでいて、武術の授業で負けなし。実際、グランド脇で見てるボクらは、彼が地面に倒れた姿を見たことがない。彼の欠点として話題に出たのは身長と身分くらいだろうか。


 まぁ…貴族のお嬢様からしたら身分は特に致命的だろう。


 「国境の狩人」はこの国にとって安全の要となる存在だけど貴族階級のどこにも属さない。この国での明確な地位はない。


 あるのは、初代国王陛下と国境の狩人との契約

・国境の狩人に指示をしない。

・彼らの狩を邪魔しない。

・魔物から得られた素材を高値で買い取る。

・自由に国内を動く権利を国王陛下が保証する。


 その代わりに魔物や他国からの侵略等から守られる。


 これが、大昔からある契約。

 …と、中等部の歴史の授業で習った。


 過去に、他国から諜報員が送られ「国境の狩人」に危害を加えられた!と文句を言われる事が幾度となくあったそうだ。その時、当時の国王陛下は「国境の狩人」が勝手にやっただけで我が国は知らない!と切り捨てたらしい。


 酷い話だ。しかし、国王陛下だって彼らに指示をしない契約なのだ。


 その結果、彼らは他国から幾度となく攻め込まれた。しかし、この国はその影響を一度も受けた事がない。彼らが滅ぶ事なく今も存続する現状が、その強さを物語っている。


 彼らと最初に契約を結んだ大昔の国王陛下は本当に偉大だ。


 これは推測に過ぎないけれど、リーシュ君がこの学園に入学を許されたのも、その存在を大切に扱っている証拠だとも思う。

 

 そんな凄い存在でも「国境の狩人」と縁を結んで良いことがあるか?と聞かれれば特に無い。彼らは自由が認められた存在だから、こちらの意見で何かを融通することをしないし、こちらもそれを禁じられている。


 仮に婚姻関係を結んで「じゃあ国境の狩人達のところへ行こう」なんて言われたら貴族令嬢はそれだけで倒れてしまうんじゃないかな?



 そんな相手に…みんな本気なのだろうか。それともただ、遊びたいだけ?


 遊びだったら親友として許さないんだけど…


 告白された…とかは今のところ聞かないけれど…ボクに隠してるだけ…とか。



「はぁ…」


 こうやって別のグループで離れて見てると、頭の片隅で理解したつもりになっていた人気ぶりは、現実味を帯びていく。


「アイツ、文化祭前に恋人か婚約者できるかもなー。羨ましいー。」 

「え?ぁ、あー、そうかもねー」


 そんなリーシュ君の様子をボク以外にも見ていた生徒がいた。適当な返事を返したけれど、その言葉に衝撃を受ける。



 恋人、婚約者…。


 リーシュ君に…?


 彼が恋人が欲しいって言ってたのは、知ってる。肝試しの時に話していたから。



 そっか、応援しなきゃ。



 友達として、好きな人ができたら全力で背中を押してあげたい。


 そう思うのに、恋人ができたらその子が中心の生活になるのだろうと想像すると何かが心を重くする。


 だって、今まで彼の中心だったのは親友のボクで…。武術の授業で離れても、終われば駆け寄ってきてくれて…。


 それなのに、恋人って立場を手に入れたその人は、一瞬で彼の中心になる。ボクほどリーシュ君の事を知らないくせに、彼の一番の存在になる。


 駆け寄る先も、その人になる。


 そのまま関係が上手く行って、婚約でもしてしまえば…ボクとの関係より遥かに長い時間が約束される。



 あーーーーー!もう!

 モヤモヤする!!



 ボクの彼を応援したい気持ちは、どんどん黒い気持ちに覆い隠されていく。




 その日の放課後。




 装飾班の作業が一段落して、みんなが少しずつ教室を後にする中、リーシュ君を呼び止めた。あたかも片付ける片手間で、軽く、雑談のように…妙に自分を偽って。


 心臓がバクバクしてる。


 頭では、ボクが彼の恋人をつくる上で邪魔になっていることを理解している。「親友だろ?やめとけ」って声がするのに、口が勝手に動く。



「リーシュ君。文化祭さ、今年もボクと回らない? 」 



 既に誰かと回る約束をしてるかもしれない。

 マルーナさんとか、他の女の子とか。モヤモヤが渦巻く中、妙なドキドキが胸を締め付ける。リーシュ君が少し驚いた顔で見つめてきて、ほんの一瞬考えるような間ができた。その数秒が、永遠みたいに長く感じる。



「うん、一緒に回ろう。楽しみ。」 




 ふわっと笑うその笑顔が。



 いままで見たどんな『可愛いもの』よりも、ずっと特別に見えた。



 顔が熱くなって、慌てて視線を逸らすけど、心臓の鼓動がうるさすぎて、自分の声がちゃんと出るか心配になる。


「よかった! じゃ、約束。」


 なんとかそう言って、逃げるように装飾用の布を抱えて資材置き場に向かった。背後でリーシュ君が「うん、約束!」って声が聞こえる。その声が、胸の奥に響いて、余計にドキドキが止まらない。 



 文化祭が近づくにつれ、心はますます揺れ動く。リーシュ君との約束が嬉しくてたまらないのに、不安は消えない。


 「恋人ができたから少しでもいい?」とか言われるかもしれないし。


 どんなに足掻いても、ボクの立場は、いつ、誰かも分からない人に簡単には奪われるものなのだと実感した。





 ◇ ◇ ◇

明日も21時15分頃に1話投稿します。反応下さる方、読んで下さる方、本当にありがとうございます!!

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