綺麗な髪(クラウ視点)
リーシュ君に褒め尽くされてから…ボクはおかしい。
それでも、やることも決まったし…早速ボクらは文化祭の準備に取り掛かった。だけど本当の意味では集中出来ないでいた。手に持った装飾用のリボンを、無意味に指先へ巻き付け、何かを作っているように見えて何も作っていない。
視線の先では、買い出しから戻ってきたリーシュ君達が数人の女子生徒に囲まれている。彼は編み方を教えたり、出来栄えを褒めたりと、相変わらず誰に対しても誠実な姿勢を見せていた。
その時、一人の女の子が興味深そうにリーシュ君に顔を近づける。
「ねえ、リーシュ君。さっきから思ってたんだけど……リーシュ君の髪、すごく綺麗だよね。太陽の光が当たるとツヤツヤで」
リーシュ君は編んでいた手を止め、不思議そうに瞬きを繰り返した。
「そうかな。自分じゃよく分からないけど、ありがとう」
「……ね、ちょっとだけ、私も髪に触ってもいい?いつもクラウさんに結ってもらってるでしょ?私もやってみたいな」
その言葉に、胸がチクリと痛む。
リーシュ君の髪は、いつもボクが整えている。あの柔らかい毛先も、指を通した時の滑らかな感触も、ボクだけ知る特別な感覚。
断るよね?
けれど、彼はいつもの無表情でコクリと頷いた。
「いいよ。少しなら。」
その瞬間、女の子の指がリーシュ君の柔らかな髪に触れる。彼女は楽しそうにその感触を確かめ、横にいた別の子も「あ、私も!」と遠慮なく手を伸ばし、ボクが整えた髪を崩してゆく。
「さらさらね!」
「いいなー、羨ましい!」
キャッキャとはしゃぐ彼女たちの声が、やけに遠く、ひどく耳障りに響く。リーシュ君は、それを拒絶することなく受け入れている。
胸の奥が、更にぎゅっと締め付けられるように痛んだ。
ボクがいつも丁寧に、大切に整える彼の髪。あんなに簡単に、誰にでも許してしまうものだったんだ。
髪を編むとき、少しだけ指先が耳に触れて、彼がくすぐったそうに笑う。そんな、二人だけのやり取りが、今や他人へと共有されてゆく。
…少し…悲しい。
なんで…こんな気持ちになるんだ。「親友」なのに、目の前の光景がどうしても受け入れられなくて、ボクは逃げるように視線を落とした。
「クラウ!文化祭の衣装、何か使えそうなのあるか一緒に見てくれないか?」
声をかけてきたのは、さっき文化祭で使えるものがないか学園の物置を見に行った男子生徒達。彼らが抱えるのは多くの占い師っぽい衣装と小物だった。さすが永い歴史のある学園だ。先輩たちの残した衣装や小物はなかなか良い。
「どれもいーね!」
「あぁ、そうなんだよ。俺達じゃ選べないから適当にたくさん持ってきたんだ。確保しとかないと他のクラスに取られるからな」
「仕事ができる男だねー!」
そう言って肩に手を置けば、頬を染めて視線を逸らす男子生徒。こういうタイプには今後あまりちょっかい出すのはやめなければ…と心に刻む。惚れさせちゃったら困るし。
「ザッと見た感じ、これと、これと…あと、これかな?」
彼の反応には気づかないフリをして、衣装を選ぶ。マルーナさんの占い師衣装と、その護衛2人分…更に案内役と、小物を売る人の衣装。
それらを仕分けていくと、次はサイズ合わせだ。後は傷んだ所の修復と…更に可愛く装飾も追加したい。そのへんの調節はボクが担当することになった。
「よし、じゃあ着てみようか」
「俺はこれがいいな」
「私はこれ着てみてもいいかな?」
「いーじゃん!どんどん合わせていこう♪」
その場は瞬く間に仮装パーティーのような雰囲気になった。いつの間にか、クラスメイト全員が気に入った衣装を面白がりながら身に着ける。珍しい形の物が多いからワクワクする気持ちはすごーーく分かる。だからボクも、可愛いリボンとか手に持って鏡の前で付けてみた。
やっぱりボクは可愛い。
改めてそう考えていると、リーシュ君に見せたくなった。
この辺は特にアルファポリスにある内容と違います。小説家になろう用に色々追加しました。全年齢ならもっとワチャワチャが見たかったから。




